第23話 十分予想できたこと。
予想していた通りと言えば予想通りだろう
教室の中に入ると皆が見てくる
俺はその視線を無視しながら自分の席に座って小説を取り出していると、昨日千鶴を責めていた女の子たちが俺のところへ来た
「あ、あの…」
「ん?」
「えっと…その…ちょっとここじゃ…」
「あ~うん。んじゃ廊下で」
俺は席を立って、廊下の方へ歩いていくと女の子たちも後ろを付いてくる
そして、階段の近くまで来ると段差に座って女の子たちの見る
「えっと、千鶴のこと?」
「そうなんだけど、今日は…?」
「さぁ?知らない。来ないんじゃない?」
普通に言ったつもりがちょっとキツめに聞こえたのかもしれない
女の子たちは一気に顔を濁らせ、どうしよう…といった感じの雰囲気になる
そして、俺の方をチラチラ見てくる
おそらく、俺の彼女発言して、その彼女が来ない原因が自分たちだと思ってるんだろう
「別に気にしなくていいよ。宗太にも言わないし」
そう言うと女の子たちはホッっとした顔をする
でも、このグループのリーダー格である子は俺に頭を下げた
「ごめんなさい、私たちの勘違いで千鶴ちゃんを傷つけちゃったから…ごめん!」
「いや、別に俺に謝らなくても。まぁ千鶴が来た時にでも言いなよ。あいつなら笑って気にしないでって言うと思うから」
「言ってくれるかな?」
「言うんじゃないかな?とりあえず、宗太の事は勘違いだから。千鶴にはそんな気持ち全くないって思ってくれていいよ。それじゃ俺は教室に帰るね」
「うん。ごめんね、わざわざ」
「いや、それじゃ」
女の子たちを置いていって、俺は教室に戻ると厄介な奴が目の前に立ち塞がった
「智樹、ちょっと来い」
「今から授業」
「良いから来い」
「ハァ…あぃよ」
宗太は教室を出て、俺はその後を付いていく
しばらく宗太についていくと校舎裏へと導かれる
「もしかして、アレか?校舎裏でのイジメってやつ」
「………」
「はいはい、聞きたいことあるなら言え。答えれる物なら答えてやるよ」
俺は壁にもたれて、宗太の方を見るとものすごく睨んでくる
まぁ何を言ってくるかは明白だ
「昨日なんであんなこと言った」
「あんなこと?」
「木島さんと本当に付き合ってんのか」
「宗太には関係ないと思うけど?」
「はっきり答えろ」
「答えてんじゃん。お前には関係ないって」
「ッ…お前、俺が木島さんのこと好きなの知ってんだろ」
「だから?」
「お前、木島さんの事好きじゃないって言ってただろ!」
「言ってたっけ?」
「ちゃんと答えろ!」
宗太は俺の胸倉を掴む
その勢いで俺は壁に背中が当たり、かなりの痛みが走り、少しムカついてきた
「答えろ!好きなのか!好きじゃないのか!」
「…それ聞いてどうすんの?俺が好きだったら諦めんの?」
「答えろって言ってんだよ」
「だ~か~ら、俺が千鶴のこと好きだったらお前は諦めんのって聞いてんの」
「お前、いい加減にしろよ!俺が木島さん好きなの知ってんだろ!」
「はぁ…それさっき聞いた。それはお前の身勝手な想いだろ?勝手に千鶴のイメージを作って、本当のあいつを見ようともしない。まぁ千鶴も見せようとしてないから見えにくいかもしれないけど、ちゃんと見てれば分かるはずだろ」
「はぁ?」
「それなのにお前は……まぁいいや。とりあえずこの手離せ。んで、もう必要以上に千鶴に近づくな」
「んの!さっきから何言ってんだ…ごらぁ!」
宗太は両手で俺の胸倉を掴み上げる
すると、首元が苦しくなる
ただでさえ、ムカついてるのにこれ以上は我慢できない
俺は宗太の肩に手を置き、自分の方に引きながら宗太の腹に膝蹴りを喰らわす
「ごはっ!」
「調子乗んな。あ…一応言っとく。これ以上千鶴に近づいたら怒っちゃうよ?」
「っぅ……」
「あとなんか気分悪いし早退する。先生に言っといて」
腹を抱えている宗太を横目に俺は教室に向かう
多少、手加減はしてるけど無抵抗な所を狙ったからキツイだろう
そう思いながらも俺は宗太を背に先に教室へと戻り、カバンを持って家へと帰ることにした