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備前宰相の猫  作者: 山田忍
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猫とサプライズ

「猫丸! 宴じゃ!」

「う、上様たち……なんですか、これ?」

 いきなり上様たちが出て来て驚いていると、

「猫よ! 今日は何の日か知っているか?」

「えっと……なんでしたっけ……?」

 覚えていない。なんだっけ?

「覚えていないのか?」

「なにをだよ? 八郎?」

「今日でちょうど、私に会って一年たったのだ」

「えっ⁉」

「一年の記念を祝い、私が父上に呼びかけ、有志達により宴を開催したのだ」

「そうじゃ、八郎が猫の国では『さぷらいず』なる事をして皆を喜ばせておると聞いた。そこで余もさぷらいずを実行したのじゃ!」

「そ、そうだったんですか……」

 なんか嬉しい……。うん……嬉しい……。

 目が熱くなってきた。

「おいおい、この程度の事で泣くなよ」

「主役が泣くなよ」

「みんな……」

「さあ、宴じゃ! 猫の祝いじゃ!」

 こうして宴が始まった。

「猫! 飲め!」

「はい!」

「おお! いい飲みっぷりだ! どんどん飲むぞ!」

「はい!」

「ふにゃあ!」

 エリンギも酒を飲んで上機嫌になり、お決まりの羽の付いた扇子を持ってダンスをしている。

「可愛い!」

「可愛い踊りをするのう」

 エリンギが女の子たちの気を引いていると、

「馬鹿猫! 邪魔だ! えりんぎちゃんの踊りが見えない!」

「いで!」

 石治部さんに突き飛ばされた。

「いてて……オレのお祝いなのに、なんで?」

 あっちはあっちで、幸せそうにしていると、

「猫の踊りか。余も負けん! かつて上様に見せたとっておきの舞を披露してやろう‼」

 そういうと上様は裸になり、盆を持って裸踊りをした。

「あ、それ、ほれ!」

 上様が上手に踊っていると、

「余と踊りたい者はおらぬか?」

「じゃあ、俺が!」

「俺も‼」

 虎之助さんと左衛門さんも脱いで上様と一緒に踊り出した。

「ほい、ほい、っときた!」

「おい! 佐吉ぐらい踊らないか?」

「えりんぎちゃん……」

 石治部さんは女の子たちと一緒にエリンギのダンスを見るのに熱中している。

「無視かよ」

 確かにいろんな人がいて楽しいけど……。

「……」

「如月、すごい勢いで飲んでいるな」

「当然だよ。酔いつぶれて、弥九郎様の胸の中で寝ようと考えているのに……弥九郎様、どこ?」

 酔いつぶれようとしているが、顔色を変えず、普段通りの如月に絡まれていると、刑部さんが、

「ああ、南蛮の菓子と酒を持ってくると言っていたが、本来、前日に来るはずの物だが、遅れて当日になるとの事で、今、菓子と酒を持ってくるため、高山殿と共に港に向かったとの事ぞえ」

「菓子や酒より弥九郎様!」

「あ、だから、王の兄ちゃんもいないのか」

「あの馬鹿はいらんが、酒さえ無事にあればいいが……」

「猫丸、南蛮の菓子と酒は後の楽しみだ。それより、今はこの場を楽しもう」

「そうだな。後から来るんだし」

「「「ほれ、ほれ!」」」

 上様たちは裸踊りの真っ最中だが……。

「上様!」

「何じゃ?」

「オレもいいっすかぁ⁉」

「構わんぞ! 猫も踊るのじゃ!」

 エリンギばっかり踊って、オレも踊るぞ!

「はい!」

 オレも脱いで裸踊りに参加した。

「「「「あ、それ、それぇ!」」」」

 それから少しして、

「……」

 如月がじっとオレたちを見つめているが、

「如月……まさか、裸踊り——」

「弥九郎様がいるのなら、ストリップしてあげる」

「すとりっぷ?」

「着物を一枚ずつ脱ぐ踊りよ」

「何ぃ⁉ だが……」

「虎之助さんは見たいけど、弥九郎さんが……」

「如月の裸……くっ!」

「余も見たいが、それより裸踊りじゃ!」

 上様は裸踊りを続けた。その少し後、

「上様、よろしいでしょうか?」

「おおっ! 右近か。入れ!」

「はっ」

 戸を開けて、王の兄ちゃんが入って来た。

「……」

「何じゃ? 右近、そちも裸踊りをせぬか」

「王の兄ちゃん、どしたん?」

 オレたちが王の兄ちゃんの前に来ると、王の兄ちゃんは青ざめて、

「⁉ ね、猫殿! すぐに服を……服を着てください!」

「えっ⁉ どうしたの?」

「う、上様も! 急いでください‼」

「何じゃ、せっかく裸踊りを楽しんでいたのに」

「加藤殿! 福島殿も急いでください‼」

「あぁん? 何だよ?」

 オレたちがいぶかしんでいると、奥から声が聞こえた。

「まだや! 右近さんが——」

「どうでもいいわよ!」

 弥九郎さんの声と誰か女の子の声が口論になっている。

「どうでもって、ちょっと——」

「ちょっとじゃないわよ!」

 この女の子の声……どこかで……。

「とにかく、まだ——」

「どいて!」

 声の主の女の子が御対面所に入って来た。

 そして、その声の主は……。

「姉ちゃん?」

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