猫の一服
さてと、屋根の上、一匹で吸う煙草は美味い!
俺が煙草を吸っていると、
「キクラゲ、吸ってるの?」
「如月⁉」
いきなり如月が現れて、俺の横に座った。
「ボクにも頂戴。違う時代のタバコを吸いたいの」
「……ほらよ」
如月に煙草を一本投げると、さりげなく、
「ありがと。ライターも貸して」
「……ちっ」
ライターも貸すと、如月は煙草を吸いながら、俺に話しかけてくる。
「ここでいつも吸っているんでしょ。知ってるよ。気が向いたら、一人で夜の町をうろついているからね」
「——何の用だ。如月」
「弥九郎様の屋敷に夜這いをしに行ったんだけど、追い出されちゃってね。それで散歩をしていたら、キクラゲが外でタバコを吸っているのを見かけたから来たの」
「そうか」
「あ~あ。退屈」
「これから先、お前は何をする気だ?」
如月は煙草を捨てて、
「……別に、ボクはボクの好きに生きる。……それだけ」
「それだけで済めば、いいのだがな」
「さあ? わからないわよ」
如月は屋根から塀に飛び移り、
「これからどうなっても、ボクは今を楽しませてもらうよ」
今度は遠くに行き、
「じゃあね。キクラゲはキクラゲで好きにしたら」
音も姿もなくなった。
「ふん」
——煙草は終わりか……不愉快だな。もう一本吸うぞ!