屋敷について
大坂城に行く前、
「ブサイク、留守番しているのか?」
「うん」
「オレは姉ちゃんたちの様子を見に大坂城に行く、ブサイクはどうする?」
「私はここにいるわ」
「そっか。じゃあ、何かあったら、大坂城にいるから」
「わかったわ」
それから、数時間して、
「翔……」
翔の事が気になっていると、侍女さんが来て、
「猫丸の友人に用があるお方が来ております」
「私?」
用意してくれた牛車に乗って、その人のところに行くと、
「やあ」
「あっ……」
来ていたのは、直衣を着た身なりが良く、人のよさそうなおじさま。
「宇喜多殿は留守だって聞いたよ。——ああ、これ、口に合うかどうか、わからないけど」
そのおじさまは、ガラス瓶に入った金平糖を私の前に差し出した。
「あ、ありがとうございます!」
「私は木下長秀と言うんだ」
「あ、坂本くるみと言います」
木下……秀吉が藤吉郎で……弟がいたような……。
「へえ……名があるのか。名字どころか名前が無い娘もいるからね。猫丸の国では、皆、名字も名前もあるのが当然だと、聞いているよ。後、側室にはしないから」
「はあ……」
ない人もいるのね。それと側室って何で?
「ところで、何か用があるのですか?」
「ああ、あるよ。ここでは話せないから、是非、私の屋敷に来てほしい」
「えっ⁉」
そうして屋敷に行くと、
「わあ……」
質素だけど洗練された屋敷の一室に通された。
お茶が出されると、
「さて、そろそろ、本題に入ろうかな」
「何ですか? 本題って?」
「それは——」