着物について
その頃、長岡屋敷では、
「ああ…………‼ どれも見事な生地だ……‼」
長岡殿って殿方は、この時代には無い色とりどりの生地を見て興奮しているわね。
「いいでしょ! コスプレ用の布、持って来てたのよ!」
「茶色まである……」
「そりゃ、あるわよ」
「茶色…………これは見事だ……茶色と言う色は…………武士は皆……こぞって着る色だ……」
「それまで……黄色い色だ…………だが、最近……石灰を使う事で赤みの強い茶色になったのさ……」
「それは、初めて聞いたわ」
「この様な…………布と着物があるのなら……おいで…………」
ある部屋に通すと、
「ここに……」
部屋の中に居たのは美しい女性……だけど、どことなく儚げね。
「……」
「この人は?」
「美しいだろう…………某の妻、お玉だよ……」
「えっ⁉ ああ、結婚しているわね」
「? 君は……女だから……いいのさ…………女で駄目なのは……あの…………男を追いかける淫乱な白拍子だけさ…………」
途中から、声のトーンに怒りが入っているわね。何かあったのかしら?
「それで、どうするの?」
「ああ……お玉の為に似合う着物を作ってほしい…………」
「服を? いいわよ! 任せなさい!」
メジャーを出して、
「何それ……」
「メジャーよ。これで体の形を測るのよ」
「お玉に何かしないだろうな……」
刀に手が触れているけど、強気に、
「しないわよ。私を斬ると見事な着物は永久に着れないわよ」
「…………」
「さあ、ダンナも出て! 女性の体を測るから!」
「……」
大人しく出て行ったわね。よしよし。
測り終わると、
「もういいわよ!」
「いいの……」
型紙用の紙を出し、型紙を作り始めると、
「何……? これ……?」
「型紙よ。布を型紙に合わせて切るの」
「へえ……」
型紙を作り、布を切ると、
「次はこれ、持ち運び可能な小型ミシン! これで……」
「おお……」
ミシンで縫うところを見て、長岡殿の目は完全に釘付けになっているわね。
「これ…………欲しい……いくら……?」
「これ、電池式なんだけど、電池無くなったら、使えないわよ。こうしなさい——」
「……そうか」
夕方、
「出来たわよ‼」
「おお……!」