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第10話 真実

「もう何がなにやら」

「ルミナス城の中に入れることなんてめったにないよ!? もっと楽しもうよ!」

「き、緊張でおかしくなりそうです……」



 城の中に入ると、これまた位の高そうな服に身を包むおじいさんが立っていた。



「ようこそおいでくださいました。王が謁見を望んでおられます。どうぞこちらへ」



 俺たちは像使いの助けを借り、なんとか地に足をつくことができた。城の正面には荘厳な門があり、おじいさんが何かぼそぼそと唱えると勝手に開いた。城の中はどこもかしこも豪奢な装飾品や家具で彩られていて、場違い感を覚える。

 少し中を進むと、転移門の二回りくらいの大きい扉が現れ、再びおじいさんが何かを唱えた。



 重たい音を立てながらゆっくりと開いたその先には、深紅のカーペットが伸びている。

 先ほどの聖職者たちを思い出させるように、カーペットの両脇には鎧やローブに身を包んだ者が立ち並び、行く先には玉座と呼ぶにふさわしい椅子がこしらえてあった。



 玉座には、王冠を被り白髭をたくわえた男が鎮座している。

 その姿を目にした瞬間、ミラとリンはすぐに片膝をついた。

 俺もなんとなくで2人に合わせて片膝をついてうつむく。



「そうかしこまらないでくれ勇者どの。貴殿の働きには感謝してもしきれないのだ。どうか、近くまで来てはくれぬか」



 言われるがままに立ち上がり、深紅のカーペットを進む。ミラとリンは微動だにしない。

 歩いている最中に両脇から痛いほどの視線を浴びる。いい大人たちがこぞって俺に夢中だ。



 王の御前に出向くと、なぜだか王様はひどく驚いていた。



「まだこんな子どもが……」


 

 驚きとともに、どこか憐れんでいるようにも見える王様は、目を閉じた。

 それもそうか、今の俺は見た目10代の後半くらい。こんな子どもが10年前から世界各地で魔物たちを倒して回っていたとあってはそうなるのも仕方ないか。

 そういえばリンは、勇者は10年前くらいから突如その姿を現し、世界各地を救って回ってると言っていた。



 俺の見た目から逆算すると、6~8歳くらいのときからか……これはまずい。

 


「実は大変申し訳ないのですが、先の戦いで記憶の大部分を失ってしまい、自分が勇者であるかどうかも分からない状況なのです」



 王様のみならず、背後にいる者たちもざわつき始めた。

 


「自分が何者かもわからず彷徨い死にかけていたところを、後ろの2人に助けてもらいました。その際に、俺が勇者であるということを教えてもらったんです。だから、いまだに実感がなくて……」

「なるほどそういう事情が……。本来であれば安静にしていなければならないところを、このような催しに参加させてしまい申し訳ない限りじゃ」



 とりあえずは記憶喪失の件を伝えることができた。これで最悪の場合でも、俺の責任にはならないはずだ。

 俺は王の御前にいながらも、頭の中はこれからのことでいっぱいだった。

 これからは、前の世界ではできなかったことに全力を注ぐんだ。誰からも指図を受けず、自らの意志で決断して、人生を切り開いていく。



 片田舎で自分の牧場を営むのが俺の夢だ。人の少ないところで、動物たちに囲まれながら自給自足をいとなむ。

 この世界でも、その夢は現実離れしたものではないはずだ。

 そんなことは許さない、大企業に入って安定した職につけ、なんて言って俺の意志をないがしろにしてくる人間もいないしな。

 


「恐れながら、陛下。発言の御許しを賜りたく存じます」


 

 今まで微動だにしなかったミラが突然口を開いた。



「遠慮なく申してくれ」

「差し出がましい願いとは存じますが、サナリ村には正規の治療師が存在せず、勇者様には応急処置しか施せておりません。もしお許しをいただけるのであれば、王都にて一度、正式な治療師の診察を受けさせていただければと存じます」

「うむ、そなたの言う通りじゃな。記憶の件も気になることじゃし、一度見てもらうのがよいじゃろう。これからの戦いのことも、あるからのう……」

 


 ん? これからの戦い……?



「陛下、俺が唯一覚えていることがあります。気が付いたとき、目の前に魔王の死体があったのです。炎に身を包む男でした。死の間際でもその身から放つ不気味な空気は鮮明に覚えております」

「炎の男――!? やはり、フレイムハルトを倒したのは勇者どのでしたか……」

「フレイムハルト?」

「最近突如その姿を現した、神話時代の魔王配下の生き残りじゃ。そのあまりの強さと逃げ足の速さから七星賢人たちもてこずっておった」



 討伐報告に対し、そのことを伝えていなかったミラたちも含めてあわただしい反応を見せている。

 しかし、そんなことなど気にならないほどに、俺の思考は星散としていた。

 その中でも突出して存在感を放つ、二つの言葉。

 


 神話時代……? 魔王の配下……?



 「記憶のない勇者どのにこんなことを申すのはいささか気が引けるのじゃが、その炎の男は魔王ではない」

毎日17時10分に毎日投稿します。

カクヨムの方では先日より毎日2話更新しておりますので、気になった方はぜひカクヨムの方へお越しください!


Twitter→@shindo_mue

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