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備前宰相の猫  作者: 山田忍
148/153

猫と妻

 数日して、

「いったいなんだろ?」

「長岡殿、私達に見せたい者とは」

「女なら大歓迎だ」

 長岡殿に呼ばれたオレたちは長岡殿の屋敷に行く事にした。

「来ましたよー」

「……よく来たね。……宇喜多殿と…………化け猫……」

「⁉ 長岡殿⁉ な、何だ⁉ その着物は⁉」

 長岡殿はゴシック王子な服を着て、オレたちを出迎えてくれたけど、これって……。

「……これ? ……化け猫の姉が教えてくれた着物…………作り方だけ聞いて……後は某が考えて……装飾をしたのさ…………」

「す、すげーな」

 この時代で、よくぞここまでのセンスと思う! どれだけ、姉ちゃんの本を読んだんだ? それとも才能ってヤツ?

「……それより……見てほしい……来て…………」

 オレたちは屋敷の一室に行くと、

「……見て……」

「おおっ⁉」

「えっ⁉」

「ふにゃ!」

「……」

 ゴスロリのワンピースを身に纏った美しい女性が、誰⁉

「……美しいだろう……某の妻さ…………」

「お、奥さん、いるんですか⁉」

 前来た時、会わなかったぞ‼

「……いるよ……大半の者は……」

「そ、そうですか……」

 確かに他の人の屋敷に行った時、刑部さん以外の奥さんには挨拶したぞ! って事は刑部さん……。

「それよりも……どうだい…………美しいだろう……」

「あ、ああ……そうですね……」

「綺麗だな……」

「ふにゃあ」

 エリンギがお腹を見せてゴロゴロしている。

「そう……じゃあ…………」

 長岡殿は抜刀して、

「死ね!」

「えええっ⁉」

「なっ⁉」

 長岡殿が襲い掛かった。

「そ、そんな、何か悪い事でも‼」

「美しい着物を自慢したい! その着物を纏った妻を見る! その美しさに皆、魅了される! だから死ね!」

「なんですか⁉ それ⁉」

「ね、猫丸! まずいぞ‼」

「そ、そうだな。ここは‼」

 八郎の腕を掴み、

「逃げるぞ!」

「そうだ!」

「……」

 だけど、長岡殿の奥さん、この騒ぎに動じないなんて……それに、どこか表情も悲しそう。

「待て!」

 外に出たけど、長岡殿が追いかけてくる。

「どうする⁉ この様な時は⁉」

「誰かの屋敷に避難する‼」

「そ、そうか。では、何処に?」

「そうだ——⁉」「⁉」

 後ろから鉄と鉄が当たる音がしたので見ると、黒い着物を着た背の高い男の人が刀で長岡殿を止めている。

「あ……」

「何をしている与一郎?」

「し……師匠……」

 なんと止めたのは宗易さんだ‼

「与一郎。何故、刀を振り回していた?」

「……そこの二人が……妻を見たから……です……」

「やはりそうか。お主の嫉妬深さは聞いておったが、宇喜多殿と猫は人の妻を奪い取るような者か?」

「……」

「とにかく戻るのだ。妻を置いてはならないだろう」

「…………はい」

 長岡殿は大人しく去ったが、

「宗易さんって強いんですね」

「この程度なら誰でも出来る事だ。では、行かせてもらおう」

「あっ」

 宗易さんも去って行くと、

「どうする?」

「ん? えりんぎは……?」

「あっ⁉ いない‼」

 エリンギ、まさか……。

「ふにゃああああああああ!」

「待て! うぬは雄だろう! 何故、膝の上に座っているんだ!」

 エリンギと長岡殿の大声が見ると、

「ふにゃああああああ!」

 エリンギは抜刀した長岡殿に追いかけられていた。

「長岡殿……」

「オス猫にも容赦ないんだな」

「えりんぎはどうする?」

「八郎、放っておこう」

「……そうか。では」

 オレたちは帰る事にした。

「ふにゃああああああああああ‼」

 その夜、

「バカ猫‼ なぜ、俺を助けない⁉ 酷い目に遭ったぞ‼」

「エリンギなら自力で帰って来るじゃん。前だって海に落ちたけど、いつの間にか船にいたじゃん」

「長岡殿の奥方には変な事をしていないだろうな?」

「してない‼ 膝の上でゴロニャンしていただけだ!」

「エリンギ」

 普通の猫なら可愛いけど、エリンギじゃあなあ……。

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