第三話
二つある月に気付いてから30分が経過、この小説の主人公である影秋は落ち着きを取り戻していた。
「意味がわからない、つまり悩んでいても仕方がないってことだな」
落ち着いたのではなく、考えることを放棄しただけだった。
「とりあえずどうしようか・・・湖の周りでも一周してみるか」
と結論を出しその場で拾った木の枝を地面に突き立てて目印にして動き出す影秋
「一周したはいいが・・・何もないじゃん!!」
と一人突っ込む。
あるのは木、木、木、それのみだった。
まぁ森なので当たり前なのだが。
「というか・・・静かだあぁぁぁぁぁぁぁ」
どこぞの熱い男の真似をしだす影秋、案外余裕があるのかもしれない。
そして森が静かという点、この森は静か過ぎる。
生命を感じさせないほどに静かなのだ
物音もしない、たまに風が木々をなでるだけ。
「なんなんだろうか、この拍子抜け感は・・・この湖もでかいだけで特徴ないし!」
と、一人愚痴っていた。こいつこの状況を楽しみだしていないか?
「喉が渇いたな、湖の水飲んで平気か?生水みたいに腹壊したら嫌だしなぁ火を起こして沸騰させるか?」
と、考えを口に出しつつ何か使えるものはないかと自らの鞄をあさり始める。
持ち物は
財布(14431円)
iPh○ne(4s)
フェイスシート後4枚くらい
ボディシート後13枚くらい
ポケットティッシュ三袋
24時間戦えちゃうかもしれない栄養ドリンクが二本
チャッカマン
である。
ちなみに鞄はトートバッグである。
「タバコは吸わないが、吸う友人達のため準備しておいたチャッカマンがこんなところで役に立つとは思わなかった!人生何があるかわからんね」
と誰も居ないのに突然説明しだす影秋、寂しいのかこの男は・・・。
「さて・・・と・・・・どうやって沸騰させるか・・・?」
チャッカマンはあるが知識も道具もない影秋だった。
「ふぅ・・・自然の水うめー」
結局そのまま飲むことにした影秋、考えなしである。
「うるせぇ!喉が乾いてしかたなかったんだよ!!」
メタ発言しだす影秋、喉が潤ってきたあたりで湖が月明かりとは種類の違う光を発していることに気付く。
「なんだ・・・光ってる・・・?」
そこで急激な腹痛に襲われる影秋
「あ!これあかんやつだ!!そのまま飲んじゃ駄目な感じだったかあああああ」
考えなしである、大切な事なのでもう一度言うが考えなしである。
「ぐうううううう」
最初森の中で目が覚めたときとは別の理由で絶賛混乱中である。
「なんだっ・・・この・・・痛みぃ!!」
とても我慢できるものではなかった、あまりの痛みに影秋の意識は朦朧としてしまう。
そこで聞こえてきたのだ、とても透き通るような女の人の声、湖の方向から聞こえる。
「あ・・・して・・ださ・・、あな・・祝福さ・・した。」
湖の 上に立つ人影を見た。
微かに光る湖の上を優雅にゆったりと歩く、髪の長い 幼女の姿を
「なんじゃそりゃあああああああ」
影秋は突っ込みながら意識を失った。