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備前宰相の猫  作者: 山田忍
118/153

猫と次女

「猫、何をします?」

「好きな遊びでいいよ」

「では、食べに行きましょう」

「食べ歩き? いいよ! オレも食べるの好きだし!」

「まあ! 食べましょう!」

「相変わらず、食べるのが好きじゃな」

「腹減ったし、行こう!」

 四人と一匹で食べ歩きに出かけた。

 大坂の町を歩くといい匂いがして、その方向を見ると、

「あれはなに?」

「あれは、桂女が鮎を売っているんだよ」

 桂女が売っている鮎は、見事な焼きめが付いていて、周りにいい匂いを漂わせている。

 オレはガマンできなくなり、

「すみません! 鮎をよ——」

「ふにゃあ(俺もだ)」

「五つください」

「はい」

 三姉妹に鮎を渡すと、

「「「……」」」

「どしたん?」

「……これは、どの様に食べるのじゃ?」

「えっ⁉」

「これは初めてだから、その……教えて下さりますか?」

 食べた事ないのか、見るからにお嬢様だからか、不思議だな。

「これは直に……かぶりついて食べるんだ」

「ええっ⁉」

「なるほど、そうか」

 三女が一番にかぶりついた。

「美味しい! 姉上たちも、この鮎は美味しいぞ!」

「そうか……では」

「ほ、本当……」

 二人も食べると、

「確かに魚の味が生きておる」

「鮎はこのように食べるのが美味しいのですね」

「ふにゃ!」

 鮎を食べ終わると、

「次は何処に行くのじゃ」

「えっと、次は——」

 このあたりは確か……?

「猫やないか‼ 饅頭食べていかん?」

「ぎゃあ! 饅頭売り‼」

 饅頭は美味いが、タダで食べさせてこき使う饅頭売りの店の近くだ。

「饅頭——」

「買います! 五つ買います!」

「まいど!」

「行くぞ!」

「行くぞとは、どこに⁉」

「あら?」

「わっ⁉」

 饅頭を五つ買い、タダ働きは阻止し、三姉妹を連れて離れる事に成功した。

「はい。饅頭」

「ああ、饅頭か。これも美味しそ——」

「?」

「これ——」

 三姉妹が饅頭を食べると、

「この饅頭、食べた事がある」

「えっ⁉ あるの⁉」

「友達が、美味しいお饅頭を買ってきてくれるの」

「見た目も味も、これだ」

「そっかぁ……でも、この饅頭売り、タダで食べさせて、その人をこき使う人だから気を付け——」

「饅頭ください! 金は持っていない」

「ええ度胸やな。タダで食うとは」

「当然、働きます」

「そのためのタダ食いだ」

「——って、ええっ⁉」

 三姉妹はいつの間にか、タダ食いをして働こうとしている。

「ちょっとぉ! 働く気なの⁉」

「勿論じゃ。こんな機会、めったにないのだぞ」

「何だか楽しそう」

「全て売り切ってみせるぞ。猫も手伝え」

「お、オレも⁉」

「この子らの知人なら、手伝わんとあかんやろ」

「…………はい」

 こうして全員で手伝う事になった。

「……饅頭はいかがですかぁ」

「ふにゃあ!」

 エリンギは得意のダンスを踊っている。

「饅頭はどうじゃ!」

「とっても安くて美味しいですよ」

「一個三文! どうだ!」

 三姉妹たちは大きな声で呼び込みをしている。それを見た男たちが、

「見ろ! 可愛い娘たちが売っているぞ‼」

「安いな。買おう!」

「買います! 買います!」

「へい! 毎度!」

 店は大繁盛して、物の数分で売り切れた。

 饅頭が売り切れた事で饅頭売りは上機嫌になり、

「ええ子やな。どや? ここで働かん?」

「いや、妾らは、しなくてはいけない事がある」

「楽しかったわ」

「また、してみたいものだ」

「ありがたいわ!」

 報酬は饅頭五個くれた。饅頭くれるからいいけど……。

 饅頭売りに別れを告げて、饅頭を食べながら話をする。

「次はどうします?」

「次は何をしようかのう」

「オレは何でもいいけど」

「……」

「どうした?」

 不機嫌そうな三女が、

「姉上たち、そろそろ、わたくしも猫と遊びたいのです」

「そうか。ならば、遊ぶといいだろう」

「そうね。そろそろ遊んでもいいわね」

「本当ですか!」

「まあ、いいけど」

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