第40話 本気で痛いんです…
夏休みも明け、ついに2学期に突入だ
2学期は様々なイベントがあるため、学生たちも盛り上がるし、男と女が一緒の行動をする機会も多いため彼氏彼女の関係になる人も多い
まぁ俺もそんな世界に飛び込もうとしているんだけど…
「は~や~と~」
「千鶴~、今日は何時に帰ってくる?俺、校門で待ってるよ」
「ほんと!ん~えっと~お昼には終わると思うからメールするね」
「ああ。待ってるよ」
このバカ共を見てるとそんな世界に入りたいと思えなくなってくる…
千鶴と隼人は見てるこっちが恥ずかしいようなキスをして、人の玄関から居なくなる
結局こいつらはバカなんだ
昨日、お昼ぐらいにバカ2人が帰ってきて、ずっとこんな調子だ
それも、隼人はしばらく家にいるという
父さんが仕事で行っている所が今大変なことになっていて心配だからのと、父さんに会いたいかららしい
何時帰ってくるか分からないと言ったモノの、千鶴とその間会えるから良いとか何とか言って長期滞在するきだ
もちろん、お金の面では適当にアルバイトをするらしいので心配はいらないらしい
俺は拒否する気も失って、渋々許可をした
「ほら、智。早く行かないと遅刻するよ」
「はいはい。んじゃ隼人、きっちり自宅警備員( ニート)しとけよ」
「おぅよ!バイト見つけてくるぜ」
バカには副音声すら聞こえないみたいだ
俺は呆れて何も入っていないカバンを持ち、千鶴のあとを追う
そして、電車に乗って約1ヶ月ぶりの学校の中に入る
「お久しぶり~」
テンションの高いまま千鶴は教室の中に入る
他の生徒はいつもと少し違う千鶴に何か気が付いたのか、女子だけ千鶴の周りに集まる
俺は女子の鋭さに驚きながらも自分の席に座り、漫画を読む
「おはよう、智樹」
「ん?あ~清水か、はよ」
「2学期だね」
「そだなぁ………何?」
なんかモジモジしてる
俺は何か清水と約束をしていたのかと思いだして見ると大変なことを思い出した
「あ~…ごめん、2学期がんばろうな」
「う、うん。頼むね」
「いや、自分で頑張れよ」
「う、うん…できるだけ頑張る」
清水が佐藤さんに告白できる時期はいつになるんだろう…
今の清水を見ていると高校のうちじゃできないような気がしてくる
俺は適当に清水との会話を終わらせて、再び漫画を読もうとするともう1人のバカが教室の中に入ってきた
「おはよう、智樹」
「ああ、はよ」
宗太は元気よく挨拶をしてくるが、目は千鶴の方に行っている
そりゃ女子達がみんなあいつの周りに居れば自然に視線が行くのは普通だろう
「…なんかあったのか?」
「まぁね。まぁそのうちわかるよ」
「何がだ?」
「俺の口からは何とも言えんな。とりあえず、お昼には分かる」
宗太はいまいち分からないような顔をしながら自分の席に座り、いつまでも千鶴の方を見続ける
すると、その視線に気が付いた千鶴が笑顔で宗太に何か挨拶をして、すぐに女子の中に戻って行った
あんなことをするから勘違いするんじゃないんだろうか…
俺はそんなことを思いながら漫画を読んでいると次々とクラスメイトが入ってくる
すると教室の中は更に盛り上がり、お互いの夏休みの思い出を話しあっていた
始業式も終わり、あとは帰るだけ
始業式なんていらないんじゃないか?って思うけど儀式みたいなものだから仕方無いのかもしれない
前では担任が何か話していて、しばらくすると帰ってもいいと言われる
すると、一番最初に動いたのは千鶴だった
千鶴は嬉しそうに立ち上がり、俺の方を見てニコ~と笑ってから教室を出る
そして、女の子たちも次々と千鶴のあとを追うように出ていく
「お、おい…智樹、木島さんなんか…」
「お前も見に行けば分かるよ…とりあえず俺から言えることは~…ドンマイだな」
「は?」
宗太は俺の言っている意味がわからないまま、俺と一緒に校門の方へ向かう
すると、宗太級のバカが校門に立っていて、帰ろうとする生徒たちの注目の的になっていた。特に女子から
そんな女子達の視線の中心に立っている男に向かって手を振りながら千鶴は走って行く
「隼人~」
「おつかれ、千鶴。待ったぞ」
「ごめんごめん」
「後ろの子たちは?」
「私の友達だよ。この人が私の彼氏なの。隼人って言うんだ」
俺の横でカバンが落ちる音がした
そりゃそうだろう…自分の好きな女の子が今までに見たこと無いくらいの嬉しそうな顔で自分の彼氏を友達に紹介しているんだから
それもその彼氏が男の俺たちから見ても、イケメンすぎる人だ
どんなナルシストでも落ち込むほどだ
やっぱり酷すぎただろうか…
でも、今の宗太に触れると大変なことになるだろうから、そっとして校門を抜ける
しかし、バカップルは許してくれなかった
「おぉ、智帰るのか」
「そのつもりだけど?お前らといると疲れる」
「智も早く彼女作ればいいのにね~隼人」
「だな。いつまでも彼女無しはどうかと思うぞ?」
「隼人、うっさいぞ」
「まぁアレじゃないもんな、智は」
「アレって何?」
「ん?童て…っぉ!!」
思わずカバンを投げてしまった…
俺の投げたカバンは見事、隼人の…いや、男の急所に当たり悶絶していて見ているこっちまで痛くなりそうだ…
俺はカバンの事を忘れて、そのまま駅の方へ歩いて行こうとすると頭を叩かれた
「ってぇ」
「あんた、人の彼氏に何してんのよ!」
「っち…ほら、その彼氏が女子に囲まれてニヤニヤしてんぞ。あれはいいのか?」
俺は適当に言って、隼人の方を見ると本当に女子高校生に囲まれた隼人はニヤニヤしている
千鶴はそれを見ると急いで隼人の方へ走っていき、俺がダメージを与えた急所を蹴りあげた
女の子は恋をすると変わるというが…あれは悪い意味で変わってしまってる気がする…
悪化というか…悪魔化したというか…
俺は急所がキュッとなるのを感じながら、駅の方へ向かった