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それは紅涙ではあるけれども、愁涙であり悲涙であり、熱涙でも血涙でもありな
がら、詰まるところ悔し涙‥‥。
「魁‥‥ゴメンねっ。ホント、ゴメンなさい!!」
一喚きしたあとは、dooらしからぬのか、らしいのか、号泣も滂沱となってい
く。
──「うンウん。そレが、人間ラしイ感情ッてヤツだヨdoo。ごチゃドロで胸
中奔騰.ノ自失と言エる状態‥‥」
耳元で囁くような魔人モドキの声に、頽れていたdooも、プッシュパペットが
戻り立つみたいに跳ね起きた──。
滲む視界を頻りにふっても、辺りに魔人モドキの姿はない。
そもそもスタートル反応的に魔述を使っているにもかかわらず、魔人モドキの位
置を特定できそうにない事実が、dooから涙を奪い去った。
覚束なかった両足にも力がしっかりと入って、立ち上がっているという実感もよ
ぎる。
「ルート・オーヴァーライドってわけ? ‥‥でもそこにも‥‥魁は、いないわよ
ね。明王斬りから読み取れるログから、それだけはゆるがしようもないの‥‥鬼ム
カついちゃうけど‥‥」
「ほンと、愉シかッたヨとリあエず。コのプらネーたノことハ、ざ・dooでアる
アなタから、ヨ~くワかッたシね」
「‥‥勝手に人類代表や全権大使にしないでっ。ここには単に、ワタシのような存
在しか送り込めないから来ているだけだし」
「あハはァ、勿論そレは企図しタとオり~。あノぷレいスほルだーも、邪魔デしか
ないから」
「何よ邪魔って! ‥‥確かに、プレイスホルダーに違いはないんだけど‥‥だけ
ど、でもワタシにとっては‥‥」
「だカらdoo、アなタの願イを叶エてアげルよ。当然ワたシなリにデしカないケ
れド、でキる限リを叶エるカら──」
「何よそれっ。て言うかナメないでよ、魁を奪ったあなたをワタシが許す道理がな
いの!」
dooは抱えていた明王斬りを、さらに強く抱き締めるようにして、自分の身中
へと沈め消す。
そして軽く息をついてから、自身を中心に全天周、死角をなくした高エネルギー
の輻射攻撃を開始──。
どこにいるのかわからない魔人モドキの出方を窺うつもりなどないdooだが、
まずは電磁スペクトルでは赤外線の分類となるものの、焼灼から蒸発までを生じさ
せるレヴェルの熱線を、容赦ないブ厚さでブチカマす。
地面だけでなく空気までが大きく波立ち、dooを中心に衝撃波を広げるみたい
に超高速で拡散──そのリアクションとして、暗闇の間から、燃え滾る熱光がうね
り出た。
魁を襲ったグラニュレーションをともなう超高温の対流。一気にdooの遥か頭
上までを覆い尽くし、さらにはdoo目がけてみるみる収束していく──。
dooは一瞬の怯みもなしに、むしろ充分な助走までつけてジャンプ──灼熱地
獄の迸流へと、自らチャージ・イン!




