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第22話 予想していた事態

 

 夏休みまであと4日

 ついにジメジメした季節である梅雨も終わり、本格的な夏が訪れ、学生にとって最大の難関でもある期末試験も終わり、あとは夏休みを迎えるのみだ



 教室の中はちょうどいい具合に温度が調節されていて、眠気も誘う

 俺は腕を枕にして寝ているといつの間にか放課後になっていた


「ねぇ、千鶴ちゃんって宗太君のことどう思ってるの?」


 起きて早々なんだか横が騒がしい…

 俺はこっそり横目で見ると千鶴が複数の女の子に囲まれている


「千鶴ちゃんが昨日、宗太君と一緒に町を歩いてるっていう情報が流れてるんだよ」

「え?」

「千鶴ちゃんってなんか宗太君に特別視されてるけど私たちの方が長く付き合ってるんだからね」

「そーだそーだ。ちょっと調子に乗らないでよ!」


 これが修羅場というものなのだろうか…

 俺はこっそり見ながら、千鶴の表情を見ると千鶴は何が何だかよく分からないという顔で女の子たちの方を見ている


「よっぴーが昨日見たって言ってるんだからね!とぼけないでよ!私たちの方は早く宗太君のこと好きになったんだから!」

「そうそう。2年になって入ってきてさ。ニコニコして、何なの!って感じ」


 恋愛に優先順位なんてあるんだろうか…


 女の子たちはどんどんエスカレートしていき、数人で千鶴をいじめているような感じになって行く

 千鶴も昔苛められたことを思い出したのか、顔色が少し悪くなっていき、涙目になりながら俯いている感じだった

 なんとなくいつかこうなるとは思っていたけど、これほどとは思わなかった…

 そんな時にものすごくKYなバカが教室の中に入ってきて俺の近くに寄ってくる


「智樹~、久しぶりにテニスしね?勝負しよう」

「ふぁぁ~…やっぱバカだ…」


 ここまでバカでKYなのも珍しい…

 俺は身体を起こし、そろそろ潮時だと思いながら行動に移すことにした


「ちょっと言いたいことあるんだけど良い?」

「ん?何だ?」

「いや、お前もだけど、まぁここにいる人に」


 俺は席から立ち上がって、千鶴の横に立ち、千鶴を立たせる

 そして、肩に手を置いて、抱き寄せる

 まだ教室に残っている人は今から何が起きるのかと注目してきて、さっきまで千鶴を責めていた女の子たちも見てくる


「あのさ、ずっと黙っておこうと思ってたんだけど、なんか勘違いしてる子がいるから言うね。俺と千鶴付き合ってるんだ。だから、宗太と千鶴があーだとか、こーだとか、関係ないし。

 ていうか、宗太もそうだけど、手出さないでくれる?一応、今は俺の彼女なの」


 俺はそれだけ言って千鶴の荷物を持ち、手を引く

 千鶴は俺に何も言わずに引っ張られ、教室の中にいる人たちはシーンと俺たちの後を見る

 そして、宗太も急な展開に付いていけないのか俺たちの後は追わずにボケ~っと見ていた



「はぁ……ここまで来たらいいだろ…」


 駅近くまで来ると俺は千鶴に荷物を返し、駅のベンチに座る

 電車が来るまであと15分近くあるから周りに人がいない

 千鶴は俺の横に座って、小さな声で呟いた


「なんで…」

「何が」

「なんであんなこと言ったの」

「別に。俺の気まぐれ」

「私が可哀そうだとでも思ったの?!」

「だったら何?」

「っ!なんなの!!何?私を助けて優越感でも浸ってるわけ?」

「さぁどうなんだろ?」

「私頼んだ?智に助けてって言った?言ってないでしょ!!余計なことしないでよ!」

「はぁ…素直にありがとうって言えないわけ?助けたには変わりないだろ」

「だから!誰も助けてなんて言ってないでしょ!!!」

「はいはい。んじゃ今から宗太かあの女子達に言うか?あれは智樹が気まぐれで言ったことだから、気にしないでって。そしたらあの女の子たちはお前が宗太に恋愛感情があるってことで睨まれる。さっきの状況に戻るだけ。もしくは悪化かな。

 まぁ俺はクラスメイトから色々聞かれて恥かくんだろうけど、別にいいよ。そんぐらい分かっててやってんだから。ほら、言いたきゃ言ってこいよ」


 ちょうど電車が駅の中に入ってくる

 俺はカバンを持って千鶴を置いて電車の中に入り、そのまま電車は走り出した

 おそらく、千鶴は言えない

 あいつにとっていじめに遭うことは普通の人が思う恐怖より重い

 そりゃ俺だって苛めに合うのは怖い。今回の行為によって宗太を敵に回したと言っても良い。

 でも、あの行為をやったからと言って後悔はしない。

 俺の恩人でもあるあいつとの約束があるから…


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