猫の独り言(その3)
二人は寝ているな。
俺は外に出て、一服する事にした。
はあ……。傾城屋も賭場も行けなかった。
嘘つきやがって! くそっ!
それにしても、あの時は危なかった。
あの薬屋の商品を見ていた時に戸が開き、俺は構えた。
入って来たのは、
『何や、猫さんの猫やないか』
『……』
あの南蛮かぶれだ。南蛮かぶれは部屋にある、吊るされたり干したりしている物や桶の中身を見ている。
『ああ、こんな物まで、猫さんの猫は知らんでええ』
知りたくもない。大体予想はつく。
『この小屋の持ち主は薬屋を商いにしている男や。猫さんの猫、この骸の使い道わかるん?』
『…………』
うるさい男だ。黙らせてやろうか。
重石に使った大きな石を、頭の上に落そうとサイコキネシスを使おうとした直前、
『無視か。まあ、ええやろ。それより、猫さんの猫』
『……!』
南蛮かぶれの奴は俺に銃口を向けた。
『猫さんに迷惑をかけへんように』
『……』
ちっ!
『猫さんの猫、行かへん? 二人を助けに?』
『……』
俺は大人しく肩の上に乗った。
結局、南蛮かぶれは、あの二人を助けたか。
それはそれでいいが……。
だが、バカ猫をこの時代に送り込んだ事により、歴史が微妙に変わったな。
宮内卿法印こと松井友閑は不正を理由にクビになり、その後釜に石田三成が堺政所の代官になる。が、それは一五八六年六月の事だ。本来の歴史より早いのだ。たかが一年、されど一年、こんな事でも変動は変動だ。
これから、大きな変動になるか、小さな変動だけで終わるか。それはバカ猫しだいだな。
さて、俺も寝るか。