話題の王太子殿下と、階段落ちした公爵令嬢
「いやいや、例え平民ではなく、末端貴族令嬢が貴族の正妻になれていたとしても、人妻である夫人が王太子妃に?どう考えても無理だろう!」
「未婚令嬢でも無理じゃないか?王太子殿下からすれば、親と同じ世代の女性だからな。ベース子爵の時のように、傷物にされたから責任をと言った途端、未成年を襲った罪で即座に捕まる」
「ああ、殿下はまだ13歳でしたかな?」
「いや、14におなりだ」
「成人にはまだ2年あるな」
「高貴な方ではあるが、年齢的には子供だ。そんな子供相手に、中年の女が……王族の地位狙いにしても、酷いな」
「ああ、殿下もクリステラ公爵令嬢も、あんな頭のおかしな女に狙われるなんて、お辛かっただろう」
「それで、あの女の仲間は捕まったのか?」
「今朝一網打尽にしたらしい」
「だが、女は捕縛されることなく、王城に来れたのだな」
「王族の婚約者で、準王族のクリステラ公爵令嬢を狙ってたんだ。あの王太子殿下の婚約者の」
「ああ……」
「仲間がベース子爵夫人を害した件と娘の誘拐未遂と子爵を脅した罪、妾として家に入り込んだ罪だけでは、全員死罪にできるかわからないからな。恐らく他にも相当な余罪があるだろうが。それは調べてみないとわからん」
「そうか。王太子殿下に対しての不敬も、誘惑ではな。子爵夫人殺害の実行犯はともかく、他の者は強制労働所送りになる可能性がある」
「まあ余罪の大きさや数次第だが、現時点ではそうか」
「……なるほどな、王太子殿下としては、調べた結果、大罪が判明し、全員死罪になったとしても、そうならない可能性が少しでも残っている以上……まあ……なっ」
「ああ……」
「そうか……」
「だが、あの王太子殿下が、クリステラ公爵令嬢を囮にするなど、よく許可されたな」
「するわけがなかろう?」
「いや、でも、先程階段から……もしかして、守りきれずに?怪我はなさっておられない様子だったが、階段の上から落ちたことはなかったことにならぬだろう。あの王太子殿下が、クリステラ公爵令嬢を危険に晒すなど考えられない。完璧に防いで未遂で済ます予定だったのだろう?」
「それが、防げなかったと?おいおい、大丈夫か、関係者全員無事で済まないぞ?」
「いや、あれは……」
会議室で開催中の我こそは事情通!的な、暴露大会が盛り上がりを見せている頃。王城の救護室では、美しい少女が、公爵令嬢に相応しい豪奢なドレスを脱ぎ、女医による診察を受けていた。
「先生、残念ながら、どこも痛いところはありません」