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ミネオラが魔人モドキ呼ばわりした相手は、魁へいきなり火炎弾を撃ち込んだ。それも数発をたて続けに五回も──。
どうにか飛び跳ね廻って躱しきった魁だが、早くもギリギリ。六回目があったならば、間違いなく体のどこかに喰らっていた。
穏便に、できれば、できることは何でもやってバトらずに済まそうと思っていた魁だったが、もはや敵として倒きらないことには、夕食にありつけそうにない。
魁は態勢を素早く立てなおしながら、魔人モドキの女性のこともあらためて見れば──火炎弾を放つ際、激しい炎に包まれたかのように映った服装自体には変化がなく、生成りのブラウスに深緑のロングスカート、その上に厚手の作業用エプロンという、どこででも見かける働く町娘のまま。
静電気を帯びたみたいに広がっていた肩までの茶髪も、毛先すら焦げてはいなさそう。
だが、顔が、表情が違った。一変している。
‥‥なんだか、まるで顔の表面でマスゲームが行われているかのよう。
表情から表情へと移る間は、顔じゅうの各マス目が表示する色も図柄もテンデンバラバラで、その奇怪な蠢くモザイク顔は、魔人モドキらしさを実感するしかない魁でもあった。
普段どおりに、dooのチカラを借りることができれば、おそらく何てことはない敵なのだろうけれども、食事をしようと入った店から魁だけが一転瞬に、魔人モドキとともに、どこなのか見当もつかないこの荒地へと飛ばされてしまっている。
背の高い草が密集している箇所もあれば、大きな岩までが転がっている箇所もあるが、ほとんど平らな地面と言えて、特に何もないことが一目瞭然という見通しだけはいいまさに荒地。
しかし降りだしそうな星の海が広がりつつも月はなく、夜空と地ベタの境界が闇にかき消されてしまっているのに、自分が立っている周辺は、なぜか暗さを感じずしっかり夜目が効いてくれている。
dooの方から来てくれるか、魔述でどうにかしてくれない限り、魁一人でバトり続けなければならない。そもそもdooの防護がない状態で、敵の攻撃を躱すというのも初めてのこと。
だから魁はほぼ無意識に、明王斬りを呼請するために左手を揚げた。それも目一杯も力一杯、心底から〈お願い、きてくれ──モトイッ、きてください!〉と念じながら──。
次の瞬間、魁の右手は青黒い無刃の鉄刀を握っていた。
町へと入る際、門兵よりも権柄ずくな門務吏に、所持する武器を振るわないよう封緘紙が貼られてはいるものの、ここは町を囲う石壁の内側とは考えられない。




