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初め ②


 「あのね…」

一拍置く。

「…らんちゃん、他に好きな人がいるんだって。だから篠山君の気持ちには応えられないって…。」

申し訳無さそうに言う。そうか、他に好きな人がいるなら仕方ないな…。諦めるには早過ぎると思うが、そもそもこんな軽い気持ちで告白しようと思ったことが今になって恥ずかしくなってきた…。

「ごめんね」

白石さんが申し訳無さそうに謝る。

「え、なんで白石さんが謝るの?白石さんは伝えてくれただけじゃない」

白石さんが謝る理由なんて何一つない。

「うん、ごめんね?」

今度は少し困った顔をしながら、でも笑顔で謝ってきた。

「あ、また謝った」

少しおかしくなって笑いながら言った。

「……うん」

白石さんには申し訳ないことをしたなと思う。別に俺が頼んだわけじゃないが、それでも一端を担ってるわけだからな。今度購買のパンでも奢ろう。そうしよう。

「じゃ、帰るね」

白石さんはその場を去る。

「うん、ありがとね」

俺は礼を言い、白石さんを見送る。

なんというか、彼氏いない情報とプラスで好きな人がいるのかどうかとか調べとけばよかった…――。



「――ということがあったんだ」

「ふむ…、まぁ残念だったなっていうのと一つ気になることが」

思案しながら幼馴染みは疑問を投げかけた。

「なんで安達は自ら来なかったんだ?」

「え?」

「告白をされるんだ、相手だってそれ相応の態度というか、姿勢を見せるべきだと思うんだが、告白の返事を代弁させるなんておかしくないか?」

今まであまり見たことがない真面目なトーンで話す。


-


 「いや……単に何かしら来れない事情ができたんじゃないか?というかそんなこと気にしてなかったわ」

これは本当だった、というより考える余裕がなかった…というのが正解か。

「ふむ……、ま、考え過ぎか」

物思いにふけってるかと思えば、すぐにこの話は終わり終わりとばかりに泉は掌をひらひらさせた、と同時に2限目開始のチャイムが鳴った。



そんなことより…だ。

そう、もはやそんなこと扱いである。週末の失態をなかったことにできるほど俺のメンタルは強靭ではないが、それでもそれ以上に気になる存在がいた。

それが入室許可証を職員室に貰いに来ていたあの子。名前も知らなければ学年もクラスも知らない。あれだけのレベルの子なら噂にくらいはなってそうだが、残念ながら俺の耳には届いていない。届いてないだけで有名人かもしれないという可能性もある。俺が単に噂難聴なだけかもしれないしな。

どうせ休み時間は友人(泉)と雑談をするかふて寝するかケータイをいじるかくらいしかやることがない。

校内探索でもしてみるか…、ギャルゲ主人公の基本動作だしな。

そんなこんなで2限目も終わり、休み時間。

「よし、まずはどこから行くか…」

特に決めていないが、とりあえず各学年の廊下をぐるりとまわれば何かしらの発見があるかもしれない。なくて当たり前だと思えば多少気も楽だ。

まずは2年の教室まわりからだ。

隣のクラスの2年2組を覗き見るがそれらしい人物は発見できず。

次の2年3組を見るが可愛い子が何人かいるものの発見できず。

2年4組はなんか男同士で抱き合ってるのが見えて気分が悪くなったので次のクラスへ。

2年5組は入口付近にオタクっぽい3人組が深夜アニメについて語っている。ここに仲間がいたか! と思ったが、まわりの女子が若干引き気味でその3人組を見ているのが見えたので仲間に加わるのはやめておこう。

2年6組は…、特に特筆するようなものでもないな。

…ふむ、同じ学年ではないのかな? それとも休み時間と同時にすぐに教室からいなくなるタイプか? ありえない話ではないが、さて…。

他学年は正直ちょっと行きづらい。屋上も封鎖されてるが入れないわけではない。

行くだけ行ってみるか…?


-


 そういえば屋上に来るのは初めてだった。

普段誰も近寄らないせいか汚い。アニメや漫画で見るような屋上はそもそも開放されてるようなものが多いのでサボるにはちょうどよさそうだが、こんな汚さなら仮病で保健室にでも行ったほうが全然マシ…というかそっちのほうがいい。

「屋上に草生えてんじゃん…」

誰も使ってない学校の屋上。そこには人影はいな――

「…ん?」

いた。長い髪をなびかせながら屋上の手すりに手を置き、風景を眺めているような感じで女の子が立っていた。

ふと、こちらの気配に気づいたのかこちらへ目を配る。

「誰?」

女の子が首だけこちらに向けて聞く。

「あ…、えーと……あ」

俺がなんと答えるべきか迷ってるとき、その顔を見ると今朝職員室にいた女の子だった。

あ、あの時の! と口に出そうと思ったが相手はどう考えても俺を知ってるわけがないので出かかった言葉を飲んだ。

「……あ~、俺は篠山矢的。はは、えーっと、それじゃ…」

会えたものの、どうしようとか何も考えていなかった。話が続きそうもないと判断したのでここはさっさと教室に戻ろう。休憩時間ももうすぐ終わりだし。

「………」

彼女は無言だったが、なんとなく、なにか訴えかけようとしてるように見えた。

「えっと、な…なに?」

「……コレにするか」

ボソっと、彼女は何か口にした。

「え、ごめん、なん――どわぁあ」

そこへ突然屋上に突風が吹いた。目を開けるのもツライくらいにすごい風――

「白!!」

見えた! 白い……パンツ!!

突風で半分程度しか目をあけていられなかったが、ハッキリと見えた! 彼女のパンツが!

するとふわっと、風がやんだ。

「アンタに決めたよ!」

「え?」

突然さっきの大人しそうな雰囲気の子から一転して快活な一声が。

な、ナニをキメたというのだろうか。


-


 「ナニをしたいの?」

何!? 心を読まれたのか!? しかしこれは乗るしかない。

「それはともかく」

「ともかくらないでください」

仕切り直されたので思わず変な日本語を使ってしまった。

女の子は仕切りなおしすように咳払いをし

「野球に興味はないか?」

「……………………は?」

思わず黙りこくってしまい、果てに屁みたいな声を出してしまった。

「え…と、ちょっと何言ってるのかわかんないです」

「そ、そうか」

ちょっと残念そうな顔をした。野球部の勧誘? ということはマネージャーなのだろうか?

「あ、いや興味ないわけじゃないんですがちょっと急すぎて」

ちょっとフォローを入れてみる。実際興味ないわけじゃないが、運動部のノリはちょっと無理。

「ふむ……じゃあサッカーはどう? ワクワクする?」

え? 何なの? 野球は? 俺のフォローは無に帰したの? とりあえず否定の意を表す。

「いや…」

「ん、そうか…」

また残念そうな顔をする。そもそもワクワクする? って質問もなんかおかしくないか。

「さっきの野球の話は? サッカーと一緒に話題に出すということは兼任とか? それとももしかして野球サッカーなる新スポーツの開発とかですか?」

思わず質問ラッシュをしてしまった。しかしそれほどに言葉に繋がりがない。何がしたいのか。

「天使部だよ」

――と、謎の部活名がこの学校に誕生していた。

「それはともかく」

「ともかくらないでください」

こんな最短でおかしな日本語を2回も使うとは思わなかった。

「バスケは好きか?」

「言うほど興味もないですが、というか何なんですかさっきから」

なんなんだろうか。

「じゃあ何が好きなんだよぉ!!」

ついには逆ギレ状態に、ホント何なんだろうか。



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