第2話 決着
世界はいったい俺をどうしたいんだ。理解できないことの波状攻撃によって脳みそはもうパンク寸前だ。
2回目の死の覚悟は幸い空振りに終わったが、それが些細なことに思えてしまうほどにもうなにが起きているのかわからない。
「貴方にとっては子犬同然か、勇者と呼ばれる者よ」
……勇者?
俺、勇者って呼ばれるほどなにかを成し遂げたか?
瞬時に頭は回転し、過去を振り返る。深夜アニメの最終回で主人公から「次の勇者は画面の前の君だ!」って言われたあの事を知っている奴が――。
そんな馬鹿な期待を裏切るように、男は天から降りてきた。
まず何よりも目を引くのは透き通る白い頭髪。肩から足首にかけて伸びるフード付きの赤いマントの中心には杖を象ったような刺繍が施されており、高貴な印象を与えている。
俺に対して背を向けているが、後ろ姿だけでもただならぬ雰囲気を感じる。勇者という言葉が誰に向けられたかは、そのいで立ちから一目瞭然だった。
「そう憤るな。ほんの戯れだ。貴方の強さを称えて、後ろのよくわからん小物は見逃そう」
勇者と呼ばれた男のマントをよく見ると、ところどころ汚れている。おそらく俺がここに現れる前より戦闘を行っていたのだろう。
彼はとくに受け答えをするでもなく、右手を天に掲げた。手には剣が握られており、素人の俺が一目見ただけでもただものではないほどのオーラを感じる。
空にある星明かりが、剣に吸い込まれるように降り注ぐ。
剣は徐々に光を帯びて、やがて直接みることができないほどの光を自らが放ち始めた。
「次で最後にするつもりか。それもよいだろう。――地獄の剣」
炎の男の声に応えるように、手元に小さな魔法陣が現れた。魔法陣から黒い炎が噴き出し、宙でメラメラと燃えながら剣の形へと姿を変える。
「寂しいですねえ。これで終わってしまうのが」
炎の男が剣を握ると、黒い炎はより一層激しさを増して燃え盛る。
炎の男も勇者と同様に剣を天に掲げた。黒い光と白い光が辺り一帯に広がる。俺にもわかる。次の一撃で決まる。
お互い剣を天に掲げたまま、静止している。タイミングを見計らっているんだ。時間にしてしまえばほんの数秒だったが、あまりに長く感じる。
ほぼ同時に、相手に向かって走り出した。
黒と白の光がお互いを引き寄せあうようにぶつかった。
「――ッ!」
想像を絶する衝撃波が2人を中心に広がり、小物とののしられた俺は風船のごとく吹き飛ばされてしまった。トラックに轢かれたときと似た衝撃だと感じながら、意識が徐々に遠のいていく。視界も薄れていく中で勇者のことが気になってなんとか目線だけでも向けてみたが、土埃が舞っていてなにも見ることができなかった。
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