第八十二話
1晩経ち楓とのデートの日を迎えた。
待ち合わせ場所は城の前にある噴水だった。
しばらく待っていると足音がする。
足音の方を向けば楓だった。
「お待たせ」
今日の楓の姿はワンピース姿だった。
「それ、似合ってるね」
「ふふ。そう?」
そう言って楓はその場で1周してみせる。
「そろそろ行こうか?」
「うん」
楓はさり気なく腕を組んでくる。
腕に柔らかい感触が当たっているが煩悩退散と唱えて平常心を保つ。
少し離れた場所に花畑があるらしいのでそこを目指す。
そこは花畑といいつつしっかり整備のされた庭園だった。
見たことがない花もあるが色とりどりの花が咲いている。
「うわぁ。すごいね」
楓は喜んでくれているようなのでここを選んでよかった。
満足いくまで散策してベンチがあったのでそこに2人で座る。
するとどこからともなく使用人ワゴンを押してでてきた。
「お飲み物などはいかがでしょうか?」
「お願いしようかしら」
使用人は手慣れた手つきで紅茶を淹れお菓子も用意してくれる。
「まるでお姫様になったみたい」
確かにこんな待遇は上流階級の人ぐらいだろう。
俊としては一般人のつもりなのだが、母や父の立場を考えるとこういうことが普通なのかもしれない。
紅茶に口をつければほのかに甘かった。
「これって・・・」
「俊のお母さんがたまに出してくれた奴だね」
「こちらの茶葉は滞在中にアルシェント様がよく飲まれていた品でございます。お気に召したらご用意させていただきますが?」
「お願いできるかな」
飲みなれた物というのはそれだけで精神をリラックスさせる。
俊と楓はお菓子にも手を伸ばす。
食べたことのないお菓子であったが、用意された紅茶とよく合って美味しかった。
「さて、どうしようか?」
「そうねぇ・・・」
2人でどうしようか悩んでいると使用人が声をかけてくる。
「お困りならこちらに行ってみては?」
そう言って端末にデータを送ってくれる。
「この場所は?」
「行ってからのお楽しみです」
「せっかくだから行ってみない?」
「そうだね」
俊と楓は使用人に勧められた場所に向かう。
指定された場所は洞窟だった。
「入ってみようか」
「うん」
俊が先に入ると洞窟の中は濡れているのかすこしつるりとする。
「滑らないように気を付けてね」
「ありがと」
しばらく進むと洞窟の壁一帯が光を放っている。
それはまるで満天の星空の中に放り込まれたような感覚だった。
「綺麗だね」
「そうだね。こんなところもあったんだ・・・」
教えてくれた使用人に後でお礼を言っておこう。




