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備前宰相の猫  作者: 山田忍
144/153

猫と着物

 その夜、

「あーあ。疲れた。この疲労は姉ちゃんのせいだ」

「人のせいにしないで、でも、今日は有意義な一日だわ」

「何が有意義だ。悪影響をばらまいただけじゃねえか」

「これで、この時代に沢山の乙女たちが出来たわ……日本から、やがて世界に……」

「はあ……」

 オレが呆れていると、

「…………」

 ブサイクの元気がない。

「……どしたん? ブサイク」

「……あ、ああ、何でもないわ‼ 翔‼」

「?」

 どうしたんだろうか?

 そんな時、

「猫丸、珍しい客人が来たぞ」

「珍しい客人?」

 誰かと思っていくと、

「……化け猫か」

「ほ、長岡殿⁉」

 た、確かに珍しい客人だ‼

「えっと……なんですか?」

「…………化け猫には用は無い。……用があるのは化け猫の姉だ……」

「私に?」

「……化け猫の姉……君の着ている着物が見事なのだ……」

「そりゃそうよ‼ 有名ブランドの服よ! 高かったんだから‼」

 姉ちゃん、自分で動画などでお金を稼いでいるんだよな。姉ちゃんの作品は、全て書籍やCD化しているくらいだからな、税金納めているし。

「それにしても、イケメンで美的センスもあるなんて、ああ、あなたで本が一冊書きたいわ‼」

「…………? どうでもいいけど……君の着物について知りたい……」

「いいわよ‼ 教えてあげるわ‼」

 姉ちゃんは、スマホにあるゴスロリやロリータやパンクスタイルなどを扱ったファッション誌を見せていると、

「ああ……見事だ…………! どれも……見事だ……」

 長岡殿の死んだ目は、生き返った目になっている‼

「そうでしょ! 素敵でしょ‼」

「ああ……‼ 本当だ……‼」

 あ、なんか元気になってる。

「……着物……見事だ……‼ 欲しい……」

「欲しい⁉ 作ろうか⁉」

「出来るのか…………明日……作ってくれ……」

「わかったわ! 作るわ‼」

 この二人、相性いいのか?

 そして翌日、八郎は出仕しているので、オレと姉ちゃんとエリンギで長岡殿の屋敷に行く事になった。

「翔、ここでいいの?」

 長岡殿の屋敷を知っているので、オレが屋敷まで案内する事になった。

「ああ、前、茶の湯に行ったから」

「あんたが茶の湯ねえ……そういうの苦手なのに」

「出来なきゃいけないからだ」

 屋敷に着くと、長岡殿が出迎えてくれた。

「やあ……来たね…………化け猫も来たのか……」

 姉ちゃんの時とオレの時では、声のトーンが明らかに違う。

「来たわよ!」

「えっと……付き添いです」

 長岡殿は元気なく、

「……化け猫は……帰っていいよ……呼んでいないから……」

「えーっ⁉」

「翔、悪いわね。私は服作りをするから」

「姉ちゃん、帰れるよな?」

「当然よ。誰だと思っているの?」

「……帰らないのなら…………」

 長岡殿は抜刀して、

「…………この兼定……名刀だけど…………まだ……名前を決めてないんだ……化猫切なんて名前は……どうだ……」

「か、帰ります‼」

「ふにゃ!」

 エリンギを頭の上に乗せ、長岡殿の屋敷を出て少し遠くに逃げた。

「あー、無事に逃げたぞー」

 頭の上のエリンギは嬉しそうに、

「化猫切か、いい名だな」

「エリンギ‼ やめろ‼」

「何で、オレまで逃げなくてはいけないんだ。せっかくのチャンスだったのに?」

「せっかくのチャンス? ……まさか、長岡殿の屋敷の中に美人でもいるのか?」

「ふん」

 いるんだろうな。だが、

「それより、どうする。時間あるぞ。宇喜多屋敷に帰るか、誰かの屋敷でも行くか、どうする?」

「俺はガールハントだな」

 と言うと、エリンギはどこかに行ってしまった。

「う~ん。どうしよう……」

 誰の所に行こうかと悩んでいると、

「猫ちゃん」

「うおっ! 如月‼」

 背後から如月が挨拶をしてきた。

「キクラゲ、ガールハントなの。相変わらずね」

「エリンギだもん。仕方ない」

「一人でどうするの? ボクは大坂城に行こうと思っているけど」

「大坂城?」

 如月は、嬉しそうにオレの周りを回って、

「弥九郎様が出仕中なの。そこでボクが仕事の疲れを癒やしてあげるの」

「迷惑を掛けに行く、って事だよな」

「迷惑って、そんな言い方して、——いいわ。ボク一人で行くから」

「あっ⁉」

 如月が速く走って大坂城の方に行った。

「……オレも行った方がいいよな」

 確実に多くの人に迷惑が掛かる。

「よし」

 オレも少し遅れて大坂城に行く事にした。

 そして大坂城では、

「大坂城に来たけど、弥九郎さん、どこだろ?」

 大坂城をウロウロしていると、

「猫丸ー‼」

「ん?」

 オレの元に八郎がやって来た。

「八郎? どしたん?」

「猫丸……実は……」

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