第十一話-異形の魔物
2015年度の甲子園の出場校が決まりました。
今年も話題の選手が多く、特にバッターの大物が賑わせそうです。
プロ野球では方や混戦のセ、パは盆前にもM点等の様相です。
スポーツは見てもやっても、楽しいものです。
最近体を動かして居ないので、少しお腹に余裕が出来て参りました。
励ばねば・・・
「ところで今日は何日になるかの?」
いつの間にかアルデリヤは、シュリから背負子の厄介に、なっている。
「はい老子様、今日は六の月の五日になりますわ」
※この惑星の一年は少し長い、太陽暦で十三の月まである。一月は三十日でうるうは無い。
一日も三十時間有り、三時間ごと刻と表している。
今は十八刻位だから昼と夕方の間位か、少し表記が難しいので早、朝、朝、昼前、昼、昼過ぎ、夕方、夕暮れ、夜、夜中と明記する事にしよう。
山歩きの最中、ゼイブスはあちこち見渡しては、山菜や木の実、果実を採っている。
本人曰く
「ここでしか、お目にかかれぬ物も、多いでな」
だ、そうだ
日がだいぶ落ちて来た。
丁度、夕暮れを迎える。
暫く何事も無く、山を掻き分けて移動していた一行だが、いきなり空気が変わる。
『瘴気だ』
瘴気は、始めはただ漂うだけであったが、次第にその空気は澱み始める。
全員、戦闘態勢に入っているが、今だ強いと思える魔物の気配はしない。
その時、落ちつつあった夕日に、変化が訪れる。
「何!日が欠けるだと!?」
ゼイブスが袋から、摺りガラスを取り出し、蜜蝋製のろうそくの煤で、真っ黒にした板を、太陽にかざした。
すると、はっきり太陽に、満ち欠けが見て取れる。
「確かに欠けておる」
皆も混ざって、眺めていく。
「夕べが皆既月蝕で、翌日に日蝕だと?そんな事があるのか」
何が起こるのであろうか
皆、口々に不安を抱えている。
恐らく、この国の民たちの恐怖は、相当なものに違いない。
ここに居る仲間達でさえ、畏怖の感は、否めないのである。
次第に大気が揺れ始め、日の光はそれを閉ざして行き、辺りに闇が訪れていく。
太陽であったはずのそれは、まるで冠の様に、真っ赤な輪を顕した。
暫くすると、辺りは完全に闇に包まれた。暗雲が沸き、風も吹いてくる。
遠くからの雷鳴も次第に、こちらへと、向かって来る様に思える。
その時、瘴気が渦となって行き、その中心へと集まっていく。
テリーは、指で指し示しながら、口を荒げる。
「あそこです!瘴気と魔力が、重なり合っています!」
「よし!急げ」
太陽はまるで、消えて無くなってしまったようだ。
いや、そう見えるのであろう。
太陽が隠れた周りには、綺麗な、紅くて、怪しい日冠が輝いている。
アルデリヤは月蝕の注意事項を、託してはいたが、この事には全く以って、触れてはいない。
『王都は、どうなっておるじゃろう』
しかし、今となっては最早、成す術もないのだ。
『とにかく、あの場所へ急ぐのだ』
誰もがそう思っているようで、いつの間にか、駆け足になっている。
強大な、魔物の気配を感じる。
今までに無かった様な、物凄く強力な気配だ。
ようやく、たどり着いたその先には、朽ちかけた石柱に囲まれた、まさに祭殿であった。
何故、今まで見付からなかったのか・・・
恐らく、結界で見え無くしていたのだろうと、アルデリヤは推測した。
年月を経て、様々な木々で隠れていた事も、その要素の一つであろう。
「ヒトの気配もします」
テリーはそう言うと、仲間の狼達を後方へと、合図した。
「おいテリー、おめーらはここで待機だ!いつでも逃げ出せるようにしとけ」
続けて、アルデリヤはテリーに告げる。
「もし、わし達が戻って来なんだら、神殿へ赴き、グラッケンに事の次第を告げよ」
「あ、はい!」
「これも配っておこう」
アルデリヤは、神殿の巫女主から頂いた護符を、身に付けておく様にと、言いながら配った。
「先頭はゲルペス頼む、2番手にエマ、シュリが、真ん中にサリー、後方はわしとゼイブスじゃ」
「おう!」「うむ」「はい」「わかった」
「わしもか・・戦力外じゃろ」
「何を言うか!希代の大発明家が、ここまでのこのこ着いて来て、なんも手立てを思いつかん訳が、無いじゃろう」
「んー、しょうがないのぉ、希代の大発明家と言うのなら、大事に扱って欲しいものよ」
「シュリ、あれを出すぞい。手伝ってくれ」
「はい?あれをお使いになるのですか?試験も未だでは無いですか」
「仕方なかろ、乗りかかった船じゃ」
「泥舟でなければ、良いのですが」
「ほっほっほっ、シュリ殿もよういいなさる」
このの笑いが、皆の肩の力を、抜く事になった。
シュリの背負った、大きなバッグから、何やら、様々な部品が出てくる。
オートマタンの部品の様な、鎧のパーツのような物が見える。
それをゼイブスが、組み立てると、次に本人は、ダイバースーツの様な物を着込む。
その後は、シュリがテキパキと、スーツの上からパーツを装着して行く。
シュリが最終確認すると、ゼイブスに完了を伝える。
周囲の視線が、やけに突き刺ささっているのは・・・仕方の無い所であろうか。
『起動陣発動!』
身長はおおよそ2m程であろうか
ゼイブスが声を掛けると、それは徐に立ち上がった。
黄金色に光り輝く姿は、とても眩い。
ようやく我に返ったアルデリヤは、代表して尋ねる事にする。
「それは?なんじゃ」
「わしの鎧じゃが、何かね?」
「何か?じゃねーだろ」
すかさずゲルチョの突っ込みも入る。
「試運転じゃからの、とりあえずゲルベスよ。前をちーと、代わって貰おうかの」
「お!?おう」
この鎧は、魔物が住む様な危険な場所でも、活動できるようにと、製作を進めていたものだ。
今で言う、パワースーツみたいなものである。
最初に着た物は《エレメントサーペント》のスーツである。
これは熱と冷気を、遮断してくれる効果がある。
《エレメントサーペント》
海に住む大蛇である。毒を持ち、体表は細かく、硬い鱗とぬめりで覆われている。
火や雷は全くと言っても、良いほど効かない。
長い胴で巻きつき、あるいは鞭の様に撓らせては、船を沈める海のならず者である。
装甲には、リノロンテの革を使っている。
《リノロンテ》
砂漠の蜥蜴もぐらとも、呼ばれる。
表皮は金色に輝き、ダイヤ型のウロコ状で、硬い皮膚に覆われている。
そのウロコは、攻撃魔力を吸収し、日光を遮断する。
砂漠に生息し、サボテンやワームを主食にしているが、非常に臆病で砂に隠れてしまえば、見つけるのが非常に厄介となる。 体長七m程
鼻先にドリルの様な角を持ち、両脇にも同じ様に、少し短めの角がある。
全体を回転させ、砂の中を縦横無尽に、突き進むことが出来る。
酸に弱い。
その《リノロンテ》の、うろこ状の革で、外装を全て纏った各パーツは、黄金色に輝いている。
これを各部位(頭部、首、肩、上腕、二の腕、胸、銅、背、太もも、下肢、足)と細かく防備具として、作り上げて行った。
各部位を繋げ動かすパワー筋としては、カルチャーグーの筋を束ねて、活動源として使用している。
《カルチャーグー》
カルチャーグーの筋力は、凄まじいものであった。
このフロッグ系のモンスターは通常、この脚力を飛ぶ事に使っているのだが、こいつは違う。
後ろ足の踵に棘が無数に在り、その踵で蹴る、蹴り上げる、薙ぎる、等の攻撃を、仕掛けて来るのである。
その脚力は鋼の鎧をも、簡単に引き裂く力を持っている。
筋力として使うのは、十分過ぎると思われる。
魔素を吸収しながら、心臓部の魔石回路で、各部位を自由に可動させ、そのパワーを数十倍に、引き上げる事を可能にした。
「おっと、忘れる所じゃった。シュリよ、アレをこやつらに配っておけ」
「はい、主人」
袋から、アイアンピードで作成した、《チェストとプロテクターを取り出し、各自に配布した。
「多少の冷気と熱気は、防げるじゃろう」
エマが、とても嬉しそうだ。
にやにやしながら、シュリに、着付けをやって貰っている。
この時、テリーもちゃっかり頂いたのは、言うまでも無い事である。
五人は渦巻く瘴気と、怪しげな魔力の中へと、入って行くのであった。
「さあ、魔物は問答無用で、滅殺するぞい」
心配そうな様子のシュリを尻目に、ゼイブスは性能を、試したくて仕方が無いらしい。
足取りも軽やかに、先頭を突き進む。
瘴気に突っ込むと、見た事も無い魔物が三体、こちらへ突っ込んでくる。
赤い目をした、鬼のような魔物である。
「インプじゃ」
《インプ》
妖精族で蝙蝠の様な羽を持ち、角が二本あり、矢の様な尾を持つ。
使い魔として、行動することが多いようだ。
三又の武器を持つ。 体長 一,二m程
「まかせろ」
スーパーゼイブスが、飛んで来た二匹のインプの頭を握ると、そのまま『プチン』と握り潰し、煙の様に消してしまった。
旗色が悪いと見た、残りの一匹が口笛を吹くと、《ガーゴイル》が飛んでくる。
《ガーゴイル》
悪魔の形を模した、両翼のある石像である。
動きが早く、石でできている為に、通常の魔法は無効化される。
体長は様々で一,五m以上
三m程のガーゴイルが、こちらへと突撃してくる。
それを見たゼイブスが、ガーゴイルに飛び掛かっていく。
力試しをするようだ。
両手を『ガッチリ』組むと、『ミシミシ』と音が聞こえてくる。
他のメンバーはただ、様子を見るだけとなっている。
そのうち『ミシミシ』が、『バキッ』と音を変えると、ガーゴイルのその指は、手首ごと無残に砕け落ちた。
そのまま、頭突きをすると、『ドーン』と大きな音を立てて、その石くれは木っ端微塵に、打ち砕かれた。
「おっさん、つえー」
ゲルチョが感心しているが、後方ではシュリが腕を組んで、『ニンマリ』している様だ。
やはり主人の活躍は、嬉しいらしい。
『ドスン、ドスン』
奥から、大きな足音が聞こえてきたかと思えば、鋭い蹄の音を立てて、こちらへ突っ込んで来る。
両の脇にも、何かを従えているようだ。
《ミノタウルス》だ。
目は血走っていて、興奮しているような凄い形相で、こちらを睨み付けている。
両脇には、《ヘルハウンド》と《スケルトン》を引き連れている。
団体さんのお出ましだ。
《ミノタウルス》
迷宮に住むと言う。二本の足で立ち、頭は牛で二本の角を持つ。
腰から下も牛だが、豪腕であり、その突進力は強烈である。
手には、斧やアックスを好んで持つことが多いが、防具を装備する者も、居るようだ。
中には知恵を持ち、言葉を理解し、喋る者も居ると言う。
体長二、五m~
《ヘルハウンド》
地獄の番犬と言われ、これも迷宮に生息すると言われている。
黒く長い毛並みで、狼の様な顔立ちだ。手足の爪は鋭く四本足。
牛の様に太い胴を持ち、鋭く長い牙二本ある。
よだれには毒が在り、噛まれると熱に犯され、意識が混沌となり発狂すると言われる。
体長五m程
《スケルトン》
冒険者や旅人の成れの果てだが、この世に未練を残した、魂が宿ると言われる。
アンデッドで禁呪文により、作られると言う。
ヒトが使う武器を持ち、防具を身につけることも在る。
『これは心して、掛からねば、なるまい』
一章がクライマックスを、迎えています。
いきなり強敵出現で、仲間たちは全力での戦いを強いられて、大変!
頑張れ中間たち