表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

元ツッコミ魔王の正体とは

──魔王城。そこは、異世界最大のボケ密度を誇る禁断の地。


私たちは、ついにその入り口に立っていた。


「……ここまで来たんやなぁ」


「ここを越えれば、世界の常識が戻るかもしれん」


「あるいは、世界そのものがボケる最終ステージかもしれんがな……」


ポチの言葉に、カイルも頷く。


「まあ、オレらがなんとかするっしょ! だって勇者だもーん!」


「この期に及んでそのテンションやめろやあああ!!」


ズガァァン!!


私のツッコミ魔法が炸裂した。だが、魔王城の前では、それさえも吸い込まれていく。


「……ここの空気、なんかおかしい」


「そう。ここはツッコミが通じない領域」


「そんな世界、嫌すぎるやろ!!」


 


====


 


城の門をくぐると、出迎えたのは──白いメイド服。黒髪ロング。ネコ耳。


「おかえりなさいませ。お嬢様……じゃなくて、マナさん」


「……え、あんたが魔王?」


「はい。私がサルグレア。元・最強ツッコミ師にして、現・魔王です」


 


──衝撃が走った。


魔王が、ツッコミ側の存在……?


「なんで……あんたがツッコミから、魔王になったんや……」


「それを知りたいのなら、城の最上階まで来てください。すべて、お話ししましょう」


ふわりと笑ったサルグレアは、煙のように姿を消した。


 


====


 


「……魔王が元ツッコミって、どういうことや」


「おそらく、ボケすぎた世界に絶望したのでしょう」


ポチが静かに言う。


「どれだけツッコんでも、世界はボケをやめなかった──その果てに、ツッコミで世界を正すことを諦め、ボケを支配する側に回った」


「……それ、なんか、すごく悲しいな」


私はぎゅっと拳を握る。


「だからこそ、私が止める。このツッコミ魔法で。あの人を、ボケ側から取り戻す──!」


 


──そうして、魔王城攻略が始まった。


次々と現れる無意味なダジャレ騎士団や早口言葉軍団をかいくぐり、


「東京特許許可局局長3回言ってみて!?」


「言えるかい!! ツッコミで吹き飛べぇぇぇ!!」


ズガァァァン!!


私たちは最上階を目指し、突き進む。


そして──


──たどり着いた、魔王の間。


 


そこにいたのは──黒い玉座に座る、どこか寂しげなサルグレア。


「ようこそ、最後の舞台へ。マナさん──世界最後のツッコミ使い」


「……マナさん。あなたは、なぜツッコミを使うのですか?」


魔王サルグレアの問いかけに、私は思わず言葉を詰まらせた。


「なに言うてんの……そんなもん、決まってるやん」


「世界が、ボケで溢れてるからや」


 


ツッコミ魔法は、常識を正す力。

関西魂で培った私のツッコミは、異世界でも通用した。けど──


「アンタは、それを……やめたんか」


「そうですね。私は、かつて世界を正すツッコミを目指しました」


玉座を立ち、サルグレアはゆっくりと歩き出す。


「ですが、ボケは止まらない。止めても止めても……新たなボケが生まれる。やがて私は気づいたのです。ツッコミでは、この世界を変えられないと」


 


──その言葉に、私は胸が詰まった。


「だからって……なんで魔王になったんよ」


「せめて、ボケの中心に立てば。世界が統制されたボケになる。

制御できる狂気にすれば、いくらかマシになると考えたのです」


 


……違う。


それは、ツッコミの敗北宣言や。


私は、魔力を込めて前に出る。


「サルグレア。あんた、間違ってる」


「……どうして?」


「ツッコミは、世界を変えるもんやない。笑いを、守るためのもんや」


「笑いを……守る?」


「そうや。なんでもかんでもツッコんで、正すんとちゃう。間違ってるけど、許せるボケを見逃して、超えたらあかん一線だけ、ビシッと止める──それが、ホンマのツッコミや!」


 


一瞬、サルグレアの目が揺れた。


「あなたに……それができるというの?」


「できるかどうかやない。やるんや。私は──ツッコミで、アンタを止める!」


 


====


 


魔王とツッコミ使い、ついに激突。


サルグレアが繰り出すのは、メイドボケ軍団と完璧すぎるボケ台詞。


「ご主人様、お茶が熱いので、代わりに氷の刃をお持ちしました♡」


「それただの殺意やん!!」


「お昼寝の時間です。お布団よりも、棺の方がよろしいかと♡」


「縁起悪すぎるやろ!!」


──だけど、そのたびに、私はツッコミ魔法で応戦。


「《常識反射・ツッコミバースト!!》」


ズガァァァン!!


ついには──


「……ああ。懐かしい……」


サルグレアが、ふと微笑んだ。


「あなたのツッコミを聞いていると……昔の自分を思い出す。誰かの無茶に、本気で怒って、本気で守って……」


 


「なら、戻ってきぃや。ボケに染まった世界を、笑って楽しむ側に」


 


静寂。


 


そして──


「……はい。ツッコミ魔法使い、サルグレア。ツッコミ側に復帰いたします」


彼女は、そっとネコ耳メイドのカチューシャを外した。


「もう、無理してボケるのはやめますね」


「よかったぁぁぁあああ!!」


私は膝から崩れ落ちた。 


こうして、魔王はツッコミ側に戻り、世界に常識と笑いのバランスが戻り始めた。


サルグレアは、魔王城の管理人に転職し、


「本日のおやつは、常識の範囲で選ばれたプリンです♡」


「急に常識的ぃぃぃ!! ありがたすぎるやろ!!」


 


──そして、私たちの旅はまだ、終わらない。


「なあ、次どこ行く?」


「過去に転生してボケの起源を探るってサブクエあるけど」


「なんやそれ!? ボケのルーツて!?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ