-20- 爽太のえっち!
爽太はゆっくりとまぶたを開いた。
「……ゆ、夢?」
長い夢を見ていたようだった。謎の女性……魔女の生い立ち(過去)を。
夢の内容が真実なのかどうか考えようとしたが、如何せん寝起き。頭がハッキリとしない。それに肌寒かった。
布団がはだけており、朝の冷たい空気をダイレクトに受けていたのだ。寒い訳だ。渋々とかけ直そうとした時、
――フニっ♪
と手に柔らかい感触が伝わった。
何気なしに横を向くと、眼前にグラマラスな谷間が広がっていたのであった。
「いッ!」
魔女が自分の隣……同じ布団の中にいるではないか。
胸元が少々露出しているピンクのネグリジェを身にまとい、透き通る柔肌がチラつく。
目覚め一番で刺激的な光景に爽太は、眠気も先ほど見た“夢の内容”も一気に吹っ飛んでしまった。
「んっ…むにゃむにゃ……あっ、おはよ~」
魔女が目覚めると、眠気混じりの気怠く挨拶をした。
頬を赤らめて硬直している爽太に気付くと、魔女は悪戯な笑みを浮かべて、
「爽太のえっち!」
と優しく甘く呟いた。
「いやいやいやいいやいやいや!? そもそもなんで俺の布団に!? どうして!?」
絶世の美人があられもない姿で、一緒の布団で寝ているのだ。健全の男子だったならば興奮しないと失礼だ。
爽太の動揺を無視するように魔女は「はふ~」と欠伸をする。
「もー、朝から大きな声を出さないの。それに些細なことで驚かないの」
「些細ではないです。なんでここで寝ているんですか? 魔女さんの為に客室を用意してあげたでしょうに」
「私だってひと肌恋しい時があるのよ」
「じょ、冗談でもそんなことは言わないでくださいよ!」
「ふふ。それで、どうだった?」
「何がですか?」
「私のお胸をじっくり見たでしょう?」
「じっくり見てませんから。ちょっとだけですよ!」
「はいはい。からかいは、ここまでとして。見たでしょう、私の過去を。特別に見せてあげたんだから」
「……あれは……あの夢の内容は、本当のことなんですか?」
魔女の色気の衝撃で詳細は喪失していたが、“魔女の正体と目的”についてはハッキリと覚えていた。
どこからどう見ても人間。十代の見た目。とても何百年も生きているとは信じられない。それや魔女という点で既に普通では無いとは思うが、人間ではない存在。
「そうよ。私の正体……過去を知っているのは少数なんだからね」
「それなのに、なんで教えて……くれた、というより見せてくれたんですか? 機械仕掛けの魔女さん」
「別に、そんな長たらしい名前で呼ばなくても良いわよ。今まで通り魔女さんでも良いわよ」
「でも、名前を付けて貰って嬉しかったんでしょう。だったら、名前で呼んで方が良いでしょう?」
「名前と言ってもあだ名だしね……。まあ、フルネームじゃなくて、マギナって呼んでくれても良いわよ」
「マギナ?」
「マギ・エクス・マキナを略してマギナって、呼ばれていたりするのよ。昔馴染みや知り合いとかにはね。ラテン語でマギは魔法使い、マキナは機械という意味があるのよ。私の存在にピッタリの名前で、洒落ているとかなんとか。だって」
「それじゃ……マギナ」
爽太に自分の名前を言われて、マギナはちょっとだけ心がこそばゆく感じた。普通の人間にその名を呼ばれるのは久しぶりだというのもあるが。
「なーに、かな?」
「さっきの話しの続きだけど、なんで教えてくれたの?」
「ああ。しばらく、ご厄介になるつもりだから、得体も知れない人と一緒に暮らすのは気味が悪いでしょう。その代償みたいなものかな」
「代償……うん? しばらくって、どういう……」
マギナは爽太の話しているにも関わらず起き上がり、顔を洗いにそそくさと部屋から出て行ってしまった。
「あ、マギナ……」
魔女との同居生活が始まることに、冬の寒さとは別の寒さが身体に奔ったのであった。




