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備前宰相の猫  作者: 山田忍
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猫と物(後編)

 えー、石田殿が落ち着いたところで、次に移る事にした。ちなみに清涼菓子は、ほとんど大谷殿が食べた。

「えっと、カップ麺って物です」

「これは何じゃ? 焙烙火矢とかには、見えないが?」

「聞いた事あるような無いような……。そんな物ではありません。まあ、お湯と箸の準備を」

「湯を用意するのじゃ」

「はっ」

 準備している間に、お湯が沸き、入れて三分後、完成したら上様に召し上がってもらう。

「これは麺か? 湯を入れるだけで麺が出来るとは……。——美味い! 食べた事の無い味じゃ!」

「猫丸、これは不思議だ。これがあれば兵糧を考えなくて済む」

「兵糧を?」

「ああ、二、三日に分けるのだ。そうしないと、その米で酒を造る者がいるからだ」

「ありゃー」

「それと猫丸、ずっと前から気になっていたのだが、あの板は何だ? 時々、見ていたが?」

「ああ、あの板! 何じゃあれは?」

 皆が気にしている板である、スマホを見せた。

「これはスマートフォンと言い、これがあれば、遠くでも連絡を取る事が出来る物です」

「まさか、これが! 便りを受け取る事が出来る物か⁉」

「これだけでは……これがもう一台あれば、どんなに離れていても会話する事が出来ます」

「す、すごいな……。そんな物があれば、戦が有利になる」

「猫、お主、すごい武具があるのではないか?」

「そうだ。見せろ」

「いやいや、持っていませんよ! 武器は持ってたら警察に捕まりますよ!」

「けいさつ?」

「悪い事をしたら捕まえる所です!」

「悪い事だぁ? 猫、武具を持つ事のどこが悪ぃんだよ?」

「それは……それだけで危険だから……」

「武具のどこが危ないのだ。その辺の町人を理由も無く殺すわけじゃないし、武具が危ない物になるのは、持ち主の心しだいだ」

「……」

「猫、武具が無いのならば、酒は?」

「ありません!」

「「——無いのか」」

 二人とも、わかりやすく肩を落として気落ちしている。気落ちしている二人を見て、

「では! 余の方で宴会じゃ! 皆、飲むぞ!」

「「うおおぉぉ‼」」「ふにゃ~ん!」

 宴会の時点で、二人は起き上がった。そして、明らかに酒を飲んではいけないヤツも喜んでいる。

 こうして宴会は朝まで続いた。

 翌朝、宇喜多屋敷に帰宅すると、

「あ~~」

 頭がくらくらする。そして倒れると、

「飲みすぎたな、猫丸」

「昼まで休む」

「そうだな、休もう」

「ふにゃ~」

 昼、太陽が高い時、

「猫丸、お主はもう一枚、大き目の板があるのではないか?」

「ああ、タブレットか。あれはな……」

 カバンからタブレットを取り出し見せた。

「タブレットって言って、いろいろな事が出来るんだ。例えば……」

 キーボードになるアプリを使い、音を鳴らした。

「——はぁー……。音が鳴った……」

「ほら、見ていろよ」

 ネコふんじゃったを演奏しただけだが、八郎はじっと見ていた。そしてエリンギは不愉快そうに聞いている。

「まだあるぜ。これは電子書籍って言ってな、マンガが読めるんだ」

 オレの電子書籍には小説は無く、マンガだけしかない中で見せやすい未来の世界のネコ型ロボットのマンガで使い方を教える事にした。が、またしてもエリンギは不機嫌だ。

「絵が描かれた物語が読めるのか⁉」

「ああ、いっぱいあるぞ。これはこうすると、次の話になるし、戻る事も出来る」

「すごいな。少し見づらいが……。後で、この物語を見せてくれ」

「もちろん! 他にも、音楽を聴く事が出来る!」

 音楽を聞かせてみると、

「この曲はな……」

 八郎は魅了されたかのごとく聴いていた。声をかけても相手にしなかった。

「八郎」

「——はっ! 猫丸! すまない。聴き入ってしまった」

「この曲を歌っているのは、『世界の終わり』って言って——」

「せ、世界の終わりだと‼ 猫丸! 何と言う恐ろしき名だ!」

 八郎の顔色は悪く身震いをしている。

「えっ⁉ ただのバンド名だよ‼」

「世界が終わるのだぞ!」

 エリンギがオレの肩に乗り、小声で、

「恐らく、こいつは人の世では無く、過去、現在、未来、東西南北、全ての時間と空間が終わると思っているのだろう」

「ええええ‼ 人の世! 八郎‼ 人の世だ! 人の世!」

「何だ。人の世か」

 さっきの顔色の悪さも身震いも無くなっている。

「冷静だな! さっきの驚きは、どこにいった!」

「人の世が終わるだけならばいいだろう。いずれは終わる物だ」

「いずれって……」

「生を受ければ死ぬのは当然だ。私も猫丸もいずれは死ぬ、上様もお豪も皆死ぬ。私は上様やお豪、猫丸らと過ごした日々を失いたくないだけだ」

「…………」

「すまないな、猫丸。つい、のぼせ上がった事は」

「いや、気にしてねえよ」

「そうか、それならばいい」

「他にもな——」

 色々な歌を聴かせたが、バッテリーが切れかけている。

「八郎、今日はここまでだ。続きは明日な」

「何故だ?」

「ああ、ある程度、使うと充電……力を取り戻さないといけないんだ。それで、これを使うんだ」

 ソーラー式の充電器を見せた。

「この板を食べるのか?」

「まさか! これを、ここに繋げて……太陽の下に置いておくだけで、また使えるんだ」

「日輪で回復するとは、お主の国は優れた国だ! 猫丸!」

「いやあ……。それほどでも……」

 嬉しそうな八郎を見て、エリンギは呆れている。まあ、仕方ないかもしれない。あいつの世界はオレ以上に発達した国だからな。 

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