猫の独り言(その4)
寝てしまったか。
朝から現在の時間で言えば、午前零時まで勉強しっぱなしだからな、さすがのバカ猫も限界か。
「戻った——」
戻ったか。女男。
「あ、あの馬鹿——」
女男は、バカ猫の動く尻尾を見て何も言わなくなった。
「…………」
女男はきょろきょろと周りを見てから、
「——柔らかいな」
バカ猫の尻尾を触っている。それを見ていると、
「こっちは……」
俺の尻尾を触りだした。女なら触られてもいいが、中身が男では嬉しくない。
「硬い。骨があるからか?」
バカ猫と俺の尻尾を代わる代わる触っている。
「ンニャンニャ……」
まだ寝ている。おめでたいヤツだな。バカ猫。
「……」
どうした? ⁉
「猫ちゃ~ん! えりんぎちゃんって言うんでちゅよね~?」
い、いきなり、抱きしめてきた‼
「えりんぎちゃ~ん!」
「…………」
バカ猫が寝ていて、あのボンボンもいないからか。女男は、俺を見て幸せそうな顔だ。わかりやすい。
「えりんぎちゃんって、抱き心地いいでっちゅね~。幸せでちゅ~!」
「…………」
キャラが違いすぎるぞ! さっきまでのバカ猫との扱いが違いすぎる!
「えりんぎちゃん~! よちよち!」
「…………」
女なら、ふにゃん! って可愛く鳴くが、男では何も言う気になれない。
「えりんぎちゃん~。可愛いね~」
「…………」
——しつこい。
「ふにゃん」
「え、えりんぎちゃん⁉」
俺は女男の腕から離れて、バカ猫に猫パンチを食らわせた。
「ん?」
起きた。すると、女男は普段の表情になり、
「馬鹿猫ー‼ 何故、起きた‼」
顔を赤くして激怒しているが、バカ猫は寝ぼけながら、
「えっ? 寝てたんですか?」
「寝ていろ!」
「そ~ですか。じゃあ……」
女男が激怒しながら言うと、すぐ寝た。すると女男は、あの幸せそうな顔になり、
「えりんぎちゃん! いい子いい子~」
女男は、俺に頬を摺り寄せている。
……起きろ、バカ猫。