表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
備前宰相の猫  作者: 山田忍
23/153

猫と物(前編)

 大坂城表御殿御対面所にて、

「おおっ! 来たか!」

「あらあら、しばらくぶりね」

「ごきげんさま! お兄様! 猫様!」

「猫、面白い書だ」

「おーい! 猫だぞ!」

「本当だ」

「ほほほ。来たぞえ」

「ふん」

 見ると、知っている人たちが来ている。

「えっと、みなさんお揃いで」

「猫の国の話を聞くのだ。このくらいは呼ばなければ、いかんじゃろう」

「はあ……」

 聞くような事なのかと、思っていると、お豪ちゃんが近寄ってきて、

「猫様! 本日は袋を持っていますね! 何が入っているのです?」

「えーと、カバンの中身は、お菓子やら、食事やらが入っています」

 八郎やお豪ちゃんだけでなく全員が目を輝かせた。

「まあ! お菓子が!」

「菓子があるのか⁉ 書以外はわからない物だらけだったから聞かなかったが」

 カバンから、お菓子を出した。

「えー、まずは、このミルクチョコレートから」

 ロングセラーのCMソングが印象的なチョコレートを用意した。

「みるくちょこれえと?」

「何だぁ? これは紙か?」

「紙に包まれているな」

 板チョコを上手く割って、全員に行き渡るようにした。

「何だ? この食感は?」

「南蛮の菓子より甘さだな」

「他の菓子は?」

「ソフトキャンディって言う柔らかい飴です」

 もう一つあるけど、あの王の兄ちゃんに、また会った時にあげよう。

「この、お菓子も甘いわ!」

「猫丸、これはどれだけの高貴な者が食べているのだ? お主の身分は本当は上の者では?」

「だから、一般人だって! こんなのコンビニ……店で安く買えるよ!」

「や、安く……。猫丸の国は豊かな国だ」

「他のお菓子は?」

「ガムがあります。紙を外してから、食べてください」

 これもまた、CMの歌とダンスが印象的な、ふにゃんとしたガムを一人ずつに配った。

「これもまた、板みたいだが……」

 と言い、全員噛んだ。

「このガムは——」

「もう食べたぞ」

「猫丸、次の菓子は何だ?」

 見ると、お豪ちゃん以外、全員飲み込んでいる!

「このガムは、味が無くなるまで噛んで、無くなったら、この包み紙に出して、捨てる物ですよ!」

「味わって捨てるのか? もったいない物だな」

「毒でもないのに捨てるのかよ」

「これは、菓子とも食べ物とも言えん。何に使うんだ?」

「噛んで唾を出すぐらいか……」

 ——もういいや。

「……次はポテトチップスです。どうぞ」

 うす塩味のポテトチップスの袋を開けて、上様から渡した。

「どれ」

 一枚食べた。すると、

「これは何だ⁉ なんで出来ておる⁉ どの様に作られておる⁉」

 ものすごい速さで食べだした。

「ジャガイモを薄く切り、揚げた物です」

「じゃがいも……初めて聞く名だな?」

「ジャガイモは芋の仲間です」

「どの様な形じゃ?」

「黄色っぽくて、丸いのや細長いのがあります」

「そんな芋があるのか……」

 ジャガイモは無いのか、フライドポテトやコロッケやポテトサラダは食べられないのか……。

「あ! もう少なくなった。——おねねと五もじの分しか無い」

「「「えっ⁉」」」

「あ、あの、違う味がありますよ。それを食べますか?」

 二つ目のコンソメ味を開け、袋を渡した。

「他にもあるのか! では、余は一枚だけじゃ」

「では、いただきますよ」

「お豪も頂戴!」

「俺は少しでいい」

「猫丸、初めての味だ! こんな菓子を食べているのか⁉」

 八郎は大谷殿に渡すと、

「本当、初めての味。ほほほ」

 大谷殿が石田殿に渡そうとすると、加藤殿が取り上げ、

「……体に悪そうな味だな」

 とは言え、ポテトチップスをしっかり取って食べながら、福島殿に渡す。

「だが、酒の肴に合うな」

 小さなポテトチップスを、たくさん食べてから、石田殿に渡す。

「私で最後か……。んっ?」

 石田殿が袋の中を見て手を突っ込み、オレの顔を見た。

「——馬鹿猫、この菓子は無いのか?」

「えっと、その……あの、無いっす!」

「馬鹿猫ぉー!」

「ぎゃああああ! 責めないで! 次の菓子は最初にあげますぅ!」

 次のお菓子を急いで出した。

「清涼菓子です! 石田殿! どうぞ!」

 箱に入っている数粒出して渡し、それを全て口に入れた。

「ん? 何だ? ——何だこれは⁉」

「えっ?」

 石田殿は、ものすごい剣幕で抜刀し、

「馬鹿猫! 汝は上様に毒を盛る気かぁー‼」

「えっ? ええっ⁉」

「あぁ、菓子だろ?」

「確かに、『何だこれは』だが、毒では無いだろう」

「これは美味、もっと欲しい」

「大谷殿、私の分も」

 周りは清涼菓子に夢中で、オレと石田殿の事はスルーだ。

「馬鹿猫ぉ」

 石田殿は物凄い目つきで睨んでいる。

「だーかーらー‼ 毒じゃありません! お菓子です‼」

「こんな菓子があるかぁ!」

 石田殿は抜刀したまま、オレに向かってきた。

「ぎゃー! 助けてー!」

 斬られたくないので、走って逃げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ