表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
備前宰相の猫  作者: 山田忍
138/153

猫と思い出

 宴はお開きになり、姉ちゃんたちと宇喜多屋敷に帰る事になった。

 その内の一室を案内して、

「ここが、お主らの部屋だ。好きに使うといい」

「わかったわ」

 姉ちゃんの顔は嬉しそうだ。

「……」

「どうした?」

「夜の翔との様子……ふふふ……」

 それを聞いた八郎は毅然とした態度で、

「猫丸とは、何もしていないぞ」

「なら妄想するわ」

「姉ちゃん」

 完全に脳内お花畑だ。

「翔、ここでは元気だった?」

 ブサイクが不安そうな目で見つめている。

「ああ、色々あったけど、元気に過ごしているよ」

 オレの返事を聞いたブサイクは安心した表情になり、

「よかった! どんな事があったの?」

「実は……」

 オレは四国征伐から話した。

 四国征伐で八郎にあった事、大坂で追いかけまわされた事、堺で見世物になった事、岡山で事件が起きた事を話した。

 話を聞き終わったブサイクは、

「……っ! 翔……」

 涙を流して、オレに抱き着いた。

「ブサイク、なんで泣くんだよ⁉」

「翔……あんた……ひどい目に遭っているのに……その時、私は……翔の力になれないなんて……」

「…………」

 ブサイクがこんなに思っていたなんて、ブサイクがオレの力になりたい気持ちだけで、助けてくれた人たちと同じくらい嬉しい。こんな気持ちを(いだ)くなんて、昔のオレではありえない事だ。

「ブサイク」

 小声で、

「……ありがとう」

「⁉」

 ブサイクが顔を赤くして、

「な、何よ⁉ 翔⁉ 頭がおかしいんじゃないの⁉」

「いや」

 なんだか嬉しくなった。

 その時、戸が開いた。入って来たのは、八郎と姉ちゃんと紅葉だ。

「あれ? 二人とも出てたの?」

「ああ、使いの者って感じの奴らが、大坂城の女の子たちが誘っているんだ」

『大坂城でお主らの事について知りたいのじゃ』

『猫の国は、どのような国か知りたいのです』

『聞かせろ』

「って、言ってるみたいなんだ」

「なるほど、あの三姉妹なら聞きそうだな」

「どうしようか? 行きたいけど……」

「行ってあげたら喜ぶよ!」

「じゃあ、行こっか。翔、連れて行って」

「ああ! けど」

「けど?」

「姉ちゃんはダメ‼ 絶対に変な事、教えるから!」

「変な事? 何を?」

 姉ちゃんは白々しい態度で言った。

「なにをって、姉ちゃんの腐った事をだ!」

「腐ってないわよ。普通の事よ」

「普通の事が腐った事なんだ!」

「いいじゃない。私も行くわよ」

「マジで? どうしようか?」

「猫丸、大坂城に行くのか? 私も大坂城に行きたいのだが」

「八郎も? いいけど……」

「おおっ‼」

 姉ちゃんの大きな歓声が聞こえた。

「なに喜んでいるんだよ⁉ 喜ぶな‼」

「いいじゃない。カップリングでしょ。あんたたち」

「何がだ‼」

「猫丸、かっぷりんぐとは……?」

「八郎、聞くな!」

 いくら八郎でも、説明したくない事もある。

「大坂城、連れてってよ」

「ああ、いいよ。紅葉は」

「だーかーらー、何で、私は駄目なのよ⁉」

「姉ちゃんは腐っているからだ」

「猫丸、猫丸の姉は何処が腐っているのだ。何処も腐っている様には見えないのだが……」

「全てだ! 全て‼ 以上!」

「待て! 全てとは——」

「馬鹿猫、居るか?」

 オレたちが揉めていると、石治部さんが来ていた。

「石治部さん、来てたの⁉」

「来ていては、いけないのか?」

「いえ……びっくりしただけで……」

「石田殿。石田殿が来ると言う事は、何か用があるのか?」

「そうだ。そこの娘に用がある」

「なに⁉ 女装⁉」

「?」

「い、石治部さん。聞かなかった事に……」

「私たちに用って、なに?」

 石田殿は咳払いをし、

「実はそなた達に用があるのだ。上様が、是非来てほしいとの事だ」

「上様が? 何の用?」

「馬鹿猫が知る用ではない」

 石治部さんが言うと、八郎は少し考えてから、

「恐らく、想像つくが」

 だが三人は、

「ふーん。いいけど」

「早く済ませてよね。こっちも用があるから」

「……」

 ブサイクがオレを見た。

「まあ、なんかあったら、オレに言いな。すぐ駆けつけるから」

「……わかったわ」

「では、行くぞ」

 石治部さんと姉ちゃんたちは大坂城に行く事になった。

 二人だけになり、少ししてから、

「……八郎」

「どうした?」

「心配だ。行ってみる」

「大坂城にか? やはり、お主の姉や友は気に掛けるのだな」

「違うって、姉ちゃんが何するか、わからないからだ」

「何するとは、何をするのだ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ