猫と男
紅葉の所……あの三姉妹の所だ。
「おお!」
「ああ……」
「ふむ‼」
三姉妹たちが紅葉のスマホを見て興奮している。
「様々な男がいるのう!」
「本当、いるわ」
「確かに」
見ているのは、スマホの中にあるアイドル誌の数々だ。
「どれもこれも貧弱な男じゃ。逞しき男はおらんかのう」
「腕を見せているけど、皆、細いわね」
「その中で見つけるのだ」
現代人は武士とかと比べたら細いわな。
「猫の国の貴公子は皆、華奢じゃが、その中で逞しい男を探すのじゃ」
「童の貴公子がいますね」
「姉上、ここには娘がいるぞ!」
「おおっ‼ そうじゃな! 猫の国では娘も貴公子か」
アイドル誌を見ながら指さして、きゃっきゃっ言っている。
そういうところを見ていると女の子だけど……。
「ああ、三人とも、その人も男だから」
「何⁉ この様な男もいるのか⁉」
「一番、華奢ですね」
「男に見えん。もはや女子だ」
「次は誰じゃ!」
「あら?」
「これは、高——」
「気のせいだ‼ 気のせい‼」
取りあえず、違うページにしてごまかした。
「そうか……おおっ‼ 見るのじゃ‼」
「あら」
「ほう」
「なかなかの美丈夫。猫の国にも、逞しき貴公子はいたのか‼」
「ほれぼれします」
「甲冑が似合いそうだ」
更にページを進めると、
「おや」
「これもまた、魅力的な男が」
「この切れ長の目が……」
「次は‼」
三姉妹が熱中していると、紅葉がオレに、
「翔」
「なに?」
「翔、仲いいのか?」
「ああ、皆と仲良くはしてるけど」
「そう。わかった」
「?」
「あんた、思ったより楽しくやっていけてるんだな、って」
「まあ、やってはいけてるよ」
「ならいいや」
「? どうしたんだ?」
「……何でもない」
「……わかった」
二人で会話をしていると、大きな声になり、
「この者が‼」
「この殿方は」
「この男が!」
どのアイドルがいいかで揉めている。
「あ、あのー、ケンカはやめなよ」
「「「猫‼」」」
「な、なに⁉」
「「「どの者がいいか選んでもらおう‼」」」
「えっ⁉」
「「「さあ‼」」」
「えっと……その……」
オレが困っていると、紅葉が、
「この人は——」
一人一人の良さを丁寧に教えてくれた。
そういや、紅葉も昔から面倒見の良さで姉ちゃんとつるんでいられるんだよな。
それを聞いた三姉妹は、
「成程、この様な者か」
「興味が湧きますわ」
「この者も魅力があるのか」
三姉妹たちは三者三様に納得して、
「他のも見せてくれないか」
「見たいです」
「まだ、見ぬ者も知りたいのだ」
「いいよ」
スマホの中の違うアイドル誌を見せている。
「そういえば、姉ちゃん……」
「行くの? あたしは行けないけど」
「取りあえず、姉ちゃんの様子見程度だけど」
姉ちゃんの居そうな所を探しに行くと、一か所、にぎやかな声が聞こえてきた。
「失礼! 姉ちゃ——」
「ああ……」
「素敵……」
「これはね——」
明らかにヤバいものが蔓延している。その元凶は、まだまだ布教している。
「姉ちゃん‼ やめんか‼」
「翔、何をよ」
「その布教だ‼ これ以上、広めるな‼」
「いいじゃない。人類総腐女子or腐男子化計画よ」
「っなんて事するんだぁ‼」
「さあ、これは——」
姉ちゃんは、続けて布教をしている。
「姉ちゃん‼ 頼むから、やめてくれよ‼」
「何で?」
「やめないと、オレが怒られるんだ‼」
「あんたが怒られる程度は大した事じゃないわよ」
「だーかーらー‼」
「とにかく‼ 次に——」
「聞いてくれ‼」
姉ちゃん、オレが止めなきゃ、オレがあの人に怒られるんだ‼
頼むから、わかってくれ‼
「では——」
「姉ちゃん‼」
「これは——」
無視かよ‼