猫と布教
「それにしても、夕方になったよな」
「ああ、夕刻だ」
「姉ちゃんたち遅いな。なんでだ?」
「さあ、気になるのなら行くか?」
「じゃあ、行こうか」
オレたちが大坂城奥御殿に行くと、
「何をしているのですか⁉ 子猫の姉や友を側室に迎えるとは⁉」
「あーそのー……」
北政所様と上様がケンカをしている。
「それより、姉ちゃんだな」
更に探すと、
「あーっ‼」
「これは、こうなっているのか」
「そうよ。この二人は、そういう関係なのよ」
「なるほど」
「まあ……」
「なぜ、隠しているのだ?」
「恥ずかしいでする……」
「姉ちゃん! 何しているんだー‼」
姉ちゃんは三姉妹やお豪ちゃんに18禁のBL本を見せているではないかー‼
「姉ちゃん! なんてことをー‼」
「なんてことじゃないわよ。布教よ。布教」
「なにが布教や‼ したらいかん事や‼」
「BLを布教して何が悪いのよ‼ 萌えは万国共通よ!」
「時代が違うだろ! じ・だ・い!」
オレたちがケンカをしていると、顔を赤らめたお豪ちゃんは不安そうに、
「猫様、お兄様と…………この様な行為をしているのですか?」
お豪ちゃんが見せたのは、如月なら平気で言えるシーンだ。
「してねえよ!」「していない!」
お豪ちゃんは満面の笑みで、
「そうですか‼」
「してるでしょ」
「姉ちゃん‼ やめんか‼」
言い争っていると、紅葉がオレの腕を引っ張り、
「翔、殴ったんだけどなぁ……」
姉ちゃんの顔を見ると、頬が赤くなっている。
「殴ったのに、か……」
ブサイクが申し訳なさそうに、
「翔……何だか、ごめん……」
「ブサイク……気にせんでいい。——帰るぞ。姉ちゃん!」
「まだ、これからなのに‼」
三姉妹とお豪ちゃんが見ていた本を取り上げ、姉ちゃんたちを連れて帰った。
「また、明日会おう」
姉ちゃんたちを連れて帰っていると、
「猫丸」
「孫七郎さん!」
「猫丸、お主の姉に用がある」
「姉ちゃんに? まさか……」
「本、無いか?」
「やっぱり」
「本、あるわよ。翔が持っているわ」
「そうか。今日は遅いから、明日見せてくれないか?」
「いいわよ‼」「よくない!」
「何故だ? 猫丸の持っている物語以外の話が知りたいのだ」
「……そう言われると」
一応、姉ちゃんもBL以外のマンガや、オレと違って小説もあるからな……オレの書籍以外って言われるとオレのだけじゃ弱い。
「じゃあ、明日! また、ここに来るわ」
孫七郎さんは嬉しそうに、
「本当か! かたじけない‼」
「じゃあ、行くわよ!」
「……翔、あたしも行くよ」
「紅葉も?」
「ああ、あの子らに見せる本があったけど、薫ので一日終わったから」
「えっ、まあいいか」
紅葉の方はマシか。
ん? いや、待て!
「紅葉! 待って! ちょっと——」
紅葉に耳打ちすると、
「ああ、あれの事か。わかった。そうするよ」
「悪い‼」
「猫丸、あれとは何だ?」
「なんでもない! 気にするな‼」
翌日、
「これが、猫丸の姉の書か……」
孫七郎さんは真剣に読んでいる。
「ふんふん……」
「いいでしょ。他には——」
孫七郎さんが全ての書籍を読み終わると、
「すらいむなる生き物か……。俺もあの様になりたい」
「……」
孫七郎さんが遠くを見ている間に、
「姉ちゃん! 帰るぞ‼」
「帰るぞ‼ って、まだ用があるのよ」
姉ちゃんは一人で大坂城の方向に走って行った。
「待てよ! 姉ちゃん!」
姉ちゃんが奥御殿の近くに行くと、
「ふにゃあ!」
オレたちの前に来たのは、側室や女房衆の女の子たちプラス如月だ。
「あの書物を見せて!」
「はあっ⁉」
「いいわよ」
「姉ちゃん。まさか⁉」
「あの人達とも約束したの。この本を見せるってね」
「全員かよ」
如月……だけじゃなく全員か。
「猫ちゃん。ボクは後でいいよ」
「あれ?」
エロが好きなのに?
「ボクは猫ちゃんの彼女に、あのカタログのお礼がしたいの。ありがと! って、その後、BL本を読むわ」
「……彼女じゃないけど、如月、カタログ程度でいいのか?」
「うん! 弥九郎様にあんな物こんな物で責められるボク……それを妄想するだけで……ボク‼」
「…………」
こいつは無視だ。
「さあ、みんな読んでいいのよ!」
「って、姉ちゃん‼」
姉ちゃんは女の子を連れて、どこかに行ってしまった。
「ああ……不安だ」
「そういえば、猫ちゃんの友達の女の子、三姉妹に何かを見せていたわ」
「ああ、あれか。先、紅葉の所に行くか」