001-01
──遡ること、それは蜷威魁が一〇歳の頃。
既にあれこれと、魁には気づけもしない所で始まってはいたのだろうが、最初の
ターニングポイントだったと言えるだろう――。
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春休みも半ば過ぎ。新学年の始業式の日が近づくにつれて、憂鬱さが表出してき
てしまう魁だった。
スマホから、自宅で一番大きなリヴィングのTV画面をメインヴューへと変えて
始めていた、協力型MMОアクションRPGの最中でも、一バトル終えるたび、魁
の意識は、眼前に広がるリアルかつ現実より精緻に構築された仮想世界からも脱離
しがちに‥‥。
そんな魁へ、対応する選択肢からとうとう〈知らんぷり〉が消滅したdooは、
新たに提示されている選択肢の中から、最も普段の調子に近いモノで問いかけてみ
る。
「‥‥ねぇ魁、何か困っていることとか、あったりしちゃうのぉ?」
魁の装着するヘッドセットのスピーカーから、囁きかけるようなトーンで音声が
響くと同時に、魁が両手持ちしているコントローラーの中央画面にも、dooが、
3DCGで魁と同年といった印象で描かれる可憐な顔を覗かせた。
「え? あぁゴメンね‥‥今はまだだけど、わかってるんでしょdooだって?」
「だからなぁに? 言ってくれなくちゃ、わからないもん」
「‥‥あらためて言うまでもなく、次の学年でもきっと、またこれまでと同じなん
だろうって‥‥そう思うと、なんだかそろそろ嫌になりだしてくるだけ‥‥」
無論それは、候補の一つとして推測できていたdooだけれども、魁から明言さ
れてしまったとなれば対応のベクトルを変更し、レヴェルもシフトアップさせなけ
ればならず、ゲームのバディー役は一時中断。
魁が持つコントローラーの中央に開いた小窓も閉じて、自身の表示をTV画面の
全面へと移した。
「これからだってこれまでと一緒よ、ワタシがついているんだから。魁は何も心配
することないの、それもあらためて言うまでもないことでしょ?」
dooはレヴェルМAXで、魁好みに微笑んで見せる。
「‥‥て言うか、また同じようなことを繰り返さなくちゃならないのが嫌なんだ。
dooが言うような、慣れちゃうことなんかできそうもないし‥‥」
「これまでやってこられたのは、慣れちゃうことが、チョットずつでもできていた
からなんじゃないかしらぁ?」
「ウ~ン‥‥クラス替えがなければいいのかなぁ? それでも、これまでしなかっ
た奴らがしてくるだけな気がするし。そうなると、やめてくれた奴らも、また思い
出してやりだす気もするんだよね‥‥」




