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その8

 何故か、先に山科家まで戻ってきた探偵と助手。まるで我が家のように、ちゃっかりソファーに座ってテレビなどを見ていた時


「あれ? もう戻ってたんですか?」


 御一行のお帰りだ。その警部の顔を一目見た木俣さん、歯に衣をも着せず


「とんだ骨折り損だったね」


「え? わかります? まあ、確かにその通りでして」

 ネクタイを緩めながら、母親に抱えられて眠っているしーちゃんに目をやって


「この子にも申し訳なかったですが」


 これに、娘を隣の家政婦に預けた母親が頭を下げ


「いえいえ、とんでもありません。警部さん、明日も引き続きよろしくお願いいたします」


「は、はい。こちらこそ」


 そんな船虫さんに、木俣さんが尋ねてきた。


「ねえ? 怨恨の線は?」


「それについては誘拐された時にすぐ調べましたが、これといった線が出てこなくて」


 だが、素直じゃない探偵は


「またまたあ、ご本人さんが目の前にいるからって!」


 これに相手が、チラリと母親の方を見て


「い、いや、本当ですって」


「ふうん、そっか」

 一応は納得した風の木俣さんだったが、いきなり声を上げ


「そうそう、警部!」


「何です? 突然デカイ声を上げたりして?」


「あのさあ、こいつがさあ」


 露骨に、助手の袖を引っ張る木俣さんに


「え? 田部ちゃんが、どうかしました?」


「太ももさえ見せてくれたらね、すぐに例のミニスカ娘かどうかをズバッと当ててやる……こんなこと言うんだ」


 そら本人さん、すぐさま訂正に入ってきた。


「ま、また何を言い出すかと思ったら……そんなことなんて言ってませんって」


 だが、真に受けた警部殿が今にも拍手しだしそうに


「そ、そうなんだ、田部ちゃん! ついに、そこまでフェチが進んだんだ!」


「け、警部まで、まるで病魔が進行してるみたいに」


 そうは言ったものの警部さん、顎に手をやり


「でも、いくら犯人逮捕の為とはいえ、そこまではできないなあ」


「はあ? 真剣に言うことですか?」


 これを見ていた木俣さん、やはり残念そうだ。


「警察の力を持ってしてもダメかあ」


 当たり前である。

 この時、警部が刑事ら諸君に向かって


「まあ明日は、病院と美容院とペット屋と……そうそう、“ミスター・ステーキ”だったな。とにかく、ここらで捜査しよう。で、まだ何が起こるかわからんので」

 そして若き部下に目をやり


「白子君。キミは一晩、ここに泊めてもらいなさい……いいでしょうか、奥さん?」


「ええ、ええ。こちらこそ、お願いしたいところでして」

 そう笑顔で答えた母親、すぐさま家政婦に


「じゃあ、和代さん。客室を整えてね」


 その時だった。いきなり、しゃしゃり出てきた木俣さん。


「わたくしも善良なる市民の一員として、是非ともここの警備に当たりたい……かのように思う所存です」


「え? あ、はい。じゃあ、もう一つ……」

 ここで田部君に目をやった母親。


「あ、もう二つ客室を整えてね、和代さん」


「いや、こいつはこのソファーで十分です」


 このご主人様の発言に、たて突く家来


「そ、そりゃないでしょ? 人を置物みたいに」


 だが、母親は笑顔で


「まだ空いてる部屋がありますので、どうぞご利用ください」


「あ、すみません」


「いえいえ。じゃあ、私はこの子をベッドまで連れて行きますので」


 一旦、母親が出て行った後


「ねえ、木俣さん? 何でいきなり、ここに泊まろうと思ったんですか?」


 この助手の質問、もっともである。だが、これを横から警部が小声で


「またどうせ、ご馳走にでも授かろうと」


 ところがどっこい、相手は地獄耳。


「あん? 何だって?」


「あ、いや何も」

 そして船虫さん、逃げるように


「じゃあ、我々は退散としようか? で、木俣さん?」


「あい?」


「うちの白子に、何か知恵でも授けて下さいよね!」


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