第四話
影秋は夢を見ていた。
家族で食事をして、幸せだったころの風景。
まだ正常だったころの影秋の家族風景だった。
(やめてくれ、こんなもの見せないでくれ)
少しづつ視界が赤く染まっていく。
(俺は何も考えてなかった。何も考えなかったから楽だった、幸せだった、あのころ仕事中毒だった両親だけどかならず週に二回は一緒に夕飯を食べ、近況を語る。何も考えず信じていればよかった。)
視界が完全に赤く染まった。
何も見えない・・・。そしたら電話の音が聞こえた。
「はい、田中です。・・・え?」
(今でも覚えている両親が蒸発したと聞いたとき目の前が真っ暗になった。大学生だった俺は大学を辞め両親が置いていったわずかな貯金とアルバイトをしながら生活をしていたんだ、親父にお袋はトラブルを起こした重役の代わりに仕事をクビになり蒸発した・・・俺の存在って彼らにとってなんだったんだろうな・・・。)
(うおっまぶしっ!)
突然光に包まれた。何が起こったのかわからず混乱するなかうっすらと目を開ける。
そこには幼女が居た。
(うわ、吃驚した誰だよ・・・)
口に出しているつもりだったが口が動かない、動いてくれない。
(あれ・・・しゃべれない!体も動かない!!)
目しか開けられず焦りだす影秋
「焦らなくても大丈夫ですよ」
と、そんな声が聞こえてきた。
その声は影秋が腹痛によって意識を失う直前に聞いたものと一緒で。
「体がまだ慣れていないだけですから、すぐ動けるようになります」
と幼女がしゃべった
(しゃべったあああああああああああああああああ)
と見た目が七歳くらいの幼女がしゃべっただけなのにどこぞのハンバーガーショップのCMのごとくオーバーリアクションをとったつもりだった影秋、だが体は動かずむなしさだけが残る。
「私がしゃべったらおかしいのですか?君は失礼ですね」
(えっ、なんかごめんなさい。)
「まぁいいでしょう」
(あれ?伝わってる?)
「はい、伝わってますよ。心を読んでいます」
(まじで!?すげえ・・・20年生きてきたけどそんな能力もった人にははじめて出会うわ!)
「私、これでも女神やっているんで、それぐらいはできますよ。」
(女神?幼女が女神・・・ありかもしれん・・・)
「まぁ姿はこんなに幼くみえますが、これでも女神です」
(そっかー女神かー、って女神!?)
「ふふん、これでも偉いんですよ!」
(無い胸はって威張る姿がとてもキュート、女神というのも納得できるほどの可愛さ)
ドゴッ(蹴る音)
「ヘブッア!?」
「そろそろ動けますよね?起きなさい」
背後から「ゴゴゴゴゴゴゴ」という感じの威圧感を出しながら俺を蹴る幼女な女神
「いきなり蹴るとか、それでも女神か!」
「無い胸とか失礼なこと考えるからいけないんですよ?」
「う、すみませんでした・・・。」
これは影秋の負けである、そもそも心を読んでいる相手に向かって無い胸とか考えちゃう影秋・・・考えなしである。
ふと、そこで違和感に気付く、自らの声がとても高い事に気付いたのだ。
「あーあーあー」
やはり高い・・・聞き間違いではなさそうだ。
状況を確認するために立ち上がろうとして転ぶ
「アダッ」
転んだときに頭を打ってしまった。
馬鹿になったらどうするんだ、ともうすでに手遅れなので心配ないことを考えつつ転んだ原因となったものを探すため何かが引っかかった感触のする脚部に目を向ける。
脱げかけたジーパンから細く白い足が見えていた。
目の前の光景が信じられず一度目をこすり再び見る。
やはりそこには細く白い足が見えた。
あまりの出来事に信じられずフリーズしてしまう。
「大丈夫ですか?頭の打ち所が悪かったんですか?フリーズしてますけど」
「ええええええええええええなんじゃこりゃあああああああああああああああ」
「うるさいですよ、もうちょっと静かにしましょうよ」
自分の手を見て足を見る、明らかに細く前よりも随分と華奢になった手足、良く見ると胸も少しだけ膨らんでいる。
「えええええええええええええええええ」
「うるさい!」
幼女にビンタされて冷静になる。
「これが、幼女パワーか」
冷静になれたことにびびって逆に混乱しわけのわからないことを口走る。
「落ち着きましたか?あなたは私の祝福をうけたんですよ?」
「祝福?」
なんだそれは?と影秋は首をかしげる。
「はい、祝福です。なんか森を彷徨い消えかけていたので祝福しました」
「消えかけていた?」
物騒な言葉がでてきて何も考えずに反応だけで聞き返してしまう影秋
「ここは魔の森の奥に位置する場所です、普通の人ならここにたどり着く前に消えてしまっていたでしょう。そんな場所に何故か彷徨っていたあなたを発見したのですが錯乱してて面白かったので見てました。」
「え、ずっと見てたんですか!?本当に怖くて精神的にやばかったんで、早く声かけてくれてもよかったじゃないですか!」
「(無視)普通の人なら魂すら蒸発して同化してしまうはずの瘴気につつまれたこの場所を彷徨っていたあなたは何をトチ狂ったのか魔の森の瘴気だらけの水を口にして消えかけていたところを私が祝福しました。これでも命の恩人ですよ!(どやぁ)」
「え、なんかありがとうございます!!(どや顔可愛い・・・)」
「体に瘴気を取り込み消えかけていたところで祝福したので本当に危ないところだったんですよ?」
自らが消えかけていたと聞き、恐ろしくなった影秋は聞き返す。
「瘴気ってなんですか?」
「負の感情によって生み出された魔力の慣れの果てですね」
「魔力!!?なにそれ・・・怖い」
「話が進まないので説明は省略しますけど、あなたは消えかけていたところを祝福により一命を取り留めましたが、体と魂が身を守るために変質しました。」
「変質した・・・それがこの細い体?」
「もっと詳しく言うと女性になりましたね」
「ほう・・・女性に・・・ってえええええええええええええええええ」
「うるさい」
再びビンタを食らう影秋だった。