-22- どういう心境の変化?
爽太は胸に引っかかるものを感じつつ碧海高校へと向かっていた。碧海高校の生徒たちの姿が見え始めると、
「あ、藤井くん……えっと……」
道の反対側から向かい合う形で、稀衣と偶然出逢った。
昨日、“私がいつ死ぬか教えて欲しい”という荒唐無稽なお願いをして断れたので、何やら気まずい雰囲気が稀衣から漂っていた。
「そ、それじゃーね!」と、稀衣は耐え切れず足早に立ち去ろうとしたが、
「待って。その、尾林さんだっけ?」
爽太の呼びかけに、稀衣はゆっくりと振り返った。
「え、はい……」
「昨日、言っていたやつ。予見してあげてもいいよ」
「予見……してあげてもいいって……それって?」
爽太も昨日冷たく断った手前、ばつが悪そうにして稀衣から視線を外しつつ、
「その……尾林さんが言っていた……自分がいつ死ぬかってやつ、それを予見してあげるよ」
稀衣は「えっ」と口をポカーンと開き――
「ほ、本当ですか?」
改めて確認をした。
「だけど、必ず見えるかどうか解らないから、そのつもりで構えて欲しい」
「うん、解った。そ、それで、いつ見てくれるの?」
「えーと。それじゃ放課後にでもコンピュータ室に来てくれないかな。そこで詳しい話しをするよ」
「放課後だね! うん!解った!」
稀衣は屈託の無い笑顔で返事した。それが妙に爽太の心に伝う響く。
「あ、まれーい! おはよー!」
背後から稀衣の友達らしきクラスメートから挨拶されると、お互いビクっと震わせる。
「そ、それじゃ、放課後にコンピュータ室でね」
と言って、稀衣は友達の元へと駆けていった。
一人残された爽太……の隣にいた魔女がほくそ笑んでいた。
『どうしたの? どういう心境の変化?』
他者(稀衣)には視認できないようにしている魔女が話しかけてくる。
「……人助けも、たまには良いかなと思ってね」
過去の経験から未来が見えて忠告したとしても、未来を変えることが出来ないと、ずっと諦めていた。その所為で心を閉ざしてしまい、他人の未来を予見しないようにと極力人と関わりたくないようにしていた。
だが、魔女と出会い、魔女のお陰で未来を変えられる経験が出来た。それに少なからず自分を求めてくれているのだから、無下に拒む理由は薄れていた。
爽太は少しだけ、自分の能力……先見の明に自信を取り戻したようだった。
「……あれ? なんか胸が……」
そして、胸に引っかかっていたものが消えていた。




