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備前宰相の猫  作者: 山田忍
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大坂城にて

 時は一時間前、大坂城表御殿御対面所にて、

「上様!」

 大坂城の城主である関白藤原秀吉が煌びやかな着物を纏い鎮座している。

「どうした? 佐吉、桂松?」

 佐吉と呼ばれた石田治部少輔三成と、桂松こと大谷刑部少輔吉継の二人が入り、座った。

 佐吉と桂松と言うのは二人の幼名である。

「この大坂城に獣が紛れ込みました」

「獣? 捕まえて逃がしてやれ」

 藤原秀吉はどうでも良さそうな態度で二人を見た。

「ただの獣ではありません。耳が生えており、左右の目の色が違う人の様な生き物で」

「その生き物は、南蛮風の見慣れぬ着物を着ており、その着物には古い血が付いております。恐らく、あれは生ける人を喰らった証」

 大谷吉継の言葉で、藤原秀吉のどうでも良さそうな態度は一変し、

「な、何じゃと! 人を喰う怪物! それはいかん! 佐吉、桂松! その怪物を殺すのじゃ!」

「「はっ!」」

「……」

 石田三成は言葉を詰まらせている。

「どうした? 佐吉?」

「……あと、怪物は愛らしい猫を捕まえております。猫は保護をしたいと思うのですが」

「構わんぞ」

「はっ‼ ありがたき幸せ‼」

「それと上様、怪物の骸はどうするので?」

「骸は城下町で晒す」

「わかりました。では」

 二人が去って行くのを見て、藤原秀吉は近習に、

「夜叉丸は到着次第、先に城内におる市松に怪物の征伐以上の重大な事を伝えるのじゃ!」

「はっ! それは……」

「五もじの周辺の警護じゃ! 佐吉と桂松が殺せずに、怪物が五もじに会ってしまったら、その先は……その先は……考えるだけで……」

 藤原秀吉は、その想像をして泣き出したが、近習は冷静に見ている。

「わかりました。では」

「他の者は、いくら死んでもよいが、五もじは決して死なせてはならぬ!」

 そして三十分前、大坂城山里曲輪にて、

「猫丸は何処だ? えりんぎも何処に行ったのだ?」

 宇喜多秀家が、猫丸を探しに美しい庭園を探していると、鐘の音が鳴り響いた。

「鐘の音! 大坂城で何があったのだ⁉」

 急いで表御殿に行くと、

「おお、八郎! 無事じゃったか‼」

「上様、この騒ぎは一体……」

「八郎、そちはここで隠れているのじゃ。人喰い怪物が大坂城で暴れているのじゃ」

「怪物⁉ 上様に害をなすのなら、私が成敗します!」

「おおっ! 四国で逞しくなったか! 八郎!」

「して、その怪物の特徴は?」

「耳が生えて、左右の目の色が違う、南蛮風の着物を着た人の様な怪物じゃ!」

「そうですか。それは……んっ?」

 宇喜多秀家の探していた人物の外見が、藤原秀吉が言っている怪物の特徴に似ている事に気が付いた。

「上様、その怪物とやらは、着物に血が付いていませんでしたか?」

「桂松の話では、古い血が付いておると言っていた。それは人を喰う時に付いた物じゃと」

「! 父上! それは‼」

 宇喜多秀家は藤原秀吉に、これまでの事情を説明する事にした。

「な、何じゃと! そ、それは! とんでもない命を出してしまった!」

「父上、すぐに命の取りやめを!」

 藤原秀吉は近習に向かって、

「佐吉と桂松に、やめさせるように伝えるのじゃ!」

「はっ!」

「父上! 私は猫丸を探しに!」

「うむ、行ってこい!」

「猫丸! 今、助けに行くぞ!」

 宇喜多秀家は急いで表御殿を出た。

「猫丸、何処だ」

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