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おしまい

 そして翌日。事務所にて、たたずんでる探偵ならびに助手。要は依頼がゼロなのだ。

 だがこの時、幸運にも電話が鳴り響いてきた。


「おお! 依頼だ、依頼だ! いつ以来だ?」


「また、くだらん駄洒落を」

 少々相手を睨みながら、受話器を取ったおにぎり君だったが


「もしもし、こちらは、き、木俣探偵事務所ですが?」

 久々なんで、噛んでしまったのが情けない。


「え? あ、そうですか。逃げた猫を探すんですね」


 これを聞き、思わず天井を見上げた木俣さん。


「あーあ、こればっかし」


「江藤さんというんですか……わかりました。では、今から向かいますんで。そうですね、二十分くらいでしょうか」



「じゃあ、行ってきますね」


 本当にどこへ出しても恥ずかしくないくらい、よくできたおにぎりではある。

 そして彼氏、ドアから出てゆく瞬間に一度だけ振り返り


「昼間っから、お酒はダメですからね!」



「何で、身内でもないあやつに忠告されないかんのだ?」


 すでに、片手にグラスを持っている飲ん兵衛。その脇に置いてあるボトルを見ると――確か、山科家にあったブランデーと一緒の銘柄ではなかろうか?


「ほっとけ」


 確かに今回、幼女を助け出した功績は認めよう。だがそれ以降は、何の働きもしていない女流探偵である。だが、それが百万円なる大金をゲットしたのだ。


「別にいいじゃん」


 そして何杯か目を飲んでる時、チャイムの音が聞こえてきた。


「んもう、誰だあ? 人がいい気持ちになってるっちゅうのに」

 そして、嫌々モニターを覗く探偵だったが


「おろ? この醤油顔は?」



 一方、こちらはおにぎり君。


「あ、ここだな」


 目的の家を見つけて、その前にいつものボロ車をとめている。

 そして門前までやってき、そこにあるチャイムを何度も押すも


「あれ? 時間通りなんだかなあ」

 だが、ここで回れ右をしたら鬼に何と言われるかわからないので、門をそっと開けて中へと歩みを進めたのだが。


「な、何だあ、これって?」

 数匹の猫たちに、一斉にガンつけられている。だが元々動物好きの青年、それがどうも救いを求めるような気がしてならない。


「どうしたんだい? キミたち?」


 そして、ごく自然に玄関を開け


「お邪魔しまーす! 先ほど電話を頂戴した、木俣探偵事務所の者ですがあ!」


 だが、そこにも数匹の猫がいた。そして彼らは、まるでこの新客を待っていたかの如く、背を向け奥へと歩いてゆく。無論、おにぎり君も導かれたように奥へと進んだのだったが――一つの部屋の前で歩みを止めた彼ら。


「ん? ここを開けろって?」

 

 心優しき青年、その襖を開き――だがその瞬間、マジで腰を抜かしてしまった。



「いやあ、木俣さん。沙希への尋問により、残り二人の男らもすぐに検挙できました!」


 これ以上ないくらい、ニコニコ顔の白子刑事。


「そりゃ、よかったじゃん」


「貴方の一言が大きかったです!」


「お、嬉しい事を言ってくれるなあ……」

 そう言いながら、手にあるグラスを相手に渡し、代わりに己はボトルを持って


「じゃあ、乾杯だね!」


「え? いやいや、勤務中ですから」


「かったいなあ、ったく! ちょっとくらいは……」


 だが、相手は笑って


「酒気帯びになりますし。そうなれば、僕も貴方も捕まりますよ」


「うっ」


 だがしぶとき、蛇の如き女。他に親密になる手はないものかと模索していると


「ん? 誰からだあ?」


 いきなり鳴り始めた携帯電話。最近手に入れた、流行のトマートフォンなのだが


「と、取れん……」


 要は、まったくもって慣れてないのである。


「あ、僕が取ってあげますよ」

 こう言って、受け取ったトマフォを操作した白子君


「はい、どうぞ!」


「あ、どうも有難う!」

 この、いかにも作った声。だが、電話に出るや否や


「くぉら、道にでも迷ったかあ? んもう、しっかりせんかい!」


『き、木俣さん! ころ、ころ、ころ……』


「お、おい? いくらおにぎりだからと言って、何でいきなり転がってるんだあ?」


『殺されてますう!』


「は? 誰が?」


『わ、わかりません! と、とにかく依頼主の家の中で!』


「ちぇっ、面倒な事に首を突っ込んでからに」


『べ、別に好き好んで……』


「わあった、わあった! ちょうどここに白子君が来てるからさあ、すぐに行かせるし、ね!」


『は、はい』


「それまで、そこにおりなよ! 逃げたら疑われるからな!」


『逃げようにも、腰が抜けちゃって……』


「フン。このお馬鹿め!」


 木俣さんが、こう吐き捨てて電話を切った途端


「僕をすぐに行かせるって? それに、逃げたら疑われる?」


「そそ」

 すでに瓶底眼鏡を外した、このやらしい性格の持ち主。相手を正面から見つつ、首をちょっとだけ傾け


「あのね、うちのおにぎり君が依頼主宅に行ったところね、そこに死体が転がってるんだって」


「そ、そんな、あっけらかんと言う事ですか?」


「別に、臨場感バリバリに言う事もできるけど……実は白昼の最中、とある探偵事務所で助手をしているしがない一人の青年が依頼主を訪れたところ、驚くなかれ、そこにはおびただしいドス黒い血を流している……」


「もう、やめてください! わかりましたから! というか、後半は想像でしょが!」


 だが、とことん己の手を煩わしたくない木俣さん。いきなりくねくねしながら、笑顔でウインクまでし


「だから、早く行ってあげてね……作之進ちゃん!」 了


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