-34- 私からのクリスマスプレゼント
大きな爆発音が響き、辺りは眩しい光りに照らされた。
気が付くと、元の世界……自分たちが花火を見ていた場所だった。先ほどの爆発音と光りの正体は、花火だったのである。
周りの人たちは打ち上がる花火に意識が向いており、力無く倒伏している稀衣を抱きかかえている爽太に見向きもしなかった。
マギナの異空間にどれだけ居たか解らないが、まだ花火の打ち上げが終わっていないところを見ると、それほど長く居た訳ではなかった。
爽太は自分の腕の中で眠る稀衣を優しく見つめた。ここで改めて気付いた。
――どうして自分は生きているのだろうか?
――なぜ稀衣が目覚めていないのだろうか?
――マギナが甦させてくれたはずではないのか?
花火の光彩で照らし出された彼女の寝顔は、二度と目覚めないような安らかな表情だった。
心に悲哀なる感情が再び覆う。マギナの魔法が失敗して、稀衣の命が卒したままのではないかと思いなしたが、
「……うん」
微かな吐息が漏れ聞こえ、稀衣の目蓋がそっと開いた。
「……あ、あれ……どうしたのかな、私……。急に意識が、飛んだというか……あれ、藤井くん?」
寝起きでぼんやりしていて、言葉が滑らかでなかった。
稀衣が目覚めたお陰で、マギナに殺されたのも、マギナによって蘇生してくれたのも、夢ではなかったと強く実感した。
「良かった……良かった……」
生きている姿に――
心を高鳴らせる愛しい声に――
稀衣が生きていることの喜びが涙となりとめどなく溢れては、彼女の頬に落ちていく。
「え? なに? どうしたの藤井くん? どうして泣いているの?」
意識がまだ明瞭していない状態である稀衣は、現状に戸惑っていた。そもそも暴走して失神していたのだから、先ほどまでの波瀾万丈な出来事を把握している訳がない。
これまでの事情を説明しなければいけなかったが、言葉が思いつかない。ただ、稀衣が生存してくれていることで頭が一杯になる。
「尾林さんが……尾林さんが、生きているから……」
言葉と共に涙が溢れ続け、爽太は稀衣を強く抱きしめた。
稀衣を救うことが出来れば自分は死んでもいいと覚悟していたはずなのに、こうして生きて側に居られることに、言葉では言い尽くせないほどの窮まりない喜びを感じた。
白い雪が舞い振り、鮮麗な火の花が空に咲き乱れている。幻想的な光景はまるで奇跡を祝福するように彩っているようだった。
その様子を少し離れた場所で、マギナは二人を優しく見守っていた。爽太たちボロボロだった服はマギナの魔法で修復しておいた。
「今日はクリスマスだったわね。私からのクリスマスプレゼントにしておくわ」




