第12話 USJ
日曜日、俺たちは今USJ前にいる
千鶴は一昨日の出来事をまだ引きずっているのか、テンションが低くあげる元気も無い感じだった
「千鶴、しんどいなら別にいいんだぞ?」
「大丈夫、皆の前ではいつも通りにするから…」
「そっか。なんかあったら言え」
「うん。ごめん」
今日の千鶴は一応、おしゃれはしているけどテンションとのギャップがありすぎて似合ってない
でも、集合場所に近づくに連れて、どんどん学校での千鶴のテンションへと変わっていく
そして、集合場所が見える頃には完全に学校での千鶴が出来上がっていた
「やっと揃ったな。んじゃ、さっさと中に入って楽しもうぜ~」
宗太がそう言うと約15人近くの塊が一斉に動き出す
俺は年間パスを持っているため、チケットを買わなくていいが他の連中はチケットを買うために移動する
その間待つのも何なので一歩先に中に入って、待っていると佐藤さんが一番最初に入ってきた
「あれ?もうチケット買えたの?」
「あ、ううん。私、年間パス持ってるの」
「あ~なるほどね。俺と一緒なわけだ。年に何回か来るの?」
「うん。お母さんが好きなんだ」
「へぇ~そうなんだ」
「祠堂くんは?」
「俺は自分が好きだから買ってる」
今思えばちゃんと佐藤さんと話したのは今回が初めてかもしれない…
今までは誰が一緒にいて、2人で話したことはなかった
まぁ誰かって言えば、今こっちに向かってきてる清水のことなんだけど
俺と佐藤さんは清水がこっちに早足で来るのを黙ってみる
こっそり佐藤さんの方を見ると特になんてことのないような顔で周りを見ていた
清水は佐藤さんの事が好きなのは分かっているんだけど、佐藤さんは清水のことをどう思っているんだろう…
宗太は佐藤さんも清水の気持ちに気付いてないって言っていたけど、ここまで露骨にしていて気付かないことは無いはずだ
というか、周りの女の子が興味を持って聞いたりしていて気付いてるはずなんだけど…
少しの間、横にいる佐藤さんを見ていると視線に気が付いたのか俺の方をチラッと見てきて目が合ってしまった。
「智樹、皆もう少しだってさ」
「ああ。清水は早かったな」
「まぁね。事前に買っておいたから」
「ふ~ん。それは賢い判断で。んじゃ俺は適当に1人で歩いてるから、何かあったらメールよろしく」
「あ、ちょっと、宗太とか木島さん達はどうすんの?」
「智樹は嬉しそうに1人で遊びに行った。とでも言っといて。んじゃな~」
俺なりに気を利かせて、その場を離れる
そして、少し離れたところから見ると清水も佐藤さんも黙ったまんま入り口の所をじーっと見ている
そして、何人かクラスメイトが来ると見事に離れて行った