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-16- 世界は終わる――これは運命なのだ


 お師匠と一緒に過ごして数年経ち、私が十二歳の時だった。

 奴隷のような助手から、補佐としての助手な役目を与えられており、魔法やこの世界の理についても、自分自身できちんと把握できるようになっていた。そして、世界が終焉してしまうと知った頃だった。


 世界は終わる――これは運命なのだ。ならば、その運命を変えるとしたら――


 特に好奇心旺盛だった頃であり、世界の終焉の運命を何とかしたいと思っていた。正義心とか救世主になりたいという気持ちでは無い。ただ、好奇心が勝っていた。


「お師匠様は世界の終わり……終焉について、どう思いますか?」


「何事も始まりがあれば終わりがある。アルファでありオメガとも言うだろう。致し方ないことだよ。そして私が、魔法で不老不死に近い存在にならなかった理由でもある。どんな不可能なことでも可能にしてしまえるほどの力を身につけたとしても、世界の終わりをどう足掻いても不可能なのだ、どんなに長生きして世界の終焉まで生きたとしても、そこには“無”しかないのだから」


「でも、どうにか方法はあるのでは無いのですか?」


「私たちみたいな超越者が干渉すれば、終焉の予定を幾分かは延ばしたりなどの影響を与えられるかも知れない。だが、それだけだ。魔女とは言え、出来ることは万物の精神に記録されている事象だけに過ぎない。いいかい、私たちは万物の精神の手の平で踊るだけなんだよ」


 恐らく他の魔女たちも、私のように全てを知って、世界の終焉について討議したのだろう。しかし、全知全能に等しい知能を持っていたとしても有効的な方法は見いだせていない。


「そういえば……不可能の事象と言えば、死関連の他に時間移動がありますよね」


「なぜ不可能なのかは解るかい?」


「簡単に言ってしまえば、この世界……万物の精神には時間というものが存在しないからです。時間というものは人間たちが勝手に作り出した概念。“時間”が存在しないから、時間を戻す、時間を早めるというものが出来ない……無理な訳です」


 お師匠は黙って頷く。


「その通り。だが、この世界は万物の精神にて構成されている。では、その万物の精神の記憶を巡ることが出来れば、いわゆる時間移動のようなことができる……と考えた魔女が居た」


「万物の精神の記憶を巡る……あっ!」


「そう。万物の精神は情報……記録や記憶の集合体と考えた場合、記憶には過去や未来が記されている。ならば、その記憶に介入出来れば、過去の記憶や未来の記憶に触れられる。言うなれば、時間移動もどきみたいなものだね。けれど、この方法には条件がある。それは精神体でしか移動は出来ない。意味は解るね?」


「万物の精神に触れられるのは、精神体のみ。つまり魂。自分の身体(実体)などの物質は持っていくのは出来ないからです。でも、実体を分解なりして精神体に転換して再構成をすれば……」


「おまえが考えつくことを、試さなかった者がいると思うかい?」


 好奇心旺盛な塊の魔女たちである。実際に実験体や時には、自分の身で試した者も多かったのだろう。


「それで結果は?」


「結果は二つある。一つは、時間移動が出来る範囲は、自分の身体が存在した時までしか遡れない。理由は簡単。万物の精神に繋がっている部分でしか介入できないからだ。他に注意するとしたら、他人の精神に移り込むことも出来ない」


「とすると、もしここで私が過去に時間移動をしたとしたら、自分が存在している時……もっとも昔でも赤ちゃんの時までしか戻れないということですか?」


「時間移動という言葉的に合っていないから、おいおい言い換えた方が良いね。それは後にしてと……そう。己の精神体の媒介となるものが、そこに無ければ繋がることは出来ない。自明の理だね。しかし、戻ったとしても、その時の精神と衝突してしまって記憶が欠如したりする。まあ、これについては回避策は在ると思うが。現在まで、百の知識や記憶全てを過去や未来に持っていけた試しは無いね」


「……もう一つの結果は?」


「一つ目の結果を知ったのならば、ある程度予測出来ていると思うが……。同じ存在は、同一世界に存在できない。もし、存在してしまったら、反発してしまい消滅してしまうんだよ」


 お師匠はおもむろに右手を広げると、パッと光りが閃くと、そこにはただの石が現れた。石を錬金術によって作り出したのである。


 石ぐらい外で拾ってくれば良いものだが、お師匠ぐらいの魔女になると石を創出させる方が簡単なのだ。


「例えばこれを過去に戻す……この石が存在する時間帯に時間移動させたとしたら、どうなるか。移す流れは還りて……(ファイラフローゲェーファティルバーカ……)」


 今度はちゃんと呪文を唱えると、お師匠の掌に幾重ものの幾何学の光の魔法陣が浮かび上がると、そこに在った石が忽然と消えたのだった。


 暫くしても何も起きないので、「……?」と首を傾げてしまう。


「ということだよ」


 その言葉に察した。お師匠は実践してみたのだ。同じ存在の石を過去に移動させたが、過去に移動させたはずの石は何処にも出現しなかった。これは……。


「……消滅してしまったのですね」


「その通り。同じ物質となるモノは存在出来ない。この世の絶対の原則でもあり、理でもある」


 先ほどの精神を時間移動させた場合でも、過去と現在の精神が衝突し、消失してしまう例がある。


 今風に簡単に説明するとしたら、この理はPCパソコンのシステムに似ている。

 覚えはないだろうか。デスクトップやフォルダ内に同じファイル名を付けようとした時や、同名のファイルを移動させた時に、警告が成されるのを。


 つまり同じ時間軸に同物質となるものは存在できない。存在させようとすると、そのモノは同質になろうとしてしまい、上書きされてしまう。または、先ほどの石のように消滅してしまう。


 なぜ、そのようなことになるのか?


「これは私の憶測ではあるが、これは矛盾パラドックスを起きないための制御が働いているのではないかとね」


矛盾パラドックスを?」


「もしも、だ。もし自分が生まれる前の時代に行き、自分のどちらかの親を殺してしまった場合……この先、生まれるはずの自分は生まれることは無い。しかし、親を殺してしまった自分は存在している。では、その時の自分は一体何者なのか。もし殺されたのであれば、自分という存在は存在していないのに……という矛盾が生まれる。しかし、この世界には矛盾は存在しない。故に、矛盾となる存在は抹消される仕組みがあるのだろう」


 いわゆる“親殺しのパラドックス”と呼ばれる論理である。


「でも、そうなった場合は、別の世界……並行世界パラレルワールドが誕生するとかでは無いのですか?」


「そう提唱した者も居たね。この世界……万物の精神は大きな木のようで、記憶が分かれる出来事が起きた場合、枝分かれのようになると。けれど、並行世界が有ると証明した者は居ない。つまりそれは、やはり矛盾が起きないように制御されていると考えた方が自然だろう」


 現時点での結論では、時間移動は限られた範囲でしか実施できない。けれど、可能性はゼロでは無いと論結していた。


 現に精神体は時間移動が出来るという実例があるし、問題である精神体の衝突も何とか出来そうだと漠然とした考えもあった。


 こうして私は、変えられない運命を変えるために、現時点で不可能だと考えられている“時間移動”について、主に研究することにしたのであった。


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