第6話 ポテチを食べ方講座。
「だぁ~もう!人の部屋散らかすな!」
だから嫌だったんだ…
こいつらを家にあげるのは…
俺の部屋の中には俺と千鶴と宗太がいて、俺は机に向かってノートを写している
そして、後ろの2人はどこから持ってきたのか分からないおやつを広げて食べ、宗太はゲーム、千鶴は漫画を読んでいる
「ねね、智。この次のやつ無いの?」
「そこに無いなら無い。って、お前ちゃんと順番通りに直せよ」
「めんどっちぃ~。そんな細かいこと気にしてたらモテないぞ」
「そうだぞ、智樹。もう少し心を広くだな」
「宗太!おやつ食べた手のままコントローラー触んな!」
「気にするな」
「もぉ…さっさと帰れよ…お前ら…」
「まぁまぁ落ち着いて。私からプレゼントだよ」
千鶴はポテトの油で汚れたシャーペンを渡してくる
このシャーペンは確かこの前無くした俺のやつだったはずだ
俺はティッシュを1枚持って、そのシャーペンを受け取り綺麗に油汚れを取る
「私ってそんな汚くないよ?」
「油が付いてんだよ」
「あ、そうなの?ごめん」
「謝るなら手を拭け、舐めんな」
「ここが美味しいんだよ。わかってないなぁ」
「うんうん、俺も木島さんの意見に賛成」
「だよね~わかってる神門くんは」
「いやいやそれほどでも」
「もういいから…お前ら付き合っとけ…そんで、さっさと一緒に帰れ」
俺はそう言ってノートに文字を埋めていく
後ろでは宗太が少し本気になって、千鶴を口説きだしたが千鶴は笑いながらそれをあしらう
宗太…気付け…ウザがられてることを…
「智、私そろそろ帰るね」
「あいよ。てか、彼氏は良いのか?」
「いいよいいよ。メールで行かないって言ってあるから」
「そっか。んじゃまた明日な」
「うん。あ、ポチって今どうしてるの?」
「定期健診中だから明日には帰ってくる」
「そっか。んじゃまた居る時に来ようかな…それじゃバイバイ。神門君も」
俺と宗太は部屋から出ていく千鶴を見送る
そして、部屋から出ていくと宗太が俺の方を見てきた
「なぁ…俺、木島さんに嫌われてる?」
「さぁ?そうなんじゃない?」
「うわぁ…マジかよ…」
「適当に頑張れば?まぁ次も千鶴をあんな風に口説こうとしたら本当に嫌われるんじゃない?」
「なんでだよ、年上と付き合ってんだろ?出会い方だってナンパだろ?」
「ナンパかどうかは知らない」
「わかんねぇ…てか、智樹は木島さんとどういう関係なんだ?」
「どういう関係って言うと?」
「いや、なんでも知ってるから」
宗太はゲームを止めて、俺の方を向き、真剣に聞いてくる
俺と千鶴の関係っていうと、兄妹みたいな関係なんだけど…そういうのとも今思えばちょっと違うような気がする…
「あれか?昔、智樹と木島さんって付き合ってたりしたのか?」
「ん~…俺とあいつが出会ったのは小学校の頃だったし、その頃はよく一緒に居たから付き合ってると言えば付き合ってたな」
「いやいや、それは入らないだろ」
「まぁ冗談だけど、中学の時に一度だけ彼氏彼女の関係にはなったことがあったな。2週間ぐらい」
「2週間って…なんでそんな…いや、別に言いたくないなら良いけどさ」
「別に簡単に言ったら、中学ん時もほとんど一緒に居たから周りが勘違いして、その流れで付き合ったってだけだよ」
「そんなのホントにあんのか?」
「さぁ?まっ、千鶴も俺も気にしなかったけど。特に千鶴は……まぁ昔、色々あったわけですよ」
「ふ~ん………やっぱ諦めた方がいいのかなぁ」
「本気で千鶴狙うなら1人で頑張れば。俺はこれ以上、干渉しない。
俺は俺の行動をするだけ」
「はぁ~…いいよなぁ、智樹は。あんな可愛い子が近くにいるんだもん」
「お前は誰かと付き合おうと思えば付き合えるだろ」
「ん、まぁそうなんだけどさ。ちゃんと俺を見てくれる人がいいなぁって。
木島さんってなんか俺がお金持ちだからって気にしなさそうじゃん?そのままの俺を見てくれそうだし」
珍しいこともあるもんだ…
宗太が女の子の事を真剣に考えるなんて…
大抵、向こうから近寄ってきて、適当に付き合ってしばらくしてから別れるみたいなことができる宗太がこんな風に俺に相談するなんて…
「千鶴にマジ惚れか?」
「ん~…どうなんだろ」
「まぁ俺はさっき言った通り何もしないけど…1つだけ忠告しておいてやる
千鶴は止めた方が良いよ。あいつは宗太が思ってるほど良い女じゃないよ」
「は?どういう意味?」
「文字通り。お前があいつを知ろうとすればするほど千鶴は離れていくよ」
宗太はいまいち理解できないような顔をしながら俺の方を見てくる
俺はそれを無視し、机に身体を向け、ノートを書いていく
宗太が千鶴と付き合うのはおそらく無理だ。そもそも本当の千鶴のことを知って今までと変わらずに接することができる人は俺が知ってる中でも2人だけ。
千鶴自身もそれを分かってるからあんな風に猫をかぶるようになったんだから