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備前宰相の猫  作者: 山田忍
133/153

猫と姉

「今、何と?」

「姉ちゃん?」

 オレの目の前にいたのは、動きやすく可愛らしいロリータパンクの服を身に纏った、同じ目の色で猫っ毛、猫目が良く似合うオレの姉ちゃんだ。

「ね……姉ちゃん……」

「翔」

「姉ちゃん!」

「翔……」

 姉ちゃんは、オレの元に駆け寄って来て、

「ね、姉ちゃん!」

「本返せぇー‼」

()うと思ったぁー‼」

 久々の再会はグーパンチで始まった。

「ね、猫丸⁉」

「ぶ、無事か……?」

 周りがオレの心配をしていると、

「あんた、再会して一発目、それ?」

 次に、茶髪の巻き髪にメイクバッチリのギャルファッションの女の子が入って来た。

紅葉(くれは)、お前も一緒なのかよ⁉」

「そうだけど、悪い?」

「……まあ、姉ちゃん一人じゃ、ヤバいし……」

「ああ、勝手に……って⁉」

 まだ誰かいて、そいつを弥九郎さんが止めようとすると、

「翔……?」

「…………ブサイク?」

 目の前には緑色のラインとスカーフに白い半そでセーラー服を着たブサイクがいた。

「翔ぅー‼」

「ブ、ブサイク⁉」

 ブサイクが泣き出したので、なだめようとすると、

「翔ぅー‼ って、きゃあー‼」

 ブサイクは目をつぶって、顔を隠すと、

「いで‼」

 オレの顔に平手打ちをした。

「な、なにするんだよ⁉ ブサイク⁉」

「翔‼ 何て格好しているのよ‼」

「格好……? はっ!」

「猫殿、だから言ったのに……」

 そういや、オレ、上様たちと一緒に裸踊りをしていたんだ。そのまま、皆と会ってしまったからか……。

「猫殿、早く服を……」

「ああ、そうだな」

 オレが服を着ていると八郎が、

「猫丸、あの娘が猫丸の姉か?」

「ああ、そうだよ。北島薫(きたじまかおる)、オレの双子の姉ちゃんだ」

「そ、そうなのか……」

「ん? 猫の姉? と、言う事は⁉」

 全裸の上様と虎之助さんと左衛門さんがやって来て、

「「「尻尾見せてくれ‼」」」

 ゴン! ゴン! ゴン!

「上様~‼ 虎之助さん~‼ 左衛門さん~‼」

 三人とも姉ちゃんに殴られて倒れている。

「翔‼ あんた言ったわね‼」

「いで!」

 そしてオレも殴られた。

「猫丸……無事か?」

「ああ」

「ほほほ、見せてもよかろ。見せて——」

 ゴン!

「刑部さぁん‼」

 刑部さんまで倒すって……。

「おのれ‼ 上様を殴るとは、無礼者め‼」

 石治部さんが抜刀して、姉ちゃんを睨んでいるが、

「あなた! もしかして、男⁉」

「それがどうした⁉」

「中性的な男の人、ふふふ……」

 笑顔の姉ちゃんには、明らかにヤバさが含まれている。

「な、何だ……?」

「姉ちゃん……」

 そう、姉ちゃんの脳みそは腐っている……を通り越して無くなってしまったと言えるくらい腐っているからなー。

「ところで、姉ちゃん。何の用?」

「私達は翔を連れ戻しに来たのよ。帰るわよ。翔」

 姉ちゃんはオレの腕を容赦なく引っ張った。

「えっ……でも……」

「でもじゃない。帰るわよ」

「そんな急に……」

「あのね、もうじきコミケなの。帰る気が無いのなら、死んで!」

「オレよりコミケ‼ やっぱり姉ちゃんだ!」

 どうしようと思っていると、如月が(かんざし)を持って、

「猫ちゃん。こいつ、猫ちゃんを殺す気でしょ? ボクがこいつを殺してあげる。その代わり——」

「お——」「阿呆‼ やめんか‼」

 弥九郎さんが入って来て、如月を蹴とばした。

「如月、姉ちゃん殺すなよ」

「でも、死んでって言ってるじゃない」

「やるの?」

 如月と姉ちゃんで一触即発の完全にヤバい雰囲気だ。

「えっ⁉ どうしよう⁉ そうだ! 確か……ボブカットの子には……」

 慌てたブサイクがリュックから何かを出している。

「はい! これ!」

 ブサイクが厚めの本を出してきて、それを見た如月は、

「これは……⁉ アダルトグッズのカタログ! 猫ちゃんを連れ戻すの手伝ってあげる」

 一触即発の空気はどこにやら、姉ちゃんと如月で同盟が成立した。

「翔、帰るわよ!」

「猫ちゃん。言う事聞くのよ」

 如月と姉ちゃんの二人がかり、これはヤバいと思うと、八郎が、

「猫丸‼ 猫丸を連れ戻すとは、どういう事だ。猫丸は私が飼っているのだ。私の許可無——」

「八郎、姉ちゃんに構うな——」

「翔! もう帰らなくていいわよ!」

「えっ⁉」

「翔をよろしくお願いします」

 姉ちゃんは頭を下げた。

「ええっ⁉ 何故⁉」

「翔! 幸せに暮らすのよ!」

「だあー! 姉ちゃん、あのな‼」

「じゃあ、帰るわ」

 姉ちゃんは、二人を連れ帰ろうとすると、

「ちょっと、翔を連れ戻すんでしょ? 薫ちゃんは帰っても、私は翔を連れ戻すまで帰らない‼」

 そう言ったブサイクの目には、涙が浮かんでいる。

「ブサイク……なんで?」

「翔。皆、心配しているの。これを見て」

「これは……」

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