二人の絆
暗闇の中で少年兵は一つ咳をする。喉にはり付く血のせいでうまく息が吸えない。ぜいぜいと乱れた呼吸音は沈黙に消え、感覚を奪った。
ひやりと冷たい土壁が、怪我のせいで発熱した身体に心地いい。すがるようにして急な階段を降りるが、うまく足が動かせず、何度も踏みはずしては激痛に呻いた。
それでも彼は、一歩、また一歩と進む。
割れた額を伝う血が目に入り、視界を遮るが、かまうものか。どうせ明かりもなく何も見えない。
「早……く……行かなきゃ……あいつ、あれ……で、暗がりを……怖がるか……ら……」
少年兵はかすかに口元を歪めた。笑ったつもりかもしれない。
声を出したせいで咳込み、多量の血の塊を吐く。どうやら肺もやられているらしい。そう長くはないだろう。
すでに隠し階段に敵はおらず、彼の邪魔をするものは何もない。
「あと……少し……あと、少しで……」
最下段にたどり着いた時、ついに足に力が入らなくなった。湿った地面に倒れ伏し、それでも諦めることなく、かろうじて動く手だけで前に進む。
すぐそこに、恋人の気配を感じた。
「ごめ……ん、お待たせ……」
やはり口元を歪め、愛しいひとを抱きしめる。
いまだ残り火のくすぶる彼女の身体は、傷ついた少年兵の腕を焼き焦がすが、それしきのことで離れる二人ではない。
優しく頬を撫で、くちづけ、そして瞳を閉じた。
身をも焦がす恋の炎を、消せるはずもなく。