猫と友人
翌日、
「おお、来たか。猫」
「こうして、大坂城で会うのは初めてですね」
「今日は友達が来ているぞ」
大坂城で会う三姉妹は美しい着物を着て、姫君である事がわかる。
「そっかあ……友達もか」
大坂城奥御殿の部屋に来ると、
「ここは妾の部屋じゃ。人前で言わぬのなら、妾らの名を教えようと思って」
「ど、どしたん⁉ 急に気が変わったの⁉」
「友が言ったのじゃ、猫の国では名を名乗っても、結婚しなくてもいいと、聞いたのでな」
「えっ⁉」
もしかして……。
長女が改まって、
「妾は茶々じゃ」
次女はしとやかに、
「私は初と言います」
三女は元気に、
「わたくしは於江と言う」
「おごう⁉ じゃあ、江ちゃんでいい?」
「構わんぞ」
「じゃあ改めて、よろしくな!」
名前を教えてもらった後、部屋を出た。
「さて、猫。行くかのう」
「行くって、どこに?」
「友達に会いにです。さあ、行きましょう」
オレはある部屋に連れられると、
「あっ⁉」
「あら? 猫ちゃん、キクラゲ、どうしたの?」
見慣れた顔と声、
「ふぎゃあ‼」
「如月⁉ どうしてここに⁉」
片足を立てて座っている如月がオレを見た。
「ああ、この三姉妹とは友人でね。時々、ここに来て話し相手になっているのさ」
「なるほど、友人って如月か……」
「知り合いか? お主ら?」
「まあな」「そうだよ」
「そうか。ならば話は早いな」
「それに、そろそろだ」
「楽しみ」
「?」
オレたちのいる部屋に、女の子が沢山入って来た。
「ふにゃああああああ‼」
「喜ぶな‼ エリンギ!」
部屋の中は、あっという間に、オレ以外が女の子だらけになり、困ってしまった。
「これから、どうするの?」
「今から、楽しみな事が始まるのじゃ」
「何だか興奮してきました」
「た、楽しみなのだ」
「さあ、始まるわよ」
如月が立ち上がり、紙を持って通る声で言った。それを聞いた女の子たちも目がキラキラしている。
「今回、ボクが抱かれたのは……大友宗麟なる者だ」
「「「きゃああ‼」」」
「えっ⁉ えっ⁉ なにこれ⁉」
すると、お茶々さんが小声で、
「如月の伽講座じゃ。如月が抱かれた男について聞ける貴重な機会なので、娘たちは如月の話を聞くのじゃ」
お初ちゃんも小声で、
「如月の話を聞き、夜に活かす者もいれば、興味だけで如月の話を聞く者もいます」
江ちゃんも小声で、
「娘たちは、こっそり抜け出さない者が大半なので、外出もできず、遊戯も大体、同じ物になるので、如月の話は刺激的で、皆、聞きたがるのだ」
「そっか……」
みんな、外出とかしていないんだな。って事はお豪ちゃんもか、お豪ちゃんも大坂城でしか会っていないからな。
「如月! どんな風にするの⁉」
「それは——」
聞けない、聞きたくない。すごく刺激的だ。なんだか女子高に来ている男子って感じだ。
「如月、それって——」
帰ろう。その前に——
「…………」
エリンギ、当然だな。
「オレ、恥ずかしいから出るよ」
「そうか。ウブじゃな。いいだろう。聞いていない者もおる」
オレが部屋の外に出ると、
「ん?」
見た事ある煌びやかな着物の人物が急いで逃げているのが見えた。
「……上様」
それから、奥御殿の外に出ると、
「あっ!」
「猫様‼」
お豪ちゃんが一人でお花を見ていたが、オレに近づいてきて、
「猫様、何をしていたのでする? 女房衆も側室も皆、一か所に集まっているみたいですが、お豪は、その中には参加してはいけないと、ととさま、かかさまに言われているのです。猫様、あの中では皆、何をしているのです?」
「そ、それは、内緒‼ よくない事だよ!」
「よくない事⁉ それは一大事でする‼ ととさまに——」
「いい‼ 言わなくてもいいけど、お豪ちゃんが聞くと気絶するような事だよ」
「気絶⁉ それは危ないでする!ならば聞きません!」
ほっ……。よかった……。
「では猫様。お豪と何かして遊びません?」
「ああ、いいよ」
お豪ちゃんと遊んでいると、女の子たちと見慣れた猫が出て来た。
「ふにゃ~」
「エリンギ!」「えり!」
「ふにゃあ!」
エリンギはお豪ちゃんの胸に飛び込んできて、お豪ちゃんはエリンギを抱っこした。
「えりも来ていたのですね」
「ふにゃ!」
「では、えりも猫様と一緒に遊びましょう!」
「ああ」「ふにゃ!」
そして宇喜多屋敷に帰る途中、
「お前、お豪ちゃんと遊んでいたのか⁉」
エリンギの猫パンチ連打をくらった。
「やめんか‼ お前が如月の話を聞くからだろ!」
スケベオヤジ化したエリンギは、
「如月の話は良い話だ。興奮するぞ!」
「お前な!」
宇喜多屋敷に着いたら、
「猫丸!」
八郎が早歩きでオレの前に来た。
「八郎⁉ どしたん⁉」
「猫丸、実は……」