選んで外れてバッドエンド?
広大な砂漠を越えて、私たちがたどり着いたのは謎のピラミッド型建造物──
「ここが、三択の神殿か……」
ポチが神妙な顔で言った。
「この神殿を守るのは、ボケ四天王のひとり。三択芸人カミバラ。通称選ばせの魔人」
「なにそれ怖っ。芸風がすでに初見殺しやん……!」
「こいつの出す三択を間違えると、強制的に超デバフがかかる。毒、麻痺、羞恥、関西弁化、あらゆる異常状態が……」
「関西弁化ってなんやねん! 私はもう感染者やからええけど!!」
神殿の中に入ると、いきなりズドーン! と爆音と共に天井が開き、ステージがせり上がる。
「ヘイヘ〜イ! 今日も元気にクイズショー! ようこそ地獄の三択バトルへぇ〜!」
現れたのは、金色のマントにマイク片手、どこから見ても芸人風な男。口元がやたらとニヤけている。
「お前らに問う! 第一問ッ!!」
「もう始まるんかい!! 心の準備まだや!!」
【問1】
『勇者が一番最初に装備するものはどれ?』
A:木の棒
B:鋼の大剣
C:借金
「え、いやいや! 選択肢おかしいやろ!!」
「おっと、ツッコミが入った! だが正解を選ばねば、そこの脳筋勇者に羞恥の呪いがッ!!」
「マジかよ!? オレもう恥ずかしいのとかムリ!!」
「じゃあAで!! 木の棒、無難にA!!」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルや! ファイナル以外に何がある!!」
「正解は……A! 木の棒! セーフッ!」
「よっしゃぁぁあああ!!!」
「いや普通や!! それ常識や!! 逆にC選ぶやつおったら見てみたいわ!!」
続く第二問、第三問もギリギリ正解で突破した私たちだったが──
【問4】
『魔法使いが最初に覚える呪文はどれ?』
A:ファイア
B:アイス
C:税務申告
「ふざけすぎやろC!!」
「だが油断は禁物だぞ、マナ。こいつ、Cを正解にしてくる可能性がある……!」
「それが一番怖いねん!!」
選んだのはA──結果は正解。でも、段々テンポが早くなってくる。
「さあて、次はスペシャルルールッ!! 間違えたら、その場で関西弁化の呪い発動〜〜〜!」
「いや私、もう標準装備なんやけど!? 効果あるんかそれ!!」
「むしろ感染源なんだよな……」
「黙っとけ勇者!!」
そしていよいよ、ラス問。
【最終問】
『ツッコミ魔法の最も重要な資質とは?』
A:瞬発力
B:体力
C:愛
「……ちょ、これ真面目に悩むやつやん……」
「さあマナ! お前にしか答えられない!」
カミバラがにやりと笑う。私の胸に、かすかに何かがひっかかる。
──ツッコミに必要なもの。
──ボケに対する怒りでも、呆れでもなく。
──愛がなきゃ、こんな世界、付き合いきれるわけない。
「Cや。愛やろ……!」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルや。愛やなかったら、こんなに全力でツッコめるかい!」
──正解の鐘が鳴る。
カミバラは満足げに笑い、手を振った。
「いや〜、まさか本当に答えられるとはね。オレ、もうこの仕事飽きてたんだわ。あんたらみたいな連中にツッコまれて、ようやく笑えた。ありがとよ」
そう言って、舞台の上からカミバラは消えた。
「な、なんか……ちょっといい話やった……」
「感動の中にも、選択肢でドキドキ感がありましたね……」
「てか最後に愛って……ラノベの王道か!!」
──こうして、三択の神殿を突破したマナたち。
次なる地は、狂気と笑いが支配する、巨笑姫メロ=ブハハの領域──