猫と説教
「えっ⁉ なにこれ⁉」
女房衆とかと言った女の人たちが皆、妄想みたいな事や書を書いているではないか。
「あれはあれで~」
「きゃっきゃっ!」
「猫丸の姉の影響か。皆、あの様な事になったではないか‼」
「ま、待てよ。確かに姉ちゃん。BLとか教えていたけど……」
オレはふと、姉ちゃんの言葉を思い出した。
『腐女子は一匹いれば百匹以上に繁殖する!』
「……本当なんだな」
「何が本当ですか。猫殿」
「うおっ⁉ 王の兄ちゃん‼」
王の兄ちゃん、すげぇ怖い‼
「これは何ですか。皆が男色にのめり込むとは」
「これは……その……」
「猫殿、後で私を屋敷に連れて行ってもらいたいのですが」
「えっ⁉」
完全にヤバい。
「よろしいでしょうか?」
「私は構わないが……? 猫丸?」
「…………いいっすよ」
こうして夜、
「帰って来たわよ! ……ん?」
姉ちゃん、王の兄ちゃんの説教を……。
「猫殿、猫殿の姉上をお借りします」
「私、何?」
王の兄ちゃんは姉ちゃんを連れて行った。
「……どうなるんだろう?」
「さあ? それは分からない」
朝になり、
「帰って来たわよ」
不機嫌そうな姉ちゃんが帰って来た。
「おおっ⁉ 姉ちゃん⁉ 朝帰り⁉」
「朝までなるなんて、何でよ‼ もう‼」
「……猫殿、何ですか。貴方の姉は」
王の兄ちゃんも来ていたが、
「王の兄ちゃん⁉ 顔色悪‼ えっと……その……」
「……あの様な方は初めてです。色々な意味で」
「あの……ごめんなさい」
「猫殿が何故謝るのです? 気に病む事ではありません」
「翔、何があっても腐女子はやめないわよ。あんたたちもよ!」
「オレたち⁉」「私達⁉」
顔を見合わせてから、
「「何かやめる事あったのか?」」
「とにかく、高槻市のラッパーは帰りなさい! 私はしなきゃいけない事があるのよ!」
「長岡殿の事?」
「まさか、長岡殿を——」
「違うわよ。他に私の技術にほれ込んだ人がいるからよ」
「姉ちゃんの技術? 動画? コスプレ? なに?」
「コスプレ……かしらね」
「あんまり変な服作るなよ」
「作ってないわよ。失礼ね」
ならいいけど。
「では、猫殿。私は帰ります」
「ああ」
だが、王の兄ちゃんは小声で、
「諦めませんよ」
と、言っていた。
翌日、
「これ、いいわね」
「いいでしょ。お気に入りなの」
如月が宇喜多屋敷に来て、BL本を読んで嬉しそうになっている。
「猫丸……」
「どしたん?」
八郎は小声で、
「客人が来ているのだが……」
「客人?」
「声が大きい! 行くぞ」
「あ、ああ」
客人の所に行くと、
「猫さん。坊ちゃま。来ました」
「弥九郎さん⁉」
「実は——」
「弥九郎様ー‼」
どんな耳をしているのか、如月が走って玄関まで来た。
「き、如月ぃ⁉」
「弥九郎様‼ 何の用⁉ 今からボクと——」
「阿呆‼ 猫さんの姉さんに用があるんや‼」
「あら、薫に?」
「せや、儂の屋敷に行くんや。猫さんの姉さんだけやで」
「オレはどうでもいいけど、とりあえず姉ちゃん、呼んでくるよ」
姉ちゃんを呼んで事情を説明すると、
「わかったわ。如月——」
何やら、如月に耳打ちをして、
「わかったわ」
それから、姉ちゃんは、
「行って来るわね」
「では、行きましょうや」
姉ちゃんと弥九郎さんの二人は行ってしまった。
少ししてから、
「ん? そういえば、如月は?」
「あっ? いない」
その後、
「帰って来たわよ」
姉ちゃん一人で帰って来た。
「あれ? 姉ちゃん。如月は?」
「如月? ああ、如月なら、あのイケメンの屋敷よ。こっそり、ついて来るように言ったの」
「やっぱり、そうか」
「屋敷には、案の定、高槻市のラッパーと他数人いたわよ。それで如月を呼んでおいたの。今頃、何をしているのかしら」
「「……」」
知りたくない。