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第14話 展望

「ひ、ひぃ!」


 

 輩どもはなんとも情けない声を上げ、学院を後にした。それほどまでにじいさんがやって見せたことはおそろしいことだったのだろう。

 魔法のことがよくわからない俺にも、そのすごさは十分に伝わった。

 このじいさんには逆らわない方がよさそうだ。


 

「いろいろ聞きたいことはあるんだが、聖儀の徒ってのはなんなんだよ」

「……勇聖教会はもうご存じじゃな」

「あ、ああ、この街にやってきたとき、そこの大司教が出迎えてくれたよ」

「勇聖教会をこの国の光とするならば、聖儀の徒とはこの国の闇。勇者を殺すことこそが世界の救済になると信じている者たちじゃ。最後にその存在が確認されたのはもう数百年も前の伝説の組織なんじゃがのう。最近出版された、聖儀の徒をモチーフにした小説が大流行。勘違いしたやつらが今のような騒ぎを頻繁に起こしておるのじゃ」



 勇者を殺すことで世界が救済される伝説の組織……?

 魔族という人間を滅ぼそうとしている奴らに加えて、人間の中にも勇者を殺そうとしているやつらがいるってことか?



 じいさんは伝説の組織って言ってるが、本物の勇者が素性を完全に隠して活動していたところから考えると、その組織が実在する説、結構濃厚なのでは……。

 魔族と違って人間が相手となると、誰が敵か一目でわからない。いまの俺にとっては魔族以上に厄介な存在だ。



 どうやらこの世界で俺が安心してのどかな日常を過ごすことは、しばらくは夢物語ということか。

 ……頭が痛くなってきた。



「安心しなされ。この学院内にいる限りは絶対に手出しはさせまい。城下町に出歩く際も、腕の立つ護衛もつけよう。貴殿の残した功績に比べればそのくらい安いものじゃ」


 

 俺の残した功績など実際には何一つないわけだが、非力な状態の今はもうなりふり構ってられない。

 実際に危険が身に迫っているんだ、勇者の威を借りたって誰も悪く言わないだろ。


 

「そうしてもらえると助かる」

 


 これから先のことが思いやられて今にも逃げ出したいところだが、逃げるとおそらく――。

 今は学院内である程度戦えるようになるまで鍛え、この世界での知識を身に着けたところでトンズラするのがよさそうだ。



「では入学の手続きはわしが進めておこう。今日は寮でゆっくり休むとよい」



 じいさんに寮の場所を教えてもらい、自分の部屋へ向かった。

 学院内で死にかけた矢先、この中にいるうちは大丈夫と言われても信ぴょう性にかけるところだが、他に行く当てもない。

 今はただ我慢して実力を磨くのが賢明だろう。



 ※



 寮でのんびり休んでいると、部屋の扉がコンコンと音を立てた。



「……誰だ」

「シオンくん、私です」



 透き通るような優しい声で、その主がミラであることはすぐに分かったので扉を開けた。

 ミラの隣にはリンもいて「やあ」と笑顔で声をかけてくれた。



「とりあえず二人とも中に入れよ」



 2人をへの中に招き入れるやいなや、俺の体をまじまじと見つめている。


 

「な、なんだよ2人して」

「もう大丈夫ですか?」

「はじき返したとはいえ、あれだけデカい焔玉をぎりぎりまで引き付けたんだ。どこか怪我してない?」

「それなら大丈夫だ」

「よかった……。先ほど、これからの同輩にカインのことに聞いてきたました。どうやら、かなりの手練れのようですね。今期一番の有望株だと噂されているらしいです」

「それになにやら、不穏な二つ名もあるらしい。……呪いの子、だってさ」



 元の世界でも、オネエは一昔前までは差別的な対象になっていたこともあるって聞いたことがあるし、おそらくこの世界でもそういう扱いなのだろう。

 男らしく振舞っていたなら、きっと引く手数多だったことは容易に想像できる。それほどまでに、初めてみたとき、男の俺からしてもかっこいいと思った。

それにしても呪いの子とは、随分な物言いだ。



「学院内では距離を取った方がいいとは思いますが、同じ学年ではそれも難しいでしょうね……」

「あの捨て台詞からするに、これからも絡んでくる気まんまんだったしね」


 

 個人的には望ましくないが、あのドM気質をみるに、アニメでみるような明らかな嫌がらせなんかはしてこないとは思うが……。

 注意するべきなのに違いはない。


  

「それと、カインの家は勇者がいた時代から続いている一族らしいですよ」

「ってことは約千年も昔から!?」



 ミラの言葉を聞いたリンはひどく驚いている。1000年もその権力を保持したまま続いて生きているとは確かに凄まじい。

 でもだからって何でもやっていいわけじゃないだろ。

 それにどうして勇者であるとされている俺を攻撃してきたのかもよくわからない。正直この国の勇者に対する信奉心は、異常といってもいい。



 まるで本当に神様を見るような目で俺を見てくる。そんな俺を殺そうとするなど、いくら王の次に権力を持っている貴族だからといって、そう簡単に許されることではないはずだ。

 さっきじいさんにちらっときいたことだが、どうやら勇聖教の信者は人口の80%くらいとのこと。

 それだけの人間を敵に回してもいいと思えるほどの怨恨をカインは持っているってことか、それともただ権力の笠をきたボンボンの馬鹿なのか。



 どちらにせよこの学院内で安全に過ごすためには、カインには気を付けておいた方がよさそうだ。

 最悪、あいつこそが伝説の組織である聖儀の徒の一員であるということもあり得ない話ではない。



 カインの俺に対する態度はこの国では少数派だから、明日からの学院生活ではなるべく友達作って守ってもらいやすい環境を作ることに専念するとしよう。

毎日17時10分に毎日投稿します。

カクヨムの方では先日より毎日2話更新しておりますので、気になった方はぜひカクヨムの方へお越しください!


Twitter→@shindo_mue

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