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備前宰相の猫  作者: 山田忍
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行き方について(前編)

 昨日の事だった。

『はあ……』

 私はスーパーでの買い物の帰り道、

『…………』

『えっ⁉』

 夕食を買った帰り道、全身チェックの男の人が行き倒れていたの。

「なに⁉ 詳しく教えろ‼」

「ま、待って、順に言うから……」

 その男の人は、

『あのさ……動けないんだ……君が……持っている明太子をくれたら……元気になれるんだけど……』

『あ、明太子——』

 出すより速く、明太子を奪って、勝手に食べたわ。そして食べ終わると、

『ありがとう! 君にいいことを教えよう。北島翔君の事だ』

『か、翔の事⁉ 何か知っているのですか⁉』

『知っているよ。ただ、それを信じるか信じないか、は君次第だけど』

 この話に根拠はなかった。けど、

『…………信じるわ。教えて』

『翔君は一五八六年の大坂にいるんだ』

『せ、一五八六年⁉ 一五八六年って安土桃山時代じゃない⁉』

『そう、一五八六年の大坂に翔君は生きている。本当だよ』

『…………証拠は、あなたが誘拐したって事もあるのよ』

『誘拐じゃないよ。送っただけだよ』

 その怪しい男は笑って言ったわ。

『誘拐したのね。翔を返して‼ 警察に言うわよ!』

『警察はやめてよ。まあ、僕が一五八六年に送ってあげるよ』

『?』

『翔君は自分で探してみたら、どう?』

『私が⁉』

『そう、明日から夏休みだ。期限は三週間。本当に会いたいのなら、探してみれば?』

『……その言葉に嘘はないでしょうね?』

『ないよ。本当だよ。明日、高松中学校の運動場でね』

『あっ⁉』

 怪しい男は、いなくなっていたわ。

 帰ってから薫ちゃんに、

『薫ちゃん! 翔に会えるって‼』

『翔に?』

『実は——』

『ふーん。コミケには間に合うわね。本も取り返したいし』

『コミケと本って……』

『明日みたいだし、私達だけで行く? あっ、紅葉には私の方から言っておくから』

『でも、お父さんやお母さんが……』

『置手紙でもおいていたら、問題ないでしょ』

『そう、かな?』

『くるみ。今する事は学級委員長として、同級生や部活の奴や近所の人の動画を撮って、後から家族のも撮るから』

『ええ。わかったわ』

『私は紅葉に言うのと準備をするから』

 私は言われた通りに動画を撮って、翌日の夕方、

『くるみ』

『行くわよ』

『二人とも』

 私は制服で来たけど、ロリータパンクの薫ちゃんとギャルファッションの紅葉ちゃんが先に来ていたの。

 私もだけど、皆、しっかりキャリーなりリュックなりで荷物を持っていたわ。

『さあ、行くよ? 期限は三週間だけ』

『はい!』

『ああ、その前に』

 怪しい男はピアスとチョーカーとブレスレットを渡してくれたわ。

『これは?』

『これは通訳機、これがあれば、一五八六年の言葉が理解できるよ』

「いいなー。オレ、猫耳なのに!」

 オレが怒っていると、姉ちゃんは嬉しそうに、

「猫耳でいいじゃない!」

「話を戻すわよ」

『これを着けると、その時代の言葉が分かるのね』

 私はブレスレット、薫ちゃんはチョーカー、紅葉ちゃんはピアスを選んで、準備したわ。

『出来たわ』

『いつでも、いいわよ』

『翔、待っててね』

『その前に、これ』

 怪しい男は一冊の本を渡した。

『これは……きゃあ!』

 中を見ると、アダルトグッズのカタログだったわ。

『これは、ボブカットの子は危険だからね。その時、役に立つから持っておきなさい』

『……わかったわ』

 私がリュックにしまうと、怪しい男はスマホを構え、

『期限は三週間……行ってらっしゃ~い』

『『『きゃあ!』』』

 写真を撮られると、なんだか雰囲気が変わった気がして、見慣れない町になったの。

『ここは……』

 そこは小学校の修学旅行で行った映画村みたいな雰囲気で、その町にいる人の服装も時代劇のような雰囲気だったの。

『これって、映画? それともドラマ?』

『わからないけど、翔を探しましょう』

 それから翔を探すけど、

『ひそひそ……』

 ひそひそ話の内容を聞くと、

『何だい? あの娘たち、奇天烈な格好だね』

『傾奇者でも、着ないぞ』

 何だか、私達の服装を悪く言ってるみたい。だけど、

『か、薫ちゃん⁉』

 薫ちゃんが、その人達の所に行って、

『うるさいわね‼ これは、私にとって可愛い服なの‼ 同じような着物を着ている奴らが偉そうな口を聞くな‼』

 薫ちゃんは文句を言いに行ったの。

『薫ちゃん』

『あーあ。薫、言ってくれたわね』

『な、何や?』

『なんか、怖い子や』

 ひそひそ話をしていた人が驚いていると、

『よお、気の強そうな姉ちゃん』

『俺達と遊ばない?』

 派手な着物を纏ったガラの悪そうな男二人が来たわ。

『ひええ!』

『ひい!』

 ひそひそ話をしていた二人は逃げ出して、私達と野次馬だけになると、

『それにしても、この女は不思議な目だな』

『ああ、怪物の目みたいだ』

 薫ちゃんの目を見て不思議……だけど、怪物って翔の事⁉

『あ、あの——」

『ん? 何だ、この女』

『妙な格好だな』

 私は薫ちゃんの目を指さして、

『こんな目の男の子を知りませんか? 探しているんです』

『ああ、知らねえよ』

『それよりも、くくく……』

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