第26話 元犯罪者
30分ぐらい経っただろうか
俺と宗太は炎天下の中、テニスコートを走り回る
しかし、俺のいる所と宗太のいる所では環境がまったく違う
俺のいる方は、太陽の日差しは近くにある木によって後ろの方は影になっている
しかし、宗太の方は影は無く、コート前面に太陽の日差しをモロに浴びていた
その影響もあり、俺はまだまだ動けるが、宗太は完全に脱水気味だ
もちろん、今まで運動してきているからその疲労もあるだろうが、普通なら簡単にやられる俺でも今の宗太なら勝てそうな気がしてくる
俺は返ってくるボールを左右に打ち返しながら、宗太を見ていると何故俺が勝負をしているのかと不思議に思ってきた
この勝負に俺が勝っても負けてもメリットは全くない
言い方は悪いが、この試合は完全に宗太の自己満足のために行われているようなものだ
俺はそう思ってしまうと、返ってきたボールを打ち返す気が無くなり、ポンッとボールの勢いを殺し、手で掴む
「ハァ…ハァ…ハァ…何…してんだ…」
「なんか無意味だし、やめるわ。お前の勝ちでいいよ」
俺は近くで試合を見ていたテニス部員にラケットを返して、携帯などを取りに行く
すると、宗太がその邪魔をして俺の胸倉をつかんだ
「逃げんな!」
「逃げんなって…お前の勝ちって言ってんじゃん。いいよ、別れておいてあげるから」
「なんなんだよ、お前!木島さんをなんだと思ってんだ!」
「ハァ…どうでもいいだろ?お前にとってそれは」
「答えろよ!」
「別になんとも思って無いよ、昔からの友達としか。ほら、答えたから離せ」
「それじゃなんであんなこと言ったんだよ!」
「はぁ…別に関係なくないか?てか、千鶴の本当の姿も見ようとしないお前に攻められる覚えは無い。
まぁ千鶴も仮面付けるの上手いから普通なら分からないけど、なんとなく雰囲気で悟れるだろ」
「なんのことだよ」
「まぁいいや。お前が勝ったんだし、1つだけいいこと教えてやるよ。俺も千鶴もお前とは別世界の人間で、俺も千鶴も元犯罪者な。まぁ千鶴は被害者で昔、お前みたいな人気者に苛められたことあるんだよ。それじゃ帰る」
俺は宗太の手を振り払い、テニスコートから出ていく
今頃宗太の頭の中は大変なことになっているだろう
俺は千鶴にさっきのことをメールで知らせてから家へと向かった




