芥川
芥川
「おいらは小人族のエッジ
おいらの事をみな、ヤースリクトと呼ぶぜ。」
「でもおいらには家がない。だからおいら、いつも決まって友達の家で寝るんだ。いいだろ。」
「おいらはみな、生きることに一生けんめいな人が好きだ。」
「おいらの犬でも根なし草のおいらに、連いて来てくれるから好きだ。」
「おいらの持ち物は、砂金の入った袋と、芥川龍之介の小説と、グレン・グールドのCDと中島みゆきの『Maybe』の入ったシングルとピンク色の女性もののクシと、犬にやるおやつだけ。おいらはいつでもへんてこな袋にこれらの持ち物を詰めて、友達の家を転々としてるだけ。」
「おいらはなんてバカな小人なんだろう。」
「おいらにかかれば、右と左も同じ。おいらの言葉で、女も逃げる。」
「おいらはいつだって、人から除け者扱いのバカな小人。」
「おいらの母ちゃんは、狂って死んじまった。」
「おいらはおっぱいも吸えないで泣いてばかり。」
「おいらの父ちゃんは、おいらのこと大嫌い。」
「おいら、1人で生きてきたけど、いつもさみしくて、よく木の陰で泣いた。」
「おいら、全くもって、寅さんみたいな風来坊。」
「でもおいら、今度ばかりは頭に来た
。」
「政権交代の時期に、いつも顔を並べているのは政治家の倅ばかり。おいら、政治なんてヤダ。」
「おいら、蜘蛛の巣が大の苦手。だって大きな網がくっついて取るのに何時間もかかる。
「おいら、芋の煮っころがしが大好き。いつも家で母ちゃんが煮てくれた。おいら幸せ者だった。」
「おいら門をくぐる時は、いつでも一礼をしてから通る。だって大きくて立派な者には敬意を払うから。」
「おいらは白犬と黒犬が大好き。だっておいらの服も、白と黒しか持ってないから。友達みたいな気がする。」
「おいらの好みの女性は賢そうな人。だっておいらバカだから。」
「おいらの持ち物で昨日なくなったものがある。それは、おいらのピンク色のクシ。おいら、しょげかえって泣く泣く愛犬と一緒に探したけれど、どうしても見つからない。おいら、いつも物をなくしては、泣く泣くあきらめる。でもおいら、いつも代わりの物を拾ってきては、また袋に詰めて持って歩く。おいらのピンク色のクシ。どこへ行ったのか誰か知らない?おいらの周りの人はみんな決まって、そんなものどうでもいいと言う。でもおいらにとっては大切な宝物。」
「おいら仙人に憧れた。仙人は強そうで、懲りない性格をしているから。おいら雲に乗って空を飛んで空の上から嫌な奴におしっこしてやる。」
「おいら小人のエッジ。おいらの所へ来たければ、ミヒャエル何とかの『ネバーエンディングストーリー』って本を持って来て、おいらのこと考えながら、表紙のヘビの模様を触って、中を読んでみるといい。おいらはいつでも、そばにいるぜ。
平成十八年八月