表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
備前宰相の猫  作者: 山田忍
149/153

猫とコスプレ

 長岡殿の騒動から、更に日が経ち、大坂城にて、

「猫様ー! お兄様ー!」

「見るのじゃ!」

「似合います?」

「着てみたのだが」

 お豪ちゃんや三姉妹も甘々なロリータのワンピースやドレスを着ていた。

「猫様の姉に作ってもらいました!」

 そういって嬉しそうに一回転するお豪ちゃんを見て、

「お豪、愛らしいな南蛮の姫君みたいだ」

「あ、ああ、似合っているよ。皆……」

 三姉妹たちも嬉しそうに、

「そうか。似合っているのか」

「たまには悪くない」

「ありがとうございます」

 姉ちゃん……これの事か、と思っていると、

「おおおっ……なんと愛らしくなったものだ……五もじ」

「ととさまもですかー! 大坂の姫君は皆、この着物にしましょう!」

「そうじゃ! 姫君は皆、その着物にしよう!」

「わあ!」

「そうとなったら、猫よ‼ お主の姉を呼ぶのだ!」

「えっ⁉ い、いいですけど……」

 いいのかな、これ?

 まあ、上様に言われたので、宇喜多屋敷に戻ると、

「姉ちゃーん! ……いない」

 屋敷の中に姉ちゃんはいない。

「何処かに出かけたのだろう。探しに行くぞ」

 オレたちが探しに外に出ると、

「あっ、ブサイク、紅葉」

「薫探しに来たの? 薫は……」

 紅葉が指さした先に姉ちゃんはいたが、

「翔? 今それどころじゃない‼」

「ああ、そうだよ!」

「姉ちゃん! き、如月⁉ なんで⁉」

 姉ちゃんはともかく、なぜか如月はパジャマ姿だ。

「二人で作った服があるの! それを着てもらわないと‼」

 確かに姉ちゃんの手にはスマホと燕尾服があり、如月の手には白衣を持っている。着てってまさか……。

「何で、儂がそんな着物着んといかんのや‼ しかも何やねん‼ その板は⁉」

「や、弥九郎さん! やっぱり、どしたん?」

 オレのところに駆け寄った弥九郎さんは、

「猫さん‼ あの二人を止めてくれへんか⁉ あの二人、儂にどちらか着ろって言うてるんや!」

「白衣か燕尾服かどっちか……両方でもいいのよ! 眼鏡は貸すから!」

「そして、ボクは患者さんかドジっ子メイドになって、お医者さんごっこかメイドさんごっこをするのよ!」

「やめんか‼」

「私は写真を撮るだけだから、撮らせてよ」

「弥九郎様、お医者さんならお医者さんで、お注射を、執事さんなら執事さんで折檻を、どっちかに着替えてよ。ね」

「何が『ね』や! 絶対に嫌や‼」

 少し離れて静観している紅葉に、

「止めないのか?」

「……一枚、欲しいな。って」

「はあ」

 ここはオレが、弥九郎さんと姉ちゃんの間に立って、

「姉ちゃん、もういい?」

「翔、さっきから何よ?」

「上様がさあ、大坂の姫君の着物を全部ロリータにするって言ってるんだ。それで、作り方を知ってる姉ちゃんに用があるんやけど」

「あら……じゃあ、写真撮らせてくれるって言うのなら、教えてあげる」

「えっ⁉」

 弥九郎さんを見ると、露骨に嫌そうな顔をして、

「絶対に嫌や‼ 儂は着ん!」

「弥九郎さ~ん」

「小西殿、着てくれ! お豪の頼みなのだ!」

「それでも、儂は着ん‼」

 弥九郎さん、これは意地でも着ないな。

「どうする、八郎?」

「猫丸の姉に着物を着せる事を諦めさせる事は出来ないのか?」

「ムリ!」

「そうか」

「うーん……あっ、そうだ! 如月!」

「何? 猫ちゃん」

「如月、アレ持ってるなら貸してくれないか?」

「アレ? なぁに?」

「ああ、——」

「わかったわ。いいわよ」

「ありがと!」

 アレを借りたオレは急いで、あの人の屋敷に行った。

 その後、

「姉ちゃーん‼」

「翔、あんた——⁉」

「い、石田殿⁉」

 連れて来たのはミニスカメイド服を着た石治部さんだ。

 オレは如月からメイド服を借り、石治部さんにエリンギとの散歩をエサに何とかメイド服を着てもらって、姉ちゃんの気を引きつける事を考えたのだ。

「姉ちゃん、作り方とか教えないと写真撮らせないぞ」

「教えてあげるわ! 連れて行って!」

 と言いながら、石治部さんの写真を撮った。

「では、大坂城に行こう」

「もちろん! あっ、白衣と燕尾服は置いていくわ」

「な!」

「石治部さん、ありがとうございます!」

「この着物は?」

「後で如月に返してください」

 なんとか姉ちゃんを大坂城に連れて行く事に成功した。

「おお、来たか!」

「ロリータの作り方、任せなさい! まず、完成図と型紙は書いておくわね」

「完成図と型紙はいいけど、作る服は一着二着じゃないよな? どうすん?」

「そうだ。見たところ、手間暇がかかる着物だ。大量に生産するには時間がかかるぞ?」

「実は、長岡殿がミシンを欲しいって言ったから足踏みミシンの作り方を教えたのよ! それを教えてあげるから、それで作るのよ!」

「みしん?」

 姉ちゃんは小型のミシンを出し、布を縫った。

 その速さと正確さと縫い目を見た上様は感動して、

「おおっ‼ こんなに速く縫えるとは‼」

「これではないけど、足踏みミシンも使えば、早く効率よく、着物が作れる便利な物よ!」

「そうか! なら、みしんの作り方を教えてくれないか? 布は余の方で用意する」

「いいわよ!」

「これで、大坂中の姫君が皆、可愛い着物に包まれます!」

「さっそく、作るのじゃ!」

 お豪ちゃんたちは嬉しそうだ。だが、

「八郎、これでいいのか?」

「いいのではないか。お豪も嬉しそうだ」

「うん……」

 なんだろう、姉ちゃんの色に染まっていく、なんだか複雑だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ