第二話
薄暗いく周囲を多い茂る木々で囲まれた森の中、影秋は途方にくれていた。
「出入り口を抜けたら・・・そこは森の中でした・・・。って意味がわからねぇよ!!」
と動揺しつつもノリ突っ込みをしだす影秋、案外この突然の事態を楽しんでいるのかもしれない。
「と、とりあえず前進してみようか。」
と、薄暗い森の中に突然放り出され薄気味悪い場所だからなのか割りと怖がりつつも
勇気をもって前進する影秋、これは勇気ではなく無謀である。
そして周囲薄暗い森の様子を見つつ割と怖さをごまかすために鼻歌を歌ったりしながら散策する影秋。
しかし、どこまで行けども木、木、木、森を抜けることはない。
「もう23時じゃん・・・帰って寝ないとシフト的にやばいぞ・・・」
とコスパで選んだミリタリー風のソーラー電波腕時計を見て一人つぶやく。独り言が激しい影秋、それには理由があった。
激しい不安、いきなりの事態に不安や恐怖で押しつぶされてしまう。
そこでふと気付いた。
「待てよ・・・確かゲーセンにいたときは22時過ぎたくらいだったはず・・・つまり意識を失ってから目覚めるまで一時間たっていないって事か」
意識を失ってから目覚めるまでの時間、その推理を頭から口に出す。
「いきなり街の中で意識を失って、気がついたら森の中、意識を失ってから一時間は経過していない、街はそれなりに栄えているし周囲に森なんてなかったはずだ」
しかも周囲に明かりも何もない深い深い森なのである。
「あれ・・・?」
そこで気付く、真っ暗なはずなのに良く見える、ありえないこと何にいまさら気付く
「俺は一体どうしちまったんだよ!!」
とうとう胸に抱えていた不安に押しつぶされ走り出した影秋。
しばらく走ったら、湖にたどり着く。
「湖・・・?なんだよこのでかさは」
影秋は気が狂いそうだった。
とても大きな湖、それはさきほどまで影秋が居た街とその周囲にはない、少なくともこのような大きさの湖はなかった。
そしてこの暗闇の中、湖の向こう側に覆い茂る木々が鮮明に見える。
これはおかしい、どうしよもなく明らかにおかしいのだ、自分の目が、いくらゲームをやりまくっていても視力が1.0のはずだった目が異常なほど良く見えるのだ。
そう、暗闇という目隠しすら素通りするかのような目の良さ。
しかし、このときまだ影秋は気付いていなかった。
己の目だけではなく身体能力全般が大幅に人間の限界を超えている事に、
この湖にたどり着くまでかなりの距離を走っておりその速度は時速120km、まったく息切れせず、この木々が覆い茂る森を減速することなく走り抜けていた。
薄暗く木々に囲まれて距離感覚が狂い、己の人間の限界を超えてしまった行動に気付いていなかっただけなのが、視力という形で己の異常に気付いてしまった。
ついに影秋の脳は限界を超えてしまった。
突然薄暗い気味の悪い森に放り出されてしかも自分の体には何が起きているのかわからない。
「はぁー疲れた、少し・・・休憩するか・・・」
湖の傍で腰を下ろす影秋、一息ついたことにより多少の余裕が戻ってきた。
そこでふと、湖を見る。
「なんだよこれ・・・すげぇ・・・」
月に照らされた湖は美しく幻想的であった。
たとえ人工の光がなく薄暗く気味の悪い森の中であってもそれは幻想的な光景を影秋の目に届ける。
その光景に影秋はただ、魅了されていた。
その湖に写る、幻想的な|二つの月( ・・・・)に・・・。
「ん?二つの月・・・えっ!!?」
呆然としてしまう影秋。
「夢であってくれ・・・夢であってほしい・・・俺は一体どうしちまったんだ!?」
突然森の中で目が覚め真っ暗な中でも良く見える視力を手に入れて、しまいには月が二つある。
「ここは日本なのか?」
月が二つある時点で日本かどうかのレベルは超えているだろ!と自分の中の冷静な自分がノリ突っ込みをする影秋であった。
月が二つっていうのはファンタジーと現実世界の区別をはっきりさせるって意味でよく使われますよね!
お月見団子とかどんなんになるんですかねぇ・・・と食べ物の方向に考えがいってしまう作者です。