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備前宰相の猫  作者: 山田忍
121/153

猫と豪遊

「猫さん!」

 八郎の前には、弥九郎さんが座っている。

「弥九郎さん⁉ 何の用ですか⁉」

「小西殿が来ていて、ある事に誘われているのだが……」

「なに?」「ふにゃ?」

「猫さん‼ 船に乗りません?」

「船?」

「せや、儂と一緒に海に出ませんか?」

「船? 海? なにするん?」

「船に乗って、楽しく遊んで、美味いもん食うて、豪遊や! どや⁉」

「ふにゃあああああああ!」

 エリンギが弥九郎さんの背中に擦り寄った。

「猫さんの猫は行く気やな? 坊ちゃま、どうします?」

「私は行きたいが……猫丸はどうする?」

「オレも行きたいけど……ん?」

 エリンギがオレの足をつついて小声で、

「バカ猫、豪遊と言えば、女はどうなんだ?」

「エリンギ、あのな」

「猫さん。これは儂らだけの宴や。あの阿呆にも内緒の事や」

「じゃあ、女の子は……」

「おりまへん!」

「……」

 出ました。エリンギのわかりやすい落ち込み方が。

「とにかく、これは儂らだけの事や。他の人には黙っとくんや」

「えー」

「出航は明後日や、それまでに準備しとくんや」

「わかった」

「おー!」

 弥九郎さんが去って行き、オレらだけになると、

「どうする?」

「弥九郎さんは黙っとけ、って言ってたけど……」

「こんな楽しい事を内密にするのは、どうかと思うが……」

「うーい!」

 奇声が聞こえたので見ると、エリンギが酒を一気飲みして怒っている。

「ちくしょー! 女がいない豪遊なぞ楽しくない‼ 女! 女! 俺以外、全員女のハーレムで豪遊したいのに!」

「エリンギ……」

「猫丸、はあれむとは何だ?」

「ハーレムってのは、エリンギや上様が好きな事だよ」

「そうか。父上が、ならばわかった」

「上様で、か」

「とにかく、楽しい事を隠すのはいけない事だ。私は今から出かけて来る」

「あっ、八郎!」

 八郎は急いで出かけてしまった。オレとエリンギだけになると、

「うーん。オレも言おっかな?」

「んぐんぐ……」

 オレも酒を飲み続けているエリンギを置いて、あの子らに言う事にした。

 その道中、心の中で何かしこりみたいなものがある事を考えながら、目的の場所まで行き、会う事に成功した。

 明後日、

 雲一つない空は、船に乗るのは最高の日だ。

「ええ天気やな。猫さん、坊ちゃま、乗りましたか?」

「ああ」

「乗ったぞ!」

「ふにゃ~ああ」

「では、出航や」

 船は動き、大坂の町が小さくなっていくのを見届けながら、船の中を見ると、高い板に覆われており、板には穴が開いているので、弥九郎さんに聞く。

「弥九郎さん。この船は何ですか? 後、あの穴も」

安宅船(あたけぶね)や。安宅船は帆柱とかはなく、人が漕いで動かすんや」

「漕いで動かすのか。すげー体力使いそうだな」

「次に、この穴は狭間っちゅうて、あそこから、鉄砲や弓矢で攻撃するんや」

「豪遊って言うより戦いですね」

「そうか?」

「船の事は分かったんで、弥九郎さん。食事とかは、もう腹減ったんですけど」

 オレの腹の虫が鳴いている。

「猫丸、朝食べたばかりだろ、もう食べるのか?」

「まあ、もう少ししてからや」

「せめて、何が出るのかは聞かせてくれるかのう?」

「瀬戸の海で取れた新鮮な……ん?」

 弥九郎さんが振り返ると、三姉妹が船に乗っていた。

「これが船……新鮮なお魚……楽しみ!」

「海か……姉上! 泳ぎましょう!」

「そうじゃな!」

 三姉妹は楽しそうにしている。

「ふにゃあああああ!」

 エリンギも上機嫌になった。

「……で、何で姫君達がおるんや?」

「あっ⁉ オレが誘いました!」

「内緒や、黙っとくんや、って()うたやろ!」

「いやー。楽しい事を隠すのは、どうかと……虎之助さんとか呼んでいませんし」

 オレたちのやり取りを聞いた八郎は顔を赤らめて、

「猫丸、あの者達を呼んだのか⁉ 実は、私は……」

「猫様! 船は初めてでする‼」

「お豪ちゃん!」

「ふにゃああああああああああ‼」

 エリンギが歓喜のあまり飛び上がり、弥九郎さんは、

「な、何でやあああぁぁぁ⁉」

 なぜか絶叫した。

「小西殿、私が呼んだのだ。楽しい事は皆で楽しまないと」

「……引き返すんや」

「「えっ⁉」」

「引き返すんや‼ ()よ‼ 戻るんや‼」

 船は大坂の方に向いて戻っている。

「姫君達! 護衛を付けます! 早く大坂城に——」

「必要ない。妾らには護衛がいる」

「えっ⁉」

「弥九郎様ぁー‼」

 弥九郎さんに飛びついて来たのは……。

「あなたの性奴隷‼ 如月が参上したからには、もう問題ないですよ‼」

 アイドルっぽくポーズを決め、なぜか旧スク水を着た如月がやって来た。

「何が性奴隷や‼ 何が問題ないんや⁉ それに何や、この着物は⁉」

「猫ちゃんの国では、これを着た娘を見ると興奮する者がいるのよ! これで弥九郎様の日照りは解決したわ‼」

「何が日照りや‼ 阿呆‼」

 日照りって何だろう、って思っていると八郎が、

「猫丸、あの着物を着た娘を見て興奮する者がいるのか⁉」

「それは一部の人だけだ‼ 全員がそうじゃない‼」

 三姉妹たちは旧スク水姿の如月を見て、

「ふむ……来てみたいものだな」

「何だか……恥ずかしい……」

「動きやすそうだな」

「いやいや……」

「それにしても……」

 今度は弥九郎さんを見ながら顔を赤らめて、

「これこれ、この様な事を……」

「「ひそひそ、ひそひそ」」

 内緒話をし始めた。内容は何となくわかるけど、八郎とお豪ちゃんが、

「猫様、あの三姉妹はどの様なお話をしているのです?」

「三人とも、小西殿を見て赤らめているが」

「いや……それは……わからない」

「そうか。猫丸は分からないのか」

「では、後で聞いてみます!」

「ダメ‼ 絶対にダメ‼」

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